前回の講座では、建玉(ポジション)について解説してきました。建玉(ポジション)を保有している間、スワップポイントによる損益が発生します。
今回は、スワップポイントが発生する仕組みや注意点、スワップポイントの高い通貨ペア、長期間にわたってスワップポイントで利益を狙うためのポイントについて、わかりやすく解説します。
スワップポイントとは、異なる2つの通貨の「金利差」により発生する損益のことで、「金利差調整分」ともいわれるものです。
スワップポイントの仕組みや、外貨預金における利息との違いについて確認していきましょう。
たとえば、金利0.5%で日本円を借り、米ドルに両替して金利4.5%の米国債を買う場合、金利差の4%が利益になります。スワップポイントも同じような仕組みで発生します。
通貨ペアの買い建玉(ポジション)を保有している場合、金利差がプラスであれば、毎営業日のクローズ時点で保有している建玉(ポジション)に対して発生します。
たとえば、米ドル/円で10,000通貨を保有し、1日あたりの受け取りスワップポイントが160円のままだった場合、1年間保有すると58,400円の利益が得られる計算になります。頻繁に通貨ペアの売買をしなくても、 金利差がプラスとなっている通貨ペアの買い建玉(ポジション)を保有しているだけで少しずつ利益が蓄積していきます。
ただし、スワップポイントは受け取りだけではなく、通貨ペアや市場金利の変化、建玉の状況によっては支払い(マイナススワップ)が発生する場合もある点に注意が必要です。この点の詳細は後ほど改めて解説します。
FXのスワップポイントと外貨預金の利息との違いとして、金額や受け取れるタイミングが異なる点が挙げられます。
外貨預金と違ってFXにはレバレッジという仕組みがあるため、元手となる資金(証拠金)以上の金額で取引が可能です。例えば1米ドル150円のときに10,000通貨保有しようとすると、 外貨預金では1,500,000円の資金が必要ですが、FXでは、同じく10,000通貨を保有する場合にレバレッジを2倍に設定すると、必要な資金は750,000円で済みます。 そのため、元手となる資金(FXの場合は証拠金)で比べると、FXのほうが資金効率が良いと考えることができます。
また、外貨預金の利息は原則として満期時や解約時にしか受け取れず、途中解約すると大きく減額されることがほとんどです。これに対して、スワップポイントは原則毎営業日に受け取れます。
また、外貨預金の利息は受け取り時に20.315%の税金が差し引かれます。対してFXでは、年間所得が200,000円以下(FX以外の所得がない主婦・学生は580,000円以下)であれば、確定申告が不要※というメリットがあります。
※FXによって得た所得は「雑所得」として申告分離課税の対象となり、所得税が課されます。FXの利益額によっては(200,000円超から)確定申告が必要になります。なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、 住民税の申告が必要となる場合がありますので、詳細については税理士・税務署・各自治体等にご相談・ご確認ください。
続いて、スワップポイントを受け取れるタイミングについて、詳しく解説していきます。
スワップポイントは、建玉(ポジション)を翌営業日に持ち越す場合に発生します。ただし、土日や祝日をまたぐ場合があるため、3日分以上がまとめて付与される日や、逆に営業日であっても、 対象通貨の国の休日の関係で決済日が後ずれする場合などには、スワップポイントが付与されない日もある点に注意しましょう。
なお、セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、原則毎営業日のクローズ時点で保有している建玉(ポジション)に対してスワップポイントが発生します。
スワップポイントは2つの異なる通貨の金利差によって発生するため、それぞれの国の政策金利の違いによる影響を受けます。スワップポイントの水準は通貨ペアによって異なりますが、 政策金利水準の高い国の通貨と日本円の通貨ペアで特に高くなる傾向があります。
政策金利水準の高い国とその通貨として、以下が挙げられます。
国(通貨) | 政策金利 |
---|---|
トルコ (トルコリラ) |
46.00% |
メキシコ (メキシコペソ) |
8.50% |
ハンガリー (ハンガリーフォリント) |
6.50% |
※2025年6月25日時点
また、スワップポイントはFX会社によっても異なります。セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」のスワップポイントは以下のページでチェックできます。 他社に比べて有利なスワップポイントとなっている通貨ペアも多いので、ぜひご覧ください。
建玉(ポジション)を保有することで利益が得られる可能性があるスワップポイントですが、以下のような注意点もあります。
それぞれの注意点について、わかりやすく解説していきます。
前述の米ドル/円のように、金利の高い通貨(米ドル)と金利の低い通貨(日本円)の通貨ペアの場合、買い建玉(ポジション)を保有していると、 プラスの金利差調整分としてスワップポイントの受け取りが発生しますが、売り建玉(ポジション)を保有すると、スワップポイントの支払いが発生します。
このように、各通貨ペアの金利差の状況と建玉(ポジション)に状況(買い建玉(ポジション)か売り建玉(ポジション)か)によって、 スワップポイントは受け取り・支払いのいずれにもなりますので、この点を理解しておきましょう。
スワップポイントは固定されているものではなく、各国の政策金利や経済情勢、需給のバランスなどに応じて変動しています。 状況によってはスワップポイントがマイナスになる可能性があり、スワップポイントを支払うことになる場合もあります。
たとえば、2025年5月現在、日本は利上げの傾向にありますが、今後も利上げが継続される場合は、各国の政策金利との差が縮小されることになります。 結果として、米ドル/円やクロス円通貨ペア(例えば、トルコリラやハンガリーフォリントといった通貨と日本円のペア)で 得られるスワップポイントが減少する可能性があります。
為替レートの変動によるリスクにも注意しましょう。スワップポイントで利益が出ていても、為替レートの変動によって、建玉(ポジション)を決済した際、 得たスワップポイント以上の損失が発生する可能性があることを理解しておく必要があります。
高レバレッジで取引をしていると、保有している建玉(ポジション)が強制ロスカットによって自動的に決済される可能性も高まるため、レバレッジにも注意が必要です。
FX取引で得られた利益には以下の税金がかかり、スワップポイントで得た利益も同様に課税対象となります。
税金の種類 | 税率 |
---|---|
所得税 | 15.0% |
復興特別所得税 | 0.315% |
住民税 | 5.0% |
※2025年5月現在
個人の場合は、スワップポイントが実際に口座に入金された時点が課税対象になるタイミングです。なお、前述した通り、FX取引を含めた雑所得の合計金額が200,000円以下の場合、 確定申告は不要となります。セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、スワップポイントが付与されたタイミングで自動的に口座残高に反映され、課税の対象となります。
セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、スワップポイントが付与されたタイミングで自動的に口座残高に反映され、課税の対象となります。
長期的にスワップポイントによる利益を狙うためのポイントを3つご紹介します。
それぞれのポイントについて、わかりやすく解説していきます。
為替レートやスワップポイントは日々変動するため、リスクヘッジのために、保有する通貨ペアを分散させる方法があります。
通貨ペアの分散を考える際には、「相関係数」を考慮することが大切です。相関係数とは、2つの通貨ペア同士の関連性の強さのことです。 一方が上昇するともう一方も上昇するケースを「正の相関」、下降するケースを「負の相関(逆相関)」 といいます。片方の通貨ペアが下落しても、もう片方の通貨ペアが上昇すれば、損失を抑えることができます。
通貨ペアの相関関係についてさらに知りたい人は、こちらのページも参考にしてください。
個人の場合、FXでは最大25倍のレバレッジで取引ができます。しかし、建玉(ポジション)を長期間保有してスワップポイントによる利益を狙う場合は、低レバレッジでの運用を心がけましょう。
レバレッジが高すぎると、わずかな為替レートの変動でも強制ロスカットが発動する可能性が高くなるためです。
余裕を持った取引ができるよう、2倍程度の低レバレッジから始めることをおすすめします。
FXには強制ロスカットという仕組みがあるため、建玉(ポジション)を長期間保有しようとしていても、強制的に決済される可能性があります。
強制ロスカットの判定には、「証拠金維持率」が使われます。強制ロスカットを回避するためにも、証拠金維持率は常に確認しておく必要があります。
証拠金維持率は高ければ高いほどよく、特に初心者であれば証拠金維持率が高くなるように調整しましょう。証拠金維持率が300%を下回ると、 大きな為替レートの変動時に強制ロスカットが発動する可能性が高まります。
建玉(ポジション)の一部を決済したり、証拠金を追加で入金したりと、できるだけ証拠金維持率を高い水準で保つように工夫しましょう。 強制ロスカットについてさらに知りたい人は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
スワップポイントとは、通貨間の金利差調整分のことで、FX取引で発生する損益の1つです。スワップポイントは常に変動しており、保有する建玉(ポジション)に よってはマイナスとなってしまい、支払いが必要になる可能性もあります。
リスクを回避しつつスワップポイントで利益を得るためには、仕組みや注意点について十分に理解することが大切です。複数の通貨ペアへの分散や、低レバレッジでの取引などを心がけましょう。
次の講座では、レバレッジや強制ロスカットとの関係が深い「証拠金」について、わかりやすく解説します。