前回の講座では、FX取引におけるスワップポイントについて解説しました。スワップポイントについて理解はしたものの、「そもそもFX取引の証拠金って、どのくらい必要なの?」といった疑問のあるFX初心者の人もいるのではないでしょうか。
証拠金とは、取引を行うためにFX会社へ預ける資金のことで、取引の担保となるものです。FXにはレバレッジという仕組みがあるので、預けた資金以上の大きな金額で取引ができます。
今回は、証拠金の種類や計算方法、証拠金維持率の目安や注意点について、初心者向けにわかりやすく解説します。
復習になりますが、FXは日本語で「外国為替証拠金取引」と呼ばれ、証拠金をもとに異なる国の通貨を組み合わせた通貨ペアを売買し、その価格(為替レート)変動や金利の差によって利益を得ようとする取引です。
FX取引の仕組みについて、改めて確認したい人はこちらの記事もご覧ください。
FX取引を行うには、FX会社に預ける「証拠金」が必要です。証拠金を預けることで、比較的少ない資金でもレバレッジを利用して大きな金額で取引が可能になります。実際に取引を始める前に、証拠金について正しく理解しておきましょう。
証拠金には主に、「必要証拠金」「有効証拠金(口座清算価値)」「維持証拠金」があります。
ここでは、それぞれの特徴と計算方法について解説します。違いや計算方法をきちんと確認してから取引に進みましょう。
必要証拠金とは、FX取引において建玉(ポジション)を保有する際に最低限必要となる資金のことです。
FXでは、担保となる証拠金をFX会社に預けることで取引が可能になりますが、金融商品取引法によって、必要証拠金は「取引金額の4%以上」と定められているほか、取引開始後に保有する建玉(ポジション)に対しても、 この水準を維持することが求められます。これにより、FXでは、最大で25倍(=100%÷4%)のレバレッジで取引をすることが可能です。
ただし、高レバレッジでの取引には、大きな利益が狙える可能性と同じくらい、多大な損失が発生するリスクもあることを理解しておきましょう。
なお、必要証拠金がどのくらいの額なのかを知りたい場合は、通貨ペアごとの必要証拠金をFX会社の公式サイトで確認することができます。セントラル短資FXの必要証拠金一覧は、以下のページをご確認ください。
取引開始時の「必要証拠金」の額は、以下の計算式で求められます。
取引開始時に最低限必要となる証拠金(必要証拠金)は上記で計算されますが、実際に差し入れる証拠金については、どの程度のレバレッジを設定するかによって金額が異なります。
たとえば、米ドル/円の取引で、現在の為替レートが1米ドル/円=150円、取引数量を10,000通貨、レバレッジを2倍にする場合、実際に差し入れる証拠金の額は以下のように求められます。
10,000(取引数量)×150(為替レート)÷2(レバレッジ倍率)=750,000円(>必要証拠金60,000円)
レバレッジの倍率を低く設定するほど実際に差し入れる証拠金の額は増加し、反対にレバレッジの倍率を高くするほど少額の証拠金で取引ができることになります。
有効証拠金(口座清算価値)とは、口座残高に含み損益を加えた金額のことで、FX取引を継続できる余力があるかどうかを判断するために重要な指標です。
有効証拠金は、FX会社によって「口座清算価値」「余剰証拠金」など、異なる名称が使われることがあります。セントラル短資FXでは、「口座清算価値」をという用語を使っていますので、以下では「口座清算価値」と記載しています。
口座清算価値は、口座残高に含み損益を加えた金額です。以下の計算式で求められます。
たとえば、口座残高が100,000円で、現在の含み益が5,000円の場合、口座清算価値は次のようになります。
口座清算価値は含み損益によって増減するため、常に確認しながら取引を行いましょう。
証拠金維持率とは、「取引開始後に建玉を維持する為に必要な証拠金」(以下、これを「維持証拠金」といいます)に対して「口座清算価値」がどの程度の割合を占めているかを示す指標です。具体的な計算方法は次のとおりです。
FX取引を続けられるかどうかを判断する重要な指標であり、証拠金維持率が高いほど余裕を持った取引ができ、低いほどリスクが高まると覚えておくとよいでしょう。
証拠金維持率が設定された基準値を下回ると、FX会社によって強制ロスカットが執行されます。たとえば、セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では、以下のいずれかの条件を満たした場合に強制ロスカットが発動します。
強制ロスカットについてより詳しく知りたい人は、以下の記事とページもあわせてご確認ください。
前述のとおり、証拠金維持率は以下の計算式で求められます。
たとえば、口座清算価値が120,000円、維持証拠金が60,000円の場合、証拠金維持率は次のようになります。
証拠金維持率が高いほど余裕を持った取引ができ、低いほど強制ロスカットの可能性が高まることになります。
証拠金維持率が高い(=レバレッジが低い)ほど、リスクをおさえた取引ができます。証拠金維持率が低いまま運用を継続してしまうと、 急激な価格変動などにより強制ロスカットが発動する可能性が高まってしまいます。
リスクをおさえるためにも、レバレッジを低く設定するとともに、証拠金維持率は可能な限り高く保つように心がけましょう。 初心者の方が証拠金維持率を検討する際の参考として以下の表を活用していただくことも一案です。 なお、以下の証拠金維持率はあくまで参考数値であり、これを上回っていても相場状況次第で強制ロスカットが発動する可能性はありますのでご留意ください。
トレードスタイル | 証拠金維持率 | レバレッジ |
---|---|---|
デイトレード | 500% | 5倍 |
スイングトレード | 約830% | 3倍 |
長期保有 | 1,250% | 2倍 |
FXの証拠金に関する注意点を2つおさえておきましょう。
それぞれの注意点について解説します。
特に初心者のうちは、余裕を持った証拠金を入金し、低レバレッジで取引を始めましょう。そうすることで強制ロスカットのリスクも低減できます。
FX取引では、想定外の価格変動が起こることは決して珍しくありません。想定以上の大きな損失を被る事態を防ぐためにも、まずは低レバレッジで取引を始めることをおすすめします。
取引中は、証拠金維持率を常に確認するようにしましょう。
証拠金維持率は、損切りをして建玉(ポジション)の一部を整理したり、証拠金を追加で入金したりすることで高い水準を保つことができ、 これによって強制ロスカットが発動されるリスクを低くすることができます。
ただし、証拠金を追加で入金して一時的に証拠金維持率が高くなったとしても、その後の相場展開次第では損失がさらに拡大してしまう可能性がある点には注意が必要です。
FX取引には、担保としての役割を果たす「証拠金」が必要です。少額の証拠金でも、レバレッジの仕組みを利用することで大きな利益を狙えますが、 同時に大きな損失が発生するリスクも高まります。
まずは低レバレッジの取引から始め、建玉(ポジション)を長期保有する場合は証拠金維持率が高い水準になるよう、余裕のある証拠金で取引しましょう。
次の講座では、実際に取引をする際に選択する「通貨ペア」について、選び方やおすすめの情報とあわせて解説します。