前回はFXの実質的な取引コストであるスプレッドについて解説してきました。スプレッドは「BID(ビッド)」(売値)と「ASK(アスク)」(買値)の価格差となっています。
今回は、FX初心者の人でもわかるように、BID(ビッド)とASK(アスク)の意味や見方、一緒に覚えておきたい用語もあわせて詳しく解説していきます。FXの基礎について、さらにしっかりと学んでいきましょう。
第1回の復習になりますが、FXは買いからでも売りからでも取引が可能です。「なぜ買っていないのに売りから取引できるの?」と疑問に思った人もいるでしょう。
金融商品としてのFXは、実際にお金をやり取りせずに売買の差額だけを決済する「差金決済取引」を採用しています。FXでは、実際に両替するわけではないので、最初に売ることもできます。
たとえば、1米ドル=150円で1,000米ドルを売り、その後1米ドル=140円で1,000米ドルを買う場合を考えてみましょう。この場合、150,000円(150円×1,000通貨)で売ったものを140,000円(140円×1,000通貨)で買い戻すことになり、差額の10,000円が利益となります。
BID(ビッド)とASK(アスク)は、FX取引で通貨を売買する際に提示される価格のことです。FX会社の取引ツールや公式サイトなどでは、BID(ビッド)とASK(アスク)が同時に提示されています。
BID(ビッド)とASK(アスク)のそれぞれについて、詳しく見ていきましょう。
BID(ビッド)は、投資家の視点から見て通貨ペアを「売る」ときの価格を指し、FX会社が買い手側として提示する価格でもあります。
たとえば、米ドル/円=150円のBID(ビッド)が提示されている場合、投資家は1米ドル/円を150円で売ることができます。
差金決済取引の観点では、BID(ビッド)は投資家が「この価格である通貨ペアを売る約束をする」という意味であり、「売値」とも呼ばれています。
ASK(アスク)は、投資家の視点から見て通貨ペアを「買う」ときの価格を指し、FX会社が売り手側として提示する価格でもあります。
たとえば、米ドル/円=151円のASK(アスク)が提示されている場合、投資家は1米ドル/円を151円で買うことができます。
差金決済取引の観点では、ASK(アスク)は投資家が「この価格である通貨ペアを買う約束をする」という意味であり、「オファー」や「買値」とも呼ばれています。
BID(ビッド)とASK(アスク)に差が生じる理由には、FX取引にスプレッドという仕組みがあることが関係しています。
スプレッドとは、BID(ビッド)とASK(アスク)の価格差を意味しており、FX会社が投資家に安定した取引機会を提供し、為替変動リスクを管理するために必要な仕組みとなっています。 FX取引において実質的な取引コストであり、利益や損失に影響を及ぼす重要なポイントです。
スプレッドは、FX取引を安定させるために欠かせないものです。FX会社や選択する通貨ペアによってスプレッドの設定が異なるため、取引の前に確認しておきましょう。 多くのFX会社では、スプレッドは「原則固定」とされているものの、さまざまな要因によって変動することがあります。
スプレッドは、市場の取引量や参加者数、相場の変動などに大きく影響されます。利益にかかわる重要なポイントとなるため、 しっかりと確認・考慮しながら取引をするようにしましょう。スプレッドについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
FXのチャート上には、BID(ビッド)とASK(アスク)の価格が同時に表示されます。2つの価格を同時に表示する形式は「2wayプライス」と呼ばれ、投資家とFX会社との間で取引の透明性を確保し、公平性を保つためにあります。
たとえば、FX会社がASK(アスク)を150.20円として提示していたとしましょう。このとき、ASK(アスク)のみが提示されていては、投資家はスプレッドがいくらなのかわかりません。その結果、提示されている価格が適正かどうか投資家は判断できず、もしFX会社が不当な価格を提示していても気づくことができません。 ASK(アスク)とBID(ビッド)が同時に提示されていることでスプレッドの透明性が確保され、公平性を保つことができるのです。
取引画面では、左側にBID(ビッド)、右側にASK(アスク)が表示され、その間の数字がスプレッドを示していることが多いです。また、チャート上でBID(ビッド)とASK(アスク)を切り替えて表示できる機能もあります。
こうした仕組みによって、投資家はリアルタイムでBID(ビッド)・ASK(アスク)・スプレッドを同時に認識しながら取引をすることができます。
BID(ビッド)とASK(アスク)と一緒に「建玉(ポジション)」というFX用語も覚えておきましょう。
建玉(ポジション)とは、新規の買い注文・売り注文が約定(取引成立)した後、決済せずに保有している状態のことです。買った後でまだ売る注文をしていない建玉(ポジション)を「買い建玉(ロングポジション)」、売った後でまだ買う注文をしていない建玉(ポジション)を「売り建玉(ショートポジション)」といいます。
新規注文が約定すると、建玉(ポジション)を保有することになります。FXの建玉(ポジション)には保有期間が定められておらず、保有している日数によってスワップポイントによる損益が発生します。
投資においてよくいわれる「含み益」や「含み損」は、FXにおいては建玉(ポジション)を保有している時点での未実現損益を意味しており、その損益は実際に決済するまでは確定しません。
建玉(ポジション)には、以下の2種類があります。
それぞれについて、簡単に解説していきます。
買い建玉(ロングポジション)とは、差金決済取引の観点では「この価格でこれだけの通貨ペアを買った」状態のことです。
ある通貨ペアにおいて、将来の価格が上昇すると見込まれる場合、ASK(アスク)の価格で買って、買い建玉(ロングポジション)を保有し、実際に価格が上昇したタイミングでBID(ビッド)の価格で決済する(売る)ことで、利益が得られます。
たとえば、1米ドル/円=150円のタイミングで買い建玉(ロングポジション)を保有したとしましょう。その後、1米ドル/円=160円のときに決済すれば1米ドル/円あたり10円の利益が、1米ドル/円=140円のときに決済すれば1米ドル/円あたり10円の損失が発生することになります。
売り建玉(ショートポジション)とは、差金決済取引の観点では「この価格でこれだけの通貨ペアを売った」状態のことです。
ある通貨ペアにおいて、将来の価格が下落すると見込まれる場合、BID(ビッド)の価格で売って、売り建玉(ショートポジション)を保有し、実際に価格が下がったタイミングでASK(アスク)の価格で決済する(買う)ことで利益が得られます。
たとえば、1米ドル/円=150円のタイミングで売り建玉(ショートポジション)を保有したとしましょう。その後、1米ドル/円=140円のときに決済すれば1米ドル/円あたり10円の利益が、1米ドル/円=160円のときに決済すれば1米ドル/円あたり10円の損失が発生することになります。
BID(ビッド)とASK(アスク)は、FXで通貨を売買するときに提示される価格のことです。この2つの価格の差であるスプレッドは、FX取引の実質的なコストです。
スプレッドが広い(大きい)場合は取引コストが増えるため、せっかく出た利益が目減りしてしまいます。取引のときは、BID(ビッド)とASK(アスク)はもちろん、 スプレッドも確認するように心がけましょう。
BID(ビッド)とASK(アスク)はそれぞれ、売り注文と買い注文をするときに確認すべき価格となります。次回の講座では、 FX取引におけるさまざまな注文方法について解説していきます。