前回の講座では、FX取引における取引単位を表す「ロット(Lot)=取引数量」について解説しました。「ロット(Lot)=取引数量」は、主に注文時に用いられるほか、 損益の計算にも関係しています。そして、損益の計算などで為替レートの差を表す単位が「pips(ピップス)」です。
本記事では、pipsの基本的な意味や活用方法などについて、FX初心者の人が理解しやすいよう、具体的な例も用いながらお伝えしていきます。
はじめにpipsの意味や概要をご説明します。FXにおいてpipsが使われている理由も解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
pipsとは「pip(percentage in point)」の複数形で、通貨ペアの為替レートがどのくらい動いたのかを表す共通単位です。pipsは、特に損益や投資効率の計算に利用されます。 値動きだけでなく、FXにおける実質的なコストにあたるスプレッドの大きさも、pipsを使って表されます。
詳細は後述しますが、pipsは共通の単位といっても全てのFX会社が同じ尺度で使っている訳ではありません。具体的には、1pipsがいくらに相当するのかもFX会社によって違う場合がありますので、 十分に気をつけましょう。自分が口座を開設したいFX会社がどのように定義しているのか、事前に確認しておくことをおすすめします。
値動きをpipsで表すときの使い方を具体的に理解するために、米ドル/円が150.00円から150.50円まで上がったとしましょう。このとき、1pips=0.01円であれば、 米ドル/円は「50pips上昇した」と表せます。このように、pipsを用いることで、為替レートの変動をシンプルに表すことができます。
FXにおいてpipsが使われる理由は、さまざまな通貨ペアで統一された単位を使えるようにして、計算や分析をシンプルにするためです。
FXにはさまざまな通貨ペアがあり、為替レートを表示する単位は右側の決済通貨になります。米ドル/円といった通貨ペアでは、もちろん「円」が決済通貨として使われます。同様に、ユーロ/米ドルでは「米ドル」、ユーロ/英ポンドでは「英ポンド」が使われます。 このように、各通貨ペアで計算する通貨の単位が異なるため、値動きを比較するのが難しくなりがちです。
そこで役に立つのがpipsです。「10pips動いた」といった表現を使えば、複数の通貨ペアで取引していても、値動きなどを同じ尺度で把握でき、損益の計算も容易になります。 さまざまな通貨ペアの値動きなどをわかりやすく比較・分析できる点が、pipsを使う大きなメリットといえるでしょう。
1pipsがいくらなのかは、FX会社や通貨ペアによって違います。そのため、事前に確認してからFX取引を行いましょう。 ここでは、セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」の定義を用いて、以下の2つのパターンについて解説します。
セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、米ドル/円などの対円通貨ペア(円を含む通貨ペア)の場合は、1pipsは0.01円(1銭)に相当します。たとえば、米ドル/円が150.00円から150.01円に上がったときは 「1pipsの上昇」と表現されます。同じように、米ドル/円が150.10円から150.09円に下がったときは「1pipsの下落」と表現されます。
なお、対円通貨ペアでは、値動きやスプレッドを示すのに「銭」という単位も使われます。この点もあわせて覚えておきましょう。
セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、ユーロ/米ドルなど外貨同士の通貨ペア(円を含まない通貨ペア)の場合、 1pipsは0.0001通貨単位に相当します。
ユーロ/米ドルを例に考えてみましょう。ユーロ/米ドルが1.2000米ドルから1.2001米ドルまで上がったときは「1pipsの上昇」と表現されます。同じように、 ユーロ/米ドルが1.2000米ドルから1.1999米ドルまで下がったときは「1pipsの下落」と表現されます。つまり、ユーロ/米ドルでは「1pips=0.0001米ドル」ということになります。
続いて、pipsの具体的な使い方として、以下の2点について見ていきましょう。
pipsの使い方を覚えておくことで、複数の通貨ペアの間で自分の取引の成果を振り返ることが容易になり、その後の取引の判断にも役立てることができるでしょう。 なお、以降の計算例はいずれもセントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」の場合です。
pipsを使って損益を求めるには、以下の計算式を使います。
※「獲得pips」とは、買い建玉(ロングポジション)を建てた時の価格(A)と同建玉を決済したときの価格(B)の差(B-A)のことで、 マイナスとなる場合もあります。なお、売り建玉(ショートポジション)を決済する場合は、計算が逆(A-B)となります。
たとえば、米ドル/円が150.00円のときに10,000通貨の買い建玉(ロングポジション)を建て、 150.05円で決済した場合を考えてみましょう。獲得pipsは5pipsとなるため、利益は以下のように計算できます。
同じように、米ドル/円が150.00円のときに10,000通貨の買い建玉(ロングポジション)を建て、 149.95円まで下落したところで決済したとしましょう。このケースでは5pips分の損失が出ていることになるため、500円の損失となります。
この計算方法を理解しておけば、自分利益がどの程度なのか把握しやすくなるので、ぜひ覚えておきましょう。
pipsを使えば、投資効率を分析することも可能です。同じ額の利益を得た場合でも、より多くのpipsを獲得できているほうが、投資効率がよいといえます。
以下の2つの例を考えてみましょう。
この場合、①では50pips、②では10pipsを獲得しています。双方の利益は以下のように計算できます。
得られた利益の金額だけを見ると、①も②も共に5,000円です。しかし、①のほうがより少ない取引数量で、つまり、 より少ない取引金額で②と同額の利益を得ているのがわかるでしょう。このように、(取引金額にかかわらず)獲得pipsが多いほうが 投資効率がよいといえます。
損切り(損失を自身が設定する許容範囲内におさえること)や、利確(建玉を決済して利益を確定させること)は、FX取引において必ず行う注文です。しかし、損切りや利確の基準としてpipsを用いる場合には注意が必要です。為替レートが同じように動いたとしても、 取引数量次第で実際に発生する損益が変わるので、pipsだけを損切りや利確の基準とすることにはリスクがあります。
たとえば、以下の2つの例を考えてみましょう。
この場合、pipsだけで考えると、①と②は共に10pips分の損失が発生していることになります。 しかし、実際に発生している損失額は次のとおり異なります。
このように、pipsの数値が同じでも取引数量が増えるほど利益・損失額も大きなります。損切りや利確の基準をpipsだけで設定してしまうと、思わぬ損失を招くおそれがあるので気をつけてください。 特にFX初心者は、許容できる損失については「金額」で明確な基準を設定することが大切です。資金管理の観点からも、まずは金額を基準にして損切りラインを決める習慣をつけましょう。
また、利益を追求する観点でも、pipsだけで考えないことが大切です。「1日あたり20pips」というように、目標にpipsを活用している例を目にしたことがある人もいるかもしれません。 しかしながら、資金の額やトレードスタイルなどの要素によって目安は異なるため、単純にpipsだけを目標にするのはおすすめしません。 初心者のうちは、十分な証拠金を用意した低レバレッジで、無理のない範囲で取引を行うことを目指しましょう。
pipsとは為替レートの差を表す単位であり、損益や投資効率の計算といった場面で役に立ちます。獲得したpipsが同じでも、取引金額が大きければ損益の額も大きくなります。取引数量にも気をつけながら、 リスクをおさえた取引を行うことを心がけましょう。特にFX初心者は、損切りの基準として許容できる損失額を先に決めておくことをおすすめします。
次回の講座では、FXの注文方法の一種である「指値注文」と「逆指値注文」について、初心者向けに詳しく解説します。今回の講座でも登場した「利確」や「損切り」にも関わる注文方法なので、 リスク管理のためにもきちんと理解して取引に役立てましょう。