すっかり投資の手段として定番となったFX。しかし、FXに興味があり、始めてみたいと思っていても、「詳しい仕組みがわからない」と不安に思う人も多いでしょう。 FXを始める前には、取引の仕組みはもちろん、メリットやデメリット、リスクなどをきちんと把握することが大切です。今回は「はじめてのFX講座」シリーズの第1回として、FXについてわかりやすく説明します。
まずは、FXの基本を理解していきましょう。FXは「Foreign Exchange」の略で、日本では金融商品の「外国為替証拠金取引」とも呼ばれます。
簡単に説明すると、FXは異なる国の通貨を売買し、その価格(為替レート)の変動や金利の差によって利益を得ようとする取引です。FXの特長として、一定額の証拠金を預けることで、手持ちの資金よりも大きな金額で通貨を売買できます。
金利や為替、株式などの原資産の価格変動を元にして行う取引は「デリバティブ取引」と呼ばれています。FXもこのデリバティブ取引の一種です。
FXは2つの国の通貨、通称「通貨ペア」で取引を行う仕組みです。たとえば、米ドルと日本円で取引をする場合、1米ドル=150円で買い、160円に値上がりしたタイミングで売ると、為替レートの差によって1米ドルあたり10円(160円-150円)の利益を受け取れます。
「外貨両替と何が違うの?」と感じる人もいるかもしれません。ですがFXは、ある通貨ペアをいくらで、どの程度の量を売買するかという約束を取り交わすもので、外貨の現物を受け取ることを前提とはしていません。通貨ペアの売買で生じた利益や損失のみを「差金決済」という形式で取引をするのが、FXの仕組みです。
ここまではFXの基本的な仕組みについて見てきましたが、次は実際の利益の出し方を勉強していきましょう。FX取引で得られる利益は、以下の2種類です。
それぞれの利益について、わかりやすく説明していきます。
為替差益とは、通貨ペアを売買する際に、為替レートの変動によって得られる利益を指します。為替レートとは、ある国の通貨をほかの国の通貨に交換するときの取引価格のことです。シンプルにいえば、ある通貨ペアを安く買って高く売る、または高く売って安く買い戻すことで利益を得られます。 FXでは、実際に両替するわけではないので、売ることから始めることもできます。
たとえば、1米ドル=150円で1米ドルを買い、160円のタイミングで売ると、10円の利益が出ます。反対に、1米ドル=150円で1米ドルを売り、140円のときに買い戻すと10円の利益が出ます。
FXでは、最初の取引と反対の決済取引を行うことで損益が確定します。そのため、最初にその通貨ペアを買った場合は決済として売りの取引が必要です。また、最初に売った場合は決済として買いの取引が必要です。未決済のまま保有している分を「建玉(ポジション)」と呼びます。買った後で決済取引していない建玉(ポジション)を「買い建玉(ロングポジション)」、売った後で決済取引をしていない建玉(ポジション)を「売り建玉(ショートポジション)」といいます。
為替レートは一定ではなく、様々な要因で常に変動し、重大なニュースがあったときには大きく動くこともあります。そのため、為替差益を狙って取引する場合、日頃からニュースを欠かさず読むといった情報収集や、為替レートが変動するタイミングを見極め、リスク管理していくことが取引を成功させるポイントのひとつになります。
スワップポイントとは、異なる2つの通貨の間に生じる「金利差」から得られる利益のことです。たとえば、金利0.5%で日本円を借り、それを米ドルに両替して金利4.5%の米国債を買うと、その金利差の4%分が利益になりますね。スワップポイントを活用すると、手間をかけなくても、2つの通貨の金利差から利益を得ることができます。 外貨預金における利息のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
スワップポイントは、為替差益と比べてより長い期間をかけて利益を狙う方法です。ただし、通貨ペアや市場金利の変化によっては支払い(マイナススワップ)が発生する可能性もあります。
スワップポイントは、ニューヨーク時間の取引を終えた翌営業日から、通貨を保有している間は原則毎営業日発生します。
続いて、FXの特徴(メリット)を確認していきましょう。FXの主な特徴は以下の4つです。
レバレッジや双方向の取引ができることにより、ほかの金融商品と比べてより柔軟な取引が可能で、多様な戦略を立てやすいことがFXの大きな魅力といえます。ここからは、FXの4つの特徴について、わかりやすく解説していきます。
FXにおけるレバレッジとは、一定額を証拠金として預け、それを担保に証拠金以上の金額で取引ができる仕組みのことです。個人名義の口座の場合、日本国内のFX取引では、レバレッジの上限は25倍と定められています。
100,000円分の通貨の取引を例に考えてみましょう。外貨の両替をする場合は、もちろん100,000円の現金を用意しなければなりません。一方で、FXの場合はレバレッジが25倍であれば4,000円の証拠金で取引ができます。ただし、この取引はあくまで仕組み上の話で、実際に行うにはリスクが高いため、注意が必要です。高レバレッジの取引によるリスクについては後ほど詳しく説明します。
レバレッジをかけることで、比較的少ない資金でも取引を始められ、大きな利益を期待できます。ただし、レバレッジを大きくすればするほど、損失も大きくなる可能性がある点にも注意が必要です。特にFX初心者は低いレバレッジでの取引から始めましょう。
レバレッジの倍率は、入金する証拠金の額と取引数量によってコントロールできます。詳しくは以下の記事も見てみてください。
FXでは、「買い」と「売り」の双方向から取引をすることが可能です。つまり、為替相場(為替レート)の方向性にかかわらず利益を得る機会があるのです。
「買い」の取引は、通貨の価値が上がると予測したときに買っておいて、買ったときよりも価値が上がったタイミングで売って利益を得ることを狙う取引方法です。反対に「売り」の取引は、通貨の価値が下がると予測したときに売っておいて、売ったときよりも安くなったタイミングで買い戻して利益を得ることを狙う取引方法です。
FXは、基本的に平日であれば24時間いつでも取引ができます。その理由は、外国為替市場が東京だけでなく、ロンドンやニューヨークといった世界の各国に存在しているからです。
たとえば、日本時間で各国の取引時間を見ると、以下のようになっています。
時差によって取引が可能な時間が重なるため、たとえ東京市場が取引時間外であったとしても、ほかの国の市場で取引ができる仕組みになっています。
FXは株式投資よりも取引時間の自由度が高く、ライフスタイルに合わせた取引を行えます。ただし、土日など取引時間外になるタイミングもあることに注意しましょう。
ほかの金融商品より手数料が安い場合が多いことも、FXの大きな特徴です。ほとんどのFX会社では、取引手数料が無料に設定されています。
FXの実質的な手数料として、「スプレッド」があります。スプレッドとは、FX取引をするときの売値と買値との差のことです。たとえば、買値が1米ドル=150.000円、売値が1米ドル=150.002円の場合のスプレッドは0.2銭という考え方になります。
実際にかかるスプレッドは、米ドル/円では0.2銭としているFX会社が多く、銀行での外貨両替にかかる手数料と比較すると大幅に安いといえるでしょう。ただし、スプレッドは通貨ペアやFX会社によって異なることに注意が必要です。
ここまではFXの魅力について解説してきましたが、実際に取引する際は気をつけるべきポイントがあります。具体的には、以下の4つのリスクに注意が必要です。
ここからは4つのリスクの詳細に加え、それらのリスクと上手に付き合う方法についても、わかりやすく解説していきます。取引を始める前にしっかりと理解しておきましょう。
FXは、為替相場が急激に変動することにより、短時間で大きな損失が発生するリスクがあります。為替相場は、金利の引き上げや引き下げ、突発的な事件や災害など、さまざまな要素の影響を受けて変動するため、値動きを予測するのが難しい点に留意しましょう。
値動きの予測には情報収集が不可欠です。日常的に各国の金融政策や市場動向などにアンテナを張っておくことで、自分なりに今後の相場が予想しやすくなります。
特に、レバレッジが高いケースでは損失のリスクが大きくなるので、リスク管理や慎重な取引が重要です。次の項で、レバレッジのリスクについて確認しておきましょう。
前述したように、外貨両替と違って、FXではレバレッジを活用した取引が可能です。ただし、高いレバレッジでの取引は、大きな利益が期待できる反面、損失も大きくなるリスクがあります。
外貨両替とFX取引の違いを、1米ドル=150円のタイミングで、150,000円の資金で取引をする場合を例に考えてみましょう。
取引通貨量 | 為替相場が1円下がった場合の損失 | |
---|---|---|
外貨両替 | 150,000円÷150円=1,000米ドル | 1円×1,000米ドル=1,000円 |
レバレッジ10倍のFX取引 | 150,000円÷150円×10=10,000米ドル | 1円×10,000米ドル=10,000円 |
FXでは、レバレッジを高くするほど、証拠金に対して損益が大きくなります。損失が大きくなるのを防ぐには、リスクを考慮した適切なレバレッジの設定が重要です。
FXには「強制ロスカット」という、一定水準以上の損失を防ぐための仕組みがあります。証拠金維持率が一定の水準(ロスカットライン)に達した場合、自動的に決済が行われ、強制的に取引が完了します。これにより、損失の拡大を防ぐことが可能です。
ただし、強制ロスカットが発動しても、相場が急激に変動した場合などは、預けた証拠金以上の損失が発生する可能性があることに留意しましょう。
強制ロスカットはあくまで最低限の安全措置という扱いです。そのため、あらかじめ強制ロスカットよりも少ない額で損失を確定させる「ストップロス注文」を自分で入れておくことで、損失を限定することも大切です。
ロスカットの詳細については、以下の記事も見てみてください。
FXには、意図した通りに取引できないリスクもあります。たとえば、経済や国内の情勢が不安定な通貨の場合、売りたい人や買いたい人が少なく、取引が成立しにくい状況になるケースがあります(こうした状態を「流動性が低い」、「流動性リスクがある」などと言います)。
早朝などの流動性が低い(売りたい人や買いたい人が少ない)時間帯では、取引が成立しにくいだけでなく、売値と買値との差であるスプレッドが拡大しやすくなります。実質的な手数料が高くなるため、流動性の低い時間帯は投資家にとって不利な取引環境といえます。流動性の高い(売りたい人や買いたい人が多い)タイミングを見極めることも、FX取引のポイントの1つです。
また、通信回線のトラブルやPC・スマホの故障などにより、突然取引ができなくなるリスクにも注意が必要です。
FXは、通貨ペアで異なる2つの国の通貨を売買し、その価格の変動や金利の差によって利益を狙う取引です。レバレッジをかけることで、資金が少なくても大きな利益を狙えるといった特徴があります。
一方で、相場の急変動による損失が発生したり、高いレバレッジによって損失が増大したりするリスクに注意が必要です。取引の前にFXの仕組みを理解することで、リスクと上手に付き合えるようにしなければなりません。
次の講座では、FXの最大の特徴である「レバレッジ」について、より詳しく解説していきます。レバレッジはリスクにもつながるため、きちんと理解してから取引にのぞみましょう。