前回の講座では、1,000通貨でのFX取引で、「どの程度の利益・損失が発生するのか」などについて解説しました。FX取引は少額からでも始められます。しかし、実際の取引を始めるにあたって、「FXでどんな取引手法を選ぶべき?」「自分に合うトレードスタイルがわからない」といった疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。 取引手法やトレードスタイルごとに特徴があるので、メリット・デメリットとあわせて把握しておく必要があります。
この記事では、FXの基本的な取引手法やトレードスタイル、分析手法を解説します。初心者が利益を狙うためのポイントや、失敗しないためのリスク管理の方法もあわせて見ていきましょう。
FX取引の手法とは、大まかにいえば取引をするときのルールのことです。「いつ売買するのか」「どのような根拠に基づいて売買するのか」といった基準を設けることで、取引の指針として活用します。 自分に合った手法を確立することで、一時的な感情や気分に左右されず、冷静かつ再現性の高い取引ができるようになるでしょう。
手法が確立していないと、場当たり的な取引を繰り返して、大きな損失が出てしまうおそれがあります。手法が確立していれば、根拠に基づいた取引ができ、損失が出たとしても、 何が悪かったのかを冷静に分析して改善していくこともできます。
FX取引で安定した利益を得るためにも、FX初心者は、まずは自分なりの取引手法の確立を目指しましょう。
FX取引における売買の手法は、大きく以下の2種類に分けられます。
順張りと逆張りのどちらにもメリット・デメリットがあるので、特徴を理解して相場状況に応じて使い分けましょう。
順張りとは、相場のトレンド(流れ)と同じ方向に建玉(ポジション)を持つ手法です。上昇トレンドの場合は今後も上がることを見越して「買い」、 下降トレンドの場合は今後も下がることを見越して「売り」の建玉(ポジション)を持ち、利益の獲得を目指します。
今後もトレンドと同じ方向に進むという想定で流れに乗る取引手法のため、シンプルで取り組みやすいという特徴があります。わかりやすい手法のため、初心者の人におすすめです。 しかし、トレンドの転換が発生すると損失につながるリスクがあります。
逆張りとは、相場の流れに逆らう形で建玉(ポジション)を持つ手法です。上昇トレンドの場合はここから下がると予想して「売り」、 下降トレンドの場合はここから上がると予想して「買い」の建玉(ポジション)を持ちます。
逆張りはトレンドの転換を狙うため、うまくいけば大きなリターンを期待できます。しかし、トレンドが転換せずそのまま継続した場合は、 損失につながるリスクがあります。
FXのトレードスタイルは、1回あたりの建玉(ポジション)の保有時間と取引頻度で大きく4つに分類されます。
自分の生活リズムと取引にあてられる時間とを照らし合わせて、無理なく続けられるトレードスタイルを選びましょう。
デイトレードは、数時間~1日以内に売買を完結させるトレードスタイルです。翌日に建玉(ポジション)を持ち越さないことから、「日計り取引」とも呼ばれています。
| 項目 | 取引の特徴 |
|---|---|
| 取引 時間 |
数時間~1日 |
| 取引 頻度 |
1日に数回 |
| メリット |
|
| デメ リット |
|
短時間の値動きだけで利益を狙うので、ライフスタイルに合わせて好きな時間帯に取引できます。出勤前の早朝や昼休み、帰宅後などの空き時間でも取引できます。
スイングトレードは数日~数週間、日をまたいで建玉(ポジション)を保有するため、為替差益だけでなくスワップポイントによる利益も狙える※トレードスタイルです。
※取引の内容によって、スワップポイントは受取るだけでなく支払うこともあります。
| 項目 | 取引の特徴 |
|---|---|
| 取引 時間 |
数日~数週間 |
| 取引 頻度 |
月に数回程度 |
| メリット |
|
| デメ リット |
|
相場に張り付く必要がないため、時間的な余裕がある取引ができるでしょう。そのため、仕事や家事で忙しい人に向いているトレードスタイルです。しかし、 就寝中などの相場を離れているタイミングで大きな値動きが発生する可能性もゼロではありません。あらかじめ損切り注文を入れておくなどの対策をとって取引をしましょう。
ポジショントレード(長期トレード)は、数週間から数か月以上の長期間にわたって建玉(ポジション)を保有するトレードスタイルです。そのため、 経済状況や政治情勢を分析するファンダメンタルズ分析が重視されやすいのが特徴です。ファンダメンタルズ分析については後ほど解説します。
| 項目 | 取引の特徴 |
|---|---|
| 取引 時間 |
数週間〜数か月以上 |
| 取引 頻度 |
数週間に1回程度 |
| メリット |
|
| デメ リット |
|
スイングトレードと同じく、スワップポイントも狙いながら時間的な余裕をもった取引が可能です。しかし、 ファンダメンタルズ分析も求められることから、初心者よりも中~上級者向けのトレードスタイルといえます。
スキャルピングは、数秒から数分の短時間で何度も売買を繰り返すトレードスタイルです。小さい利益を積み重ねることで、最終的に大きな利益を獲得することが狙いです。
1日の取引回数が数十回から数百回に及ぶこともあるため、常にチャートに張り付いている必要があります。瞬間的な判断力と集中力が求められるので、 初心者にはおすすめできません。経験豊富な上級トレーダー向けのトレードスタイルといえるでしょう。
FXの相場分析には、主に次の2つの手法があります。
片方だけに頼るのではなく、両方を組み合わせることで相場の分析力を高めることができます。取引期間やトレードスタイルに応じて、どちらに重きを置くか柔軟に調整することも重要です。
テクニカル分析とは、過去の為替レートの推移に基づいたチャートパターンや、テクニカル指標から将来の値動きを予測する方法です。1日以内で取引が完結するデイトレードやスキャルピングはもちろん、 スイングトレードやポジショントレード(長期トレード)まで、幅広く活用できます。
視覚的かつ客観的な根拠をもとに取引できるのが、テクニカル分析のメリットです。テクニカル分析について詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
ファンダメンタルズ分析は、以下のような情報に注目して相場を予測する方法です。
たとえば、米ドル/円なら、アメリカと日本の両方の情報から「どちらの通貨が相対的に強くなりそうか」を判断して取引します。チャートの細かい動きよりも大きな流れを見るので、 数週間から数か月かけてゆっくり利益を狙うポジショントレード(長期トレード)に向いています。
FX初心者が手法やトレードスタイルを選ぶときは、以下の4つのポイントを考慮しましょう。
FX取引は、無理のない範囲で少しずつ経験を積みながら取り組んでいくことが大切です。まずはシンプルな手法から始めて、自分に合ったスタイルを模索しながら、 無理なく取引を継続していきましょう
FX初心者は、「テクニカル分析」でトレンドを見極めて「順張り」で「デイトレード」をすることが多いように見受けられます。為替レートが上がっているなら買い、 下がっているなら売りと、トレンドと同じ方向に進む想定で流れに乗る手法です。
トレードスタイルは、数時間~1日以内で取引するデイトレードであれば、1回の取引のリスクが比較的小さく、ライフスタイルに合わせて好きな時間帯で取引することが可能です。
分析手法は、テクニカル分析から始めるといいでしょう。過去のチャートパターンから将来の値動きを予測するため、客観的な判断基準を持って取引ができます。
FXでは「必ず利益を獲得できる手法はない」ことを理解しましょう。相場環境が変われば、その時点で選ぶべき手法も変わります。一度決めた手法だけに固執せず、 自分のルールと取引結果を検証しながら微調整していく姿勢を大切にしましょう。
FXの世界では、プロのトレーダーでも損失は避けられません。大切なのは、損失を小さくおさえながら、最終的に利益を残す運用を目指すことです。
検証と実践を積み重ねるほど、FX取引のスキルが磨かれていき、相場状況に合わせて手法を柔軟に使い分ける能力が身につきます。特に初心者は、 損切りなどのリスク管理をいち早く習慣づけることを心がけましょう。
FXで長期的に利益を獲得するためには、リスク管理が欠かせません。初心者が大きな損失を出すことなく、利益を獲得し続けるためにも、以下の5つのリスク管理を徹底しましょう。
リスク管理を怠れば、どんな手法でも利益を獲得するのは難しくなります。反対に、少額で始めた取引でも堅実に利益を増やしていければ、 それをもとに取引の規模を拡大していくことも可能です。
FXの手法やトレードスタイルは、生活リズムや取引経験に応じて選ぶことが大切です。FX初心者は、トレンドに沿って取引する「順張り」で、 数時間~1日以内に完結する「デイトレード」と客観的な判断ができる「テクニカル分析」から始めてみるのがよいかもしれません。
FX取引において、必ず利益を獲得できる方法はありません。リスク管理を徹底し、検証と実践を重ねながら、自分に最適な手法を見つけていきましょう。
次回の講座では、代表的な投資商品である株とFXについて、それぞれの特徴を比較しながら解説します。資産形成や投資に関心があり、どちらから始めるべきか迷っている人はぜひ参考にしてみてください。