FXと外貨預金の違いは?
それぞれの特徴を解説
はじめてのFX講座-第23回

FXと外貨預金の違いは?それぞれの特徴を解説【はじめてのFX講座-第23回】

前回の講座では、FXと株の違いなどについて解説しました。FXは通貨が投資の対象になりますが、外貨を扱う点で、外貨預金との違いが気になる人もいるのではないでしょうか。

この記事では、FXと外貨預金の基本的な仕組みやそれぞれの特徴について、比較をしながら初心者にもわかりやすく解説します。

STEP01
外貨預金とは

外貨預金とは、米ドルやユーロといった海外の通貨(外貨)で預金する商品のことです。金利が高い通貨で預け入れることで、日本円で預金するよりも多くの利息が期待できます。

また、円に替えるときに、預け入れたときよりも円安が進んでいれば、為替差益を得られる可能性があります。日本円だけでなく外貨にも資産を分散させることで、 インフレなどで円の価値が下落したときのリスクヘッジ手段としても利用できます。

STEP02
FXと外貨預金の違い

FXと外貨預金にはどのような違いがあるのでしょうか。利益を得る方法やレバレッジ、必要な資金額などを確認していきます。

スクロール
比較項目 FX 外貨預金
為替差益を得る方法 円高・円安どちらでも
利益を狙える
円安方向に進んだときのみ
利益を狙える
レバレッジ 最大25倍(※1) なし(1倍)
必要資金 数千円~ 数十円~
スワップポイントや
金利収入の受け取り
毎営業日
(スワップポイント)
満期時や解約時
(利息)
手数料・コスト 1通貨あたり
0.1銭~数銭程度(※2)
1通貨あたり
片道20銭~1円程度(※3)
税金 雑所得(申告分離課税)
  • 利息:利子所得(源泉分離課税)
  • 為替差益:雑所得(総合課税)
資金保全の仕組み 信託保全の対象 なし
(預金保険制度の対象外)
リスク
  • 為替変動によるリスク
  • レバレッジによっては
    損失が拡大するリスク
  • レバレッジによっては
    強制ロスカットが発生するリスク
  • 為替変動によるリスク

※1 国内個人口座の場合
※2 通貨ペアやFX会社によって異なる
※3 通貨や金融機関により異なる

それぞれの比較項目について、詳しく見ていきましょう。

為替差益を得る方法

FXと外貨預金では、為替差益を得る方法が異なります。

FXでは、「買い」と「売り」のどちらからでも取引を始められます。 そのため、為替レートが円高・円安のいずれの方向に進んでも為替差益を狙えます。

一方の外貨預金は、預け入れたときよりも円安になった場合に限り、為替差益を得ることができます。

レバレッジ

FXでは、国内の個人口座の場合、最大25倍のレバレッジで取引できますが、外貨預金にはレバレッジの仕組みはありません。

FXでは、レバレッジを利用することで少額の資金でも高額な取引ができ、短期間で利益を狙えるチャンスがあります。しかし、為替レートが予想と反対に動いた場合には大きな損失が生じるおそれもあるので、取引には十分な知識と慎重なリスク管理が必要です。 なお、FXでもレバレッジ1倍で運用した場合、強制ロスカットされることもなくなるため、リスクは外貨預金と同じになります。

なお、強制ロスカットについて詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

一方、外貨預金にはレバレッジはないため、預け入れた金額分の取引となります。為替レートの変化が小さい場合、発生する為替差損益も少なくなりますが、 資産運用の手段としては、高いレバレッジのFX取引と比較すると安定感があるといえるでしょう。

必要資金

FXと外貨預金では、同じ金額の取引を行う場合でも必要な資金額が異なります。

たとえば、1米ドル=150円のときに10,000通貨を購入する場合を考えましょう。このとき、FXでレバレッジ10倍の取引をする場合、150,000円の証拠金で購入が可能です。 一方、外貨預金で同じく10,000通貨を購入するには、1,500,000円を用意しなければなりません。

また、FXと外貨預金では最小取引金額も異なります。FXは最小取引単位が1,000通貨や10,000通貨のケースが多く、 少額の資金で始めたい場合はレバレッジを活用する必要があります。

外貨預金は1通貨単位(1米ドルや1ユーロ)から取引できるケースが多く、数十円から始められます。

スワップポイントや金利収入の受け取り

FXと外貨預金では、金利収入を受け取るタイミングにも違いがあります。FXでは、建玉(ポジション)を保有している間は原則として毎営業日にスワップポイントを受け取れます。 なお、スワップポイントは、対象通貨の金利の動向等によっては、支払となる場合がありますので注意が必要です。

一方で、外貨預金で金利を受け取るタイミングは、普通預金か定期預金かによって異なり、金融機関によってもさまざまです。毎月受け取れるケースもあれば、 満期時や解約時などに限定されているケースもあります。また、利息を受け取る際に税金が源泉徴収されます。

外貨定期預金の場合は原則として中途解約することはできませんが、可能な場合は中途解約金利が適用されます。この場合、税金が差し引かれると、利益がほとんど手元に残らないケースもあることに注意しましょう。 また、多くの銀行で、普通預金の金利は低く設定されていることが多く、スワップポイントと同程度の金額の利息を受け取りたい場合は、定期預金での運用が必要になるケースがほとんどです。

手数料・コスト

FXでは、ほとんどのFX会社が取引手数料を無料にしているため、実質的に取引にかかるコストはスプレッド(買値と売値の差)のみです。スプレッドは、0.1銭〜数銭程度に設定されていることが多いです。 なお、外貨で出金する場合は手数料が別途かかるケースがあります。

外貨預金のコストは通貨や金融機関によって異なりますが、為替手数料として1通貨あたり片道20銭〜1円程度かかることが多いです。また、口座維持手数料や送金・受取手数料などが発生するケースもあります。 結果としてFXよりもコストが高くなることがあるので、事前に確認しておきましょう。

セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、特定の金融機関を利用すれば外貨も無料で出金できます。詳しくは、以下のページをご参照ください。

税金

FXと外貨預金では、かかる税金の種類が異なるほか、損益通算や繰越控除ができるかどうかが異なります。

FX取引で得た利益は、雑所得(申告分離課税)として所得税(復興特別所得税を含む)・住民税の課税対象になり、一律20.315%の税率が課されます。 なお、会社員で、給与所得以外の副業所得(FX取引で得た所得を含む)が年間200,000円を超えていなければ、確定申告は不要です。

一方、外貨預金では、金利収入については利子所得として20.315%の税率が課されますが、為替差益については雑所得として総合課税となり、給与所得などほかの所得と合算されて課税されます。

また、FXでは損益通算と損失の繰越控除が適用可能ですが、外貨預金では適用されません。なお、損益通算と繰越控除とは、以下の制度のことを指します。

  • 損益通算:同一年に実現した利益と損失を相殺できる制度
  • 繰越控除:本年分の損失を控除しきれない場合、翌年以降にその損失を繰り越して最長3年間利益から控除できる制度

資金保全の仕組み

FXと外貨預金では、金融機関が破綻した場合などに備えて資金を保全する仕組みが異なります。

FXでは、FX会社に預けた証拠金や取引で得た利益などは、信託保全の対象になります。信託保全とは、対象となる証拠金などがFX会社の資産と分けて管理され、万が一、FX会社が破綻しても投資家の資産が保護される仕組みのことです。 FXは資金保全の観点で、手厚く保護されているといえるでしょう。

外貨預金は、預金保険制度(ペイオフ)の対象外となるため、万が一、金融機関が破綻した場合は預け入れた金額が戻らないおそれがあります。所謂、円普通預金や円定期預金などのように、預金保険制度に該当すれば元金1,000万円とその利息分が保護されますが、 外貨預金は対象外なので、保護を受けられません。

リスク

FXと外貨預金ではリスクにも違いがあります。FXでは、主に以下のようなリスクがあります。

  • 為替変動による損失
  • スワップポイントがマイナスになるおそれ
  • 高いレバレッジによる損失の拡大(強制ロスカットが発生する可能性があるほか、 レバレッジによっては預託した証拠金の額を上回る損失が生じる可能性)

一方、外貨預金の主なリスクは以下のとおりです。

  • 為替変動による損失(元本割れのリスク)
  • 預金保険制度の対象外

FXのほうがレバレッジを利用しているためリターンは大きくなりますが、為替レートが予想と反対方向に動いて損失が生じるリスクも大きくなります。 なお、FXでもレバレッジ1倍で運用する場合、為替変動による損失のリスクは外貨預金と変わりません。

STEP03
FXは外貨預金の代わりになる?

レバレッジ1倍でFX取引をすれば、発生する損益は外貨預金の場合と同じになり、損益の面では外貨預金の代わりになると言えます。ただし、 FXでは最小取引単位が決められているため、多くの場合、外貨預金よりも必要な資金の額は多くなります。

外貨預金における利息と、FX取引で得られるスワップポイントは、位置づけとしては近いと言えますが、外貨預金は利息から自動的に税金が差し引かれます。それに対して、FX取引のスワップポイントによる利益 (為替差益と合算)は、会社員であれば給与所得以外の副業所得(FX取引で得た所得を含む)が年間200,000円を超えていなければ確定申告が不要になります。

参考

STEP04
初心者にはFXと外貨預金どちらがおすすめ?

初心者が外貨に投資する場合、FXと外貨預金のどちらを選ぶのがよいのでしょうか。リスクの大きさや必要な資金額、運用のしやすさなどを十分に考慮することが大切です。 FXと外貨預金が、それぞれどのようなケースにおすすめなのか解説していきます。

外貨預金がおすすめのケース

外貨預金をおすすめしたいのは、次のようなケースです。

  • できるだけリスクをおさえたい
  • あまり取引の手間をかけたくない
  • 一定の決まった利息を受け取りたい

外貨預金にはレバレッジの仕組みがないため、比較的リスクを抑えた資産形成が期待できます。元本割れのリスクはありますが、FXで高いレバレッジで取引を行い、大きな損失を被るリスクは避けられるでしょう。 さらに、外貨預金は、預け入れた後は解約時や満期時まで取引する必要がないため、手間がかかりません。また、短期で利益を狙う方法というよりも、長期的な資産運用方法として活用されることが多く、 安定した金利収入を狙って取引をする方に向いていると言えるでしょう。

FXがおすすめのケース

FXをおすすめしたいのは、以下のようなケースです。

  • レバレッジを活用して資金を効率よく投資したい
  • スワップポイントでの利益を狙いたい

FXではレバレッジを利用して取引ができるため、資金を効率的に活用して利益を狙いたい人に向いています。また、日々発生するスワップポイントで利益が積み上がる点も魅力です。 ただし、スワップポイントは通貨ペアの金利差などさまざまな要素によって決まるので、マイナスになることもある点には注意しなければなりません。

FXは売買のタイミングが自由なうえ、信託保全という仕組みもあります。外貨預金を検討するのであれば、レバレッジ1倍でFX取引を始めてみるのもおすすめです。

STEP05
レバレッジ1倍のFXは
いいとこ取りの
運用方法

通貨ペアの最小取引単位を、レバレッジ1倍で運用できる資金があるのであれば、FXと外貨預金のいいとこ取りをすることができます。コツコツと1倍でポジションを増やしていき、 スワップポイントを受け取りながら、海外旅行などの際に、外貨で受け取って利用するといった使い方もできます。

レバレッジ1倍でのFX取引には、以下のような特徴があります。

  • 為替変動による損失リスクが外貨預金と同じ
  • 外貨預金と同様に一方行の取引しかしないので、取引の手間は外貨預金と同じ
  • 外貨預金よりも取引コストが大幅に低い
  • 定期預金のように資金が拘束されない
    (満期を待たずに必要なときに取引することが可能)
  • 高水準のスワップポイントを受け取れる
  • FX会社が破綻しても資産が保全される

また、FX取引の利益は、金額が小さければ確定申告の必要がありません。 セントラル短資FXであれば、建玉を決済せずに、そのまま外貨で受け取る「受渡」も可能※です。 その場合は為替差益が発生しないため、 評価益があったとしても税金がかかりません(ただし、お客さまが当社から出金後、他行で円換算した場合には為替差益として 申告の対象となります)。

FXと外貨預金のいいとこ取りをして運用したい方は、ぜひレバレッジ1倍でのFX取引も検討してみてください。

※1,000通貨あたり50円の手数料が必要

KEY POINT
FXと外貨預金は違いを
ふまえて選択しよう

FXと外貨預金はいずれも外貨を扱うものですが、利益を得る方法やレバレッジ、必要資金、手数料などの点に違いがあります。初心者の人はどちらを始めるべきか迷ってしまうかもしれません。 まずは、それぞれの特徴やリスク、違いを正しく理解したうえで、自分に適したものを選びましょう。

次回の講座では、FXの主なリスクとその対策について解説します。リスクについては、FX取引を始めるうえで必ず理解しておかなければなりません。 初心者にもわかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。