前回は、FX取引における注文方法について解説してきました。FX取引を始める前に理解しておきたい言葉として、「建玉(ポジション)」があります。建玉(ポジション)とは、新規で買い注文・売り注文をした後、 未決済のまま保有している状態のことをいいます。建玉(ポジション)には主に4つの種類があり、それぞれの特徴を理解することが大切です。
今回は、FXにおける建玉(ポジション)の種類や特徴、取引するうえでの注意点について解説していきます。
FXにおける建玉(ポジション)とは、売買の新規注文が約定(取引成立)をした後、決済せずに保有している状態のことをいいます。
FX取引における「売買」や「注文」といった基本的な用語について、より詳しく知りたい人は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
建玉(ポジション)には、主に4つの種類があります。
それぞれの特徴について、詳しく解説していきます。
買い建玉(ロングポジション)とは、新規の買い注文が約定した後、売りの決済取引をせずに保有している状態のことをいいます。
買い建玉(ロングポジション)は、通貨ペアの左側に記載されている通貨を買い、同時に同じ価格で右側に記載されている通貨を売っている状態を指します。 たとえば、「米ドル/円」の買い建玉(ロングポジション)なら、米ドル買い/円売り(円で米ドルを手に入れる)になります。
買い建玉(ロングポジション)を保有している場合、為替レートが上がって(=ドル高円安になって)から決済すれば利益が発生しますが、下がって(=円高ドル安になって)から決済すると損失が発生します。
たとえば、1米ドル/円=150円で10,000米ドルの買い建玉(ロングポジション)を保有している場合、 1米ドル/円=160円で決済すれば100,000円の利益が発生します。反対に、1米ドル/円=140円で決済すれば100,000円の損失が発生します。
売り建玉(ショートポジション)とは、新規の売り注文が約定した後、買いの決済取引をせずに保有している状態のことをいいます。
売り建玉(ショートポジション)は、通貨ペアの左側に記載されている通貨を売り、同時に同じ価格で右側に記載されている通貨を買っている状態を指します。 たとえば、「米ドル/円」の売り建玉(ショートポジション)の場合は、米ドル売り/円買い(米ドルで円を手に入れる)になります。
売り建玉(ショートポジション)を保有している場合、為替レートが下がって(=円高ドル安になって)から決済すれば利益が発生しますが、 上がって(=ドル高円安になって)から決済すると損失が発生することになります。
たとえば、1米ドル/円=150円で10,000米ドルの売り建玉(ショートポジション)を保有している場合、 1米ドル/円=140円で決済すれば100,000円の利益が発生します。対して、1米ドル/円=160円で決済すれば100,000円の損失が発生します。
ネット建玉(ネットポジション)とは、同一通貨ペアの未決済の建玉(ポジション)について、売りと買いを相殺して残った、実質的な持ち高のことをいいます。
たとえば、米ドル/円の取引で10,000通貨の買い建玉(ロングポジション)と5,000通貨の売り建玉(ショートポジション)がある場合を考えてみましょう。 この場合のネット建玉(ネットポジション)は、「買いの10,000通貨―売りの5,000通貨=買いの5,000通貨」となります。
持ち高ゼロ(スクエアポジション)とは、建玉(ポジション)を保有していない状態のことをいいます。相場が上下に動いても、利益も損失も発生しません。
建玉(ポジション)を保有できる期間に決まりはありません。自身で決済するまで保有し続けることができます。
FX取引では、未決済の建玉(ポジション)を翌営業日に持ち越すと、「ロールオーバー」が自動的に行われます。「ロールオーバー」が行われると、原則としてスワップポイントが発生します。
建玉(ポジション)の保有期間の長短はトレードスタイルにも関わってきます。主なトレードスタイルは次の3つに分類されます。
トレードスタイル | 特徴 |
---|---|
デイトレード | 数十分~1日の間で取引し損益を確定する。基本的に建玉(ポジション)を翌営業日以降に持ち越さない。 |
スイングトレード | 数日~1週間程度の期間で取引をする。 |
ポジショントレード (長期トレード) |
数週間~数か月の中長期間にわたって建玉(ポジション)を保有する。 |
建玉(ポジション)を長期間保有すると、各通貨発行国の政策金利の差によって、スワップポイントによる利益が得られる可能性がある一方、 逆に支払い(マイナススワップ)が発生するケースもあります。また、為替レートの変動によっては、建玉(ポジション)を決済した際、 得たスワップポイント以上の損失が発生する可能性があることに注意が必要です。
スワップポイントの受け取り(プラス)、支払い(マイナス)については、各通貨発行国の政策金利の水準や、 保有する建玉(ポジション)が買いか売りかによっても異なりますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
建玉(ポジション)には決められた保有期間はないものの、相場動向等によっては強制ロスカットによって決済されてしまうことがあります。 そのほか、口座の解約や通貨の取扱い停止、FX会社の廃業やサービス停止などで決済しなければならなくなる可能性もあります。
長期的に取引をするなら、FX会社の信頼性が大事なポイントとなります。この点、セントラル短資FXは、金融市場で100年以上の歴史を持つセントラル短資のグループ会社です。 また、セントラル短資FXは、日本格付研究所の長期発行体格付をFX専業の業者では唯一取得しており、18年連続で高い水準を維持するなど、信頼性の面で十分に安心できます。
建玉(ポジション)比率とは、通貨ペアごとに、FX会社の全顧客が保有している買い建玉(ロングポジション)と売り建玉(ショートポジション)を集計し、その割合を示したものです。 各社・取引所が公表している建玉(ポジション)比率のうち、FX取引において特に注目されているのが、米国のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の国際通貨先物市場(IMM)で 取引されている通貨ペアごとの建玉(ポジション)比率を示す「シカゴIMM通貨先物ポジション」です。セントラル短資FXでは、 以下のページで「シカゴIMM通貨先物ポジション」の推移を確認できます。
例えば、ある通貨ペアの買い建玉(ロングポジション)の割合が高まっていると、その後の売りの決済取引によって為替レートは下落する可能性があります。 その逆に、売り建玉(ショートポジション)の割合が高まっていると、その後の買いの決済取引によって為替レートは上昇する可能性があります。 マーケットの偏り具合を知るには、シカゴIMM通貨先物ポジションを参考にしましょう。
建玉(ポジション)を保有するときは、以下の2つの点に注意しましょう。
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
証拠金を十分に用意していても、建玉(ポジション)が増えるほどレバレッジの倍率は上がります。 高レバレッジでの取引には大きな利益が狙える可能性がありますが、反対に大きな損失を被るリスクもあります。
また、一般に「ポジポジ病」といわれる、「常に建玉(ポジション)を保有していたい」という状態にならないように気をつけましょう。「ポジポジ病」とは、「チャンスを逃したくない」「損失を取り戻したい」といった気持ちから、 常に建玉(ポジション)を保有していないと落ち着かなくなってしまう状態です。この状態では冷静な判断をするのが難しく、 自分の決めたトレードスタイルから逸脱しやすくなります。
投資は継続することでノウハウが蓄積され、徐々に勝率も上がってくることが多いとされています。 しかし、為替レートが想定した方向に動かずに含み損が発生したまま建玉(ポジション)を持ち続けていると、最終的には投資を続けられないくらい損失が膨らむ可能性もあります。
建玉(ポジション)を持つことにこだわりすぎず、建玉(ポジション)を保有する際は、必ず損切りのための注文(逆指値注文(ストップロス注文))を 入れておくことが大切だと覚えておきましょう。
建玉(ポジション)には保有期間の決まりがないため、週をまたいだ保有も可能ですが、週明け月曜日の早朝に相場が大きく動いて取引が始まる「窓開け」には注意が必要です。
土日にFX取引を行うことはできませんが、日本時間の週明け月曜日の午前7時より前にすでに取引が始まっているウェリントン市場では、土日のニュースをもとに大きく値動きしている場合もあります。 その結果、日本のFX会社の取引が始まる午前7時に前週末の終値と週明けの始値に大きなギャップが発生することがあり、これを「窓開け」といいます。
窓開けが起こり、予測しなかった方向に為替レートが変動すると大きな損失を被る可能性があります。週をまたいで建玉(ポジション)を保有する場合には、窓開けのリスクに十分に注意してください。
建玉(ポジション)を長期間保有する際は、以下の2点に注意しましょう。
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
建玉(ポジション)を長期間保有していると、強制ロスカットにより決済される可能性があります。 特に、証拠金の金額が少ないと、相場が自分の予測した方向と逆に進んだ場合に、強制ロスカットが発生する可能性が高まります。
「塩漬け」とは、建玉(ポジション)に含み損が発生している状態で、決済せずに保有し続けている状態のことです。 建玉(ポジション)を長期間保有する際には、塩漬けの状態にならないように注意が必要です。
今後為替レートが戻ることを期待して、いつまでも塩漬けのまま建玉(ポジション)を保有していると、含み損がより大きくなる可能性があります。 また、証拠金として差し入れている資金が塩漬けの建玉(ポジション)に固定されてしまうことで、新たな取引のチャンスを逃すことにもつながります。
塩漬けを避けるために、あらかじめ損切りの条件を決めておくことが大切です。
FXにおける建玉(ポジション)とは、売買の新規注文が約定(取引成立)した後、まだ決済せずに保有しているもののことをいいます。建玉には4つの種類があり、それぞれの概要を理解しておく必要があります。
損失が発生するリスクをおさえるために、建玉(ポジション)の持ちすぎや「ポジポジ病」にならないように気をつけるなど、建玉(ポジション)を適切に管理しましょう。
次の講座では、建玉(ポジション)を保有しているときに発生する「スワップポイント」について、初心者向けにわかりやすく解説していきます。