前回の講座では、FXにおけるさまざまな取引手法やトレードスタイル等を解説しました。投資に興味を持って、これから始めようとしている人の中には 「FXと株、どちらもよく聞くけど自分に向いているのはどっちだろう?」 「そもそも、どんな違いがあるんだろう?」という疑問が湧いているかもしれません。それぞれの特徴や違いを理解して、一歩を踏み出してみましょう。
この記事では、FXと株の違いや、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。投資初心者でも、FXと株の違いを踏まえて取引ができるように解説していきますので、 ぜひ参考にしてみてください。
FXと株の違いを、8つの項目に分けてご紹介します。
| 比較項目 | FX | 株 |
|---|---|---|
| 投資対象 | 各国の通貨 | 上場企業等の株式 |
| 取引時間 | 平日原則24時間 | 平日9時~11時30分/ 12時30分~15時30分 |
| レバレッジ | 最大25倍 (個人口座) |
最大3.3倍 (信用取引のみ) |
| 必要な資金 | 数千円から | 原則として 数万円から (信用取引は30万円から) |
| 利益の種類 | 為替差益・ スワップポイント |
売買益・配当金・ 株主優待等 |
| 取引コスト | スプレッド (FX会社によっては、 取引手数料ありの場合も) |
取引手数料(証券会社によっては取引手数料なしの場合も)、 金利・貸株料(信用取引) |
| リスク | 為替変動・高レバレッジ取引による大きな損失など | 企業業績悪化・粉飾決算・上場廃止・市場全体の相場下落など |
| 相場変動の要因 | 各国の金融政策・経済指標・地政学リスク・要人発言など | 企業業績・決算発表・IR情報・金融経済情勢など |
それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
FXは、異なる2つの国の通貨を売買して利益を狙う取引です。「米ドル/円」や「ユーロ/米ドル」などが代表的な通貨ペアです。
一方で、株は企業等の株式を売買して利益を狙う取引です。上場企業の株式が主な対象となり、国内の株式市場では約4,000社の銘柄が取引されています。
FXと比べると株のほうが選択肢は多いものの、投資初心者の人は、どの銘柄を選ぶべきか判断に迷うかもしれません。自分の興味や理解のしやすさに応じて、FXと株のどちらを選ぶのか考えましょう。
FXは、基本的には平日であれば24時間いつでも取引ができます。時間帯に関係なく、そのときの為替レートでリアルタイムの取引が可能です。
一方で、株は日本の証券取引所の場合、平日の9時~11時30分と12時30分~15時30分の間しか取引ができません。終値以降の売買注文は、翌営業日の約定(売買の成立)となります。
FXでは、個人口座の場合は最大25倍のレバレッジで取引できます。理論上は40,000円の証拠金があれば、最大1,000,000円分の取引をすることができます。レバレッジを活用すれば、 少ない資金でも大きな利益を狙えるチャンスがありますが、同時にリスクも大きくなるため注意が必要です。
レバレッジについては、以下の記事もご覧になって理解を深めてください。
なお、株の現物取引にはレバレッジはありません。信用取引については、最大3.3倍までのレバレッジで取引可能です。
FX取引は、通貨ペアを選べば数千円程度といった少額からでも始められます。レバレッジを活用することで、少ない資金で大きな金額を動かすこともできますが、 リスクも高まるため、初心者の間は低レバレッジでの取引を心がけましょう。
株の取引では、多くの場合、数万円から数十万円の資金が必要になります。ただし、ミニ株とも呼ばれる「単元未満株」であれば、数百円程度で購入できるものもあります。
FXと株で得られる利益には、共にキャピタルゲインとインカムゲインがありますが、それぞれの内容は異なります。
| キャピタル ゲイン |
インカム ゲイン |
|
|---|---|---|
| FX | 為替差益 | スワップ ポイント |
| 株 | 売買益 | 配当金 |
FX取引では、為替相場や金利の動向次第で、為替レートの変動による為替差益としてキャピタルゲインが得られます。 また、建玉(ポジション)を保有している間、原則毎営業日に受け取れるスワップポイントとしてインカムゲインが得られます。 もっとも、スワップポイントは、建玉(買・売)の状況や対象通貨の金利動向によって、受取・支払のいずれにもなりますので注意が必要です。
株は基本的に「安く買って高く売る」、もしくは「高く売って安く買う(信用取引のみ)」ことで、キャピタルゲインを狙うことが可能です。 さらに、保有している銘柄によっては、企業の業績にもよりますが、配当金を定期的に受け取ることが見込まれます。
FX取引のキャピタルゲインとインカムゲインについては、以下の記事もご覧ください。
FXでは「スプレッド」と呼ばれる買値と売値の差額が実質的な取引コストになります。取引のたびに発生するため、スプレッドが狭いFX会社を選びましょう。
株では、証券会社によって売買のたびに手数料がかかる場合がありますが、一定の条件を満たすことで、手数料が無料・割引になるプランを選択できる証券会社も増えています。手数料が無料になる条件は各社で異なり、 保有資産や取引額などによっても変わります。各社のホームページを確認しておきましょう。
FXと株には、価格変動リスクといった共通のリスクがありますが、それぞれの取引方法の違いによって次の点に注意する必要があります。
FXにおいて特に気をつけたいリスクは、高いレバレッジでの取引による損失の拡大です。レバレッジを活用することで、預け入れた証拠金以上の取引をすることができますが、 相場が予想と反対に動くと大きな損失につながることがあるため、注意が必要です。
株の場合は、企業の不祥事や業績悪化などをきっかけに、株価が急落するリスクがあります。また、その結果として、上場廃止となれば、その企業の株は株式市場で取引できなくなってしまいます。特に粉飾決算に関しては、東証プライム上場企業や、 日経225に採用されている企業でも発生しており、その後の株価の急落や上場廃止を引き起こしています。
FXの値動きの主な要因としては、各国の金融政策や経済指標のほか、地政学リスク、要人の発言などが挙げられます。たとえば、アメリカの政策金利が引き上げられると、米ドルの需要が高まり「ドル買い」が進むケースもあるでしょう。
株の値動きの主な要因は企業の決算などですが、各国の金融政策や経済情勢、要人の発言により影響を受けることもあります。特にIR(投資家向け広報)や業績予想の発表直後は、値動きが大きくなることもありますので注意しましょう。
FXと株の違いについて説明してきましたが、それぞれのメリット・デメリットも、取引を始める前にしっかりと理解しておきましょう。
FXのメリットを確認していきましょう。主なメリットは以下の5つです。
レバレッジが活用でき、買い/売りのどちらからでも取引を始められるため、FXはほかの金融商品と比べて柔軟な運用が可能です。状況に応じた多様な取引スタイルが選べるのは、FXの魅力といえるでしょう。また、政治情勢や経済指標といった ファンダメンタルズ情報を利用して分析することができますので、株のように個別企業の情報を分析する必要がない点も魅力の一つです。
FXのデメリットを確認していきましょう。主なデメリットは以下の3つです。
FXは自由度が高い半面、リスク管理も投資家が徹底する必要があります。特に初心者の間は、レバレッジを低めに設定し、慎重な取引を心がけることが重要です。また、FX取引で年間利益が一定額を超えた場合は、確定申告が必要になります。 確定申告や税金の知識があまりない方にとっては、こうした手続きをデメリットと感じるかもしれません。ただし、投資を行ううえでは、税金などへの知識も大切です。税金の計算や申告手続きについても、あらかじめ基礎的な知識を身につけておくと安心でしょう。
次に、株の主なメリットとデメリットについて解説していきます。株は企業の成長に合わせて資産を増やせる魅力がありますが、業績悪化や上場廃止など、個別企業に特有のリスクもあります。 リターンとリスクの両方を理解しておきましょう。
株のメリットを確認していきましょう。主なメリットは以下の3つです。
源泉徴収がある特定口座を選択すれば、確定申告の手間を省けますが、年間利益が200,000円以下であっても源泉徴収は行われます (なお、その場合でも確定申告を行うことで還付を受けることができますが、所得など諸条件があります)。
株のデメリットを確認していきましょう。主なデメリットは以下の6つです。
情報収集力や分析力、冷静な判断力が求められる点は、FXと同様です。株特有のデメリットとして、 銘柄によっては流動性が低く、売買したいタイミング・価格で約定できないことや、取引可能な時間の短さなどがあります。
FXと株を比較した場合、どちらのほうが儲かるかは一概には言えません。自分にとってどちらが利益を出しやすいかは、投資スタイルやリスク許容度によっても異なります。
レバレッジを活用できるため、FXのほうが短期間で大きな利益を狙えるというイメージがある人もいるかもしれません。しかし、その分損失のリスクも大きくなります。FX取引を行う場合、投資初心者は低レバレッジから始めるのが無難でしょう。 いずれにしても、これまでに解説したメリットやデメリットなどを理解して、自分に合った金融商品を選ぶことが大切です。
FXと株のどちらが儲かるかは一概には言えませんが、投資初心者にはどちらがおすすめなのでしょうか。
まず、FXは以下のような人に向いているといえるでしょう。
FXは平日であれば原則24時間取引ができるため、仕事などで忙しい方でも取引を始められます。レバレッジを利用して少額の資金からでも取引が始められる点も魅力ですが、レバレッジが高くならないように注意する必要があります。 また、FXは異なる国の通貨を売買して利益を得る金融商品なので、海外の情報に詳しい人であればさらに始めやすいでしょう。
一方で、株は以下のような人に向いているといえるでしょう。
株の取引時間は限定されているため、平日の日中でも取引できる人であれば始めやすいでしょう。また、短期間で利益を狙うよりも、企業の成長を期待して中長期的に利益を得ていきたい人にも向いています。 FXに比べて投資対象の選択肢が多い株ですが、特定の企業や業界に詳しければ、銘柄の選択もしやすくなるでしょう。
どのような時間帯に取引したいのか、どのように利益を得たいのかなどを考えたうえで、自分の知識や興味・関心も踏まえて投資対象を選びましょう。
FXと株には、投資対象・取引時間・レバレッジ・必要資金など、多くの違いがあります。それぞれにメリットやデメリットがあることを理解しておきましょう。投資を始めたいときは、 それぞれの特徴とその違いについてきちんと把握したうえで検討する必要があります。
投資の目的や生活スタイルに合わせて、まずは少額から無理のない取引を始めるようにしましょう。
次回の講座では、FXと外貨預金の違いについて解説します。それぞれの違いについてわかりやすく解説しますので、ぜひご覧ください。