ここまでの講座では、FXを始めるまでの手順について解説してきました。FXについて調べていると、「スプレッド」という言葉をよく見かけますよね。
スプレッドとは、FX取引を行うときに必ず発生するコストです。コストをおさえることができれば、その分利益が増えます。取引を始める前にスプレッドの仕組みを理解しておくことで、FX取引におけるコストをおさえることができるでしょう。
今回は、FX初心者の人にもわかりやすく、スプレッドの基本について解説していきます。
国内のFX会社では多くの場合、以下の手数料は無料となっています。
FXではこれらの手数料が発生しないため、ほかの金融商品と比較すると、コストをおさえやすい点が魅力の1つといわれています。ただし、取引のたびに発生する「スプレッド」というコストがあります。FX取引を始める前に、スプレッドがどのようなものなのか、よく理解しておきましょう。
スプレッドとは、FX取引において通貨を売買するときの「売値(BID)」と「買値(ASK)」の価格差のことです。スプレッドはFXにおける実質的な取引コストとなっており、スプレッドが狭い(価格差が小さい)ほど、低コストといえます。
そもそもなぜスプレッドというものがあるのでしょうか。それには、FX会社が行う「カバー取引」や「マリー取引」が関係しています。
カバー取引とは、FX会社が顧客の注文の一部または同じ量を「カバー先」と呼ばれる銀行や証券会社などに注文することで、FX会社が負う為替変動リスクをおさえる取引のことです。このカバー取引のおかげで、FX会社は為替相場に影響されない安定した経営を行うことができます。そのため、カバー先が少ない、 あるいは信用の低いカバー先が多いFX会社を選ぶということは、安定した取引ができなくなるリスクがあります。
たとえば、顧客が米ドル/円を151円で100,000通貨買った場合、FX会社は同額で米ドル/円を100,000通貨売った(売り建玉(ポジション)を持った)ことになります。 FX会社が、カバー取引で米ドル/円を150円で100,000通貨を買い、売り建玉(ポジション)を相殺すると、顧客が米ドル円を買った151円と、カバー取引で米ドル/円を買った150円の差の1円に取引量の100,000通貨をかけた100,000円がFX会社の利益になるということです。
逆に顧客が米ドル/円を150円で買い、FX業者がカバー取引で米ドル/円を151円で買うと、100,000円がFX会社の損失になります。
マリー取引とは、FX会社内で同一通貨の売り注文と買い注文を相殺する取引で、スプレッドに相殺した取引量をかけたものがそのままFX業者の収益になります。 たとえば米ドル/円のスプレッドが1円の時に、ある顧客が米ドル/円を151円で100,000通貨買い、別の顧客が米ドル/円を150円で100,000通貨売ると、差額の1円に取引量の100,000通貨をかけた100,000円がFX会社の収益になります。
スプレッドは顧客にとって取引のコストですが、FX業者にとっては収益となり得ます。そのため、狭い(小さい)スプレッドで取引できるFX業者は、それだけ収益機会を削って顧客に利益を還元する努力をしているといえるでしょう。
スプレッドは通貨ペアごとに違うため、取引の際にスプレッドが狭い通貨ペアを選べば、取引コストをおさえられるでしょう。
米ドル/円やユーロ/米ドルなどのメジャー通貨ペアのスプレッドは、マイナー通貨ペアよりも狭い傾向があります。メジャー通貨ペアは非常に多くの投資家が売買するため取引量が多く、「流動性」が高いためです。「流動性」の意味は後ほど解説します。
ただし、特定の通貨ペアに関連するイベントや重要な経済指標が発表されるタイミングでは、スプレッドが一時的に広がり、取引のコストが高くなることもあります。この点についても後ほど詳しく説明します。
同じ通貨ペアであったとしても、各FX会社で同じ幅のスプレッドが提示されているわけではありません。スプレッドには、FX業者が顧客に利益を還元する姿勢が表れます。そのため、FXを始める際は、各FX会社のスプレッドを事前に確認してから口座を開設しましょう。
多くのFX会社では、スプレッドを「原則固定」としています。「原則固定」とは、相場の状況にかかわらず固定のスプレッドで提供されるという意味です。ただし、相場が急変するタイミングでは、カバー先となる金融機関の提示レートが大きく変化するため、一時的にスプレッドが拡大する可能性があるため注意しましょう。
また、スプレッドの「提示率」も重要です。提示率とは、実際のスプレッドが、広告などで宣伝されたスプレッドの範囲内にどの程度収まっていたのかを示す指標です。提示率が高いほど、FX会社への信頼性が高まるといえるでしょう。FX会社が原則固定のスプレッドを宣伝している場合は、業界のルールに則り、直近4週間の提示率が95%以上である必要があります。
セントラル短資FXの「FXダイレクトプラス」では取り扱う全通貨ペアのスプレッドが0.9銭(pips)以下※で、FX業界でも最狭水準です。「FXダイレクトプラス」のスプレッドは下記のページからご覧ください。 ※原則固定・例外あり。「pips」については次の項目で説明しています。
スプレッドには、「銭」と「pips(ピップス)」という2種類の単位があります。
銭は米ドル/円など、日本円と組み合わされる通貨ペアで用いられるスプレッドの単位で、1銭=0.01円に相当します。たとえば、米ドル/円の売値が150.000円で、買値が150.002円の場合、スプレッドは0.2銭となります。
pipsは、ユーロ/米ドルなど外貨同士の通貨ペアで用いられるスプレッドの単位です。米ドル/円では1pips=0.01円(1銭)に相当し、たとえばユーロ/米ドルでは1pips=0.0001米ドルとされています。仮に、ユーロ/米ドルの売値が1.05000米ドルで買値が1.05002米ドルだった場合、スプレッドは0.2pipsとなります。
スプレッドによる取引コストの計算方法は「往復の取引数量×スプレッド」で求められます。たとえば、10,000通貨を買ってその後売るという、”往復”の取引でスプレッドが0.2銭の場合にかかるコストは「10,000通貨×0.2銭=20円」と計算できます。
スプレッドの幅によって取引コストが変わるため、注意が必要です。
たとえば、スプレッドが0.2銭のときに10,000通貨の往復取引をすると、上記の計算のとおり取引コストは20円です。しかし、スプレッドが0.5銭になると、同じ取引数量を往復で取引してもそのコストは50円になり、差は30円です。
たったの30円の差ではありますが、取引回数が増えるほどその差は積み重なり、最終的には利益を大きく削る、または損失を大きく膨らませる原因になります。
スプレッドが広がりやすいタイミングとしては、主に以下の3つが挙げられます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
取引する人が少ない特定の時間帯では流動性が低いため、スプレッドが広がりやすい傾向があります。流動性とは、市場で取引がどれだけスムーズに行えるかを表す言葉です。買いたい人と売りたい人が多くいるときは流動性が高くなり、取引がスムーズに進みます。しかし、買い手や売り手が少ないときは流動性が低下し、スプレッドが広がりやすくなる傾向があります。
とくに、以下の時間帯は注意が必要です。
日本時間の早朝は市場参加者が少ないため、取引が少ない時間帯です。また、祝日やクリスマス、年末年始など、長期休暇の期間と重なるタイミングは市場参加者が少なく、 取引量も少ない傾向があります。流動性が低い時間帯は、スプレッドの変動に注意して取引しましょう。
米雇用統計などの重要経済指標が発表される前後のタイミングでは、値動きが大きくなり、スプレッドが一時的に広がることがあります。
指標発表にともなって大きな値動きが起こる可能性があるため、大きく利益を得るチャンスではありますが、それと同時に損失を被るリスクも高まります。無理をせず、慎重に取引することが大切です。
大きな地政学的リスクにつながる事件や金融危機など、世界経済に大きな影響を及ぼす可能性がある出来事が起こると、為替レートは急変してスプレッドが広がることがあります。たとえば、以下のような出来事は経済に大きな影響を与えます。
このような出来事が起きると、為替レートが急激に変動し、スプレッドが広がりやすくなります。
スプレッドとは、FX取引を行うときの買値(ASK)と売値(BID)の価格差のことをいいます。
FX取引を行う際は、スプレッドが実質的な取引コストにあたるため、スプレッドを考慮して取引をすることが重要です。スプレッドが狭い通貨ペアを選ぶ、変動が少ない時間帯に取引するといった工夫を心がけましょう。
次の講座では、FX取引における買値と売値を指すBID(ビッド)とASK(アスク)について、より詳しく解説していきます。