CC(相関係数)は、一定期間において2つの通貨ペアの価格変動がどれだけ似た動きをしているか、相関関係を数値化するインジケーターです。英語では「Correlation Coefficient」と呼ばれます。このインジケーターは、-1~+1の範囲で値を示し、相関の強さと方向性を判断するために使用されます。
セントラル短資FXのTradingViewチャートでは、CCを活用して異なる通貨ペア間の相関性を分析することができます。レバレッジをかけられるFXではリスク管理が重要となりますが、CCは取引におけるリスク分散を図る上で有効です。
▼豆知識
多くのインジケーターは、エントリー場所を決めるなど取引の判断に使用されます。一方、CCは取引の判断に直接使うわけではなく、取引方針や取引する通貨ペアの選択などに使用するのが一般的です。
CCの計算式は、以下の通りです。
CC = 価格A/Bの共分散 ÷ { 価格Aの標準偏差 × 価格Bの標準偏差 }
※ 価格A/B:N期間における通貨ペアA/Bの価格
※ N:対象期間
CCは、2つの通貨ペアの価格の共分散を、それぞれの通貨ペアの標準偏差で割って求めます。共分散/標準偏差の値が示すのは、それぞれ以下の通りです。
関連性を数値化した共分散ですが、対象とする通貨ペアの価格帯によって異なる水準の値となる性質があります。そのため、分析対象が全て同じ価格水準であれば共分散を比較できますが、価格水準が異なる場合は共分散による比較ができません。
そこで、この共分散の値を価格変動の大きさに連動する標準偏差で割り、比較できるようにした指標が相関係数です。これによって相関係数は必ず-1~+1の範囲の値をとることになり、1に近いほど正の相関、-1に近いほど負の相関、0に近いほど相関が弱いという、一貫した基準で読み取ることができます。
共分散は、以下のように計算することで、関連性を数値化しています。
価格A/価格Bの共分散
= 対象期間の「( 価格A - 平均A ) × ( 価格B - 平均B )」の合計 ÷ N
※ 価格A/B:N期間における通貨ペアA/Bの価格
※ 平均A/B:N期間における価格A/Bの平均値
※ N:対象期間
このように共分散は、2つの通貨ペアの価格が、それぞれの平均値からどれだけズレているかを調べて算出します。具体的には、各期間におけるズレ具合を掛け合わせた値(積)の、設定期間(N)における平均値です。
ズレ具合(価格と平均の差)は、価格が平均値より上にズレればプラス、下にズレればマイナスとなります。そのため、ズレ具合の積は、2つの価格が同じタイミングで同方向にズレるとプラス、逆方向にズレるとマイナスとなる仕組みです。
ズレ具合の積の平均値である共分散は、同じタイミングで同方向にズレることが多ければより大きなプラスの値、逆方向にズレることが多ければより大きなマイナスの値をとることになります。
例えば、以下の5つの通貨ペアについて、共分散/CCの値は次のように計算されます。なお、設定期間(N)は5とします。
期間 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 平均値 | 標準偏差※ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
通貨ペアA | 100 | 105 | 110 | 115 | 120 | 110 | 7.07… |
通貨ペアB | 10.0 | 10.5 | 11.0 | 11.5 | 12.0 | 11.0 | 0.707… |
通貨ペアC | 1.00 | 1.05 | 1.10 | 1.15 | 1.20 | 1.10 | 0.0707… |
通貨ペアD | 120 | 115 | 110 | 105 | 100 | 110 | 7.07… |
通貨ペアE | 110 | 109 | 112 | 108 | 111 | 110 | 1.41… |
※ 標準偏差の計算式は後述
通貨ペアA/Bの共分散:
{( 100 - 110 ) × ( 10.0 - 11.0 ) + ( 105 - 110 ) × ( 10.5 - 11.0 ) + ( 110 - 110 ) × ( 11.0 - 11.0 ) + ( 115 - 110 ) × ( 11.5 - 11.0 ) + ( 120 - 110 ) × ( 12.0 - 11.0 )} ÷ 5 = 5
通貨ペアA/Cの共分散:
{( 100 - 1.00 ) × ( 1.00 - 1.10 ) + ( 105 - 110 ) × ( 1.05 - 1.10 ) + ( 110 - 110 ) × ( 1.10 - 1.10 ) + ( 115 - 110 ) × ( 1.15 - 1.10 ) + ( 120 - 110 ) × ( 1.20 - 1.10 )} ÷ 5 = 0.5
通貨ペアA/Dの共分散:
{( 100 - 110 ) × ( 120 - 110 ) + ( 105 - 110 ) × ( 115 - 110 ) + ( 110 - 110 ) × ( 110 - 110 ) + ( 115 - 110 ) × ( 105 - 110 ) + ( 120 - 110 ) × ( 100 - 110 )} ÷ 5 = -50
通貨ペアA/Eの共分散:
{( 100 - 110 ) × ( 110 - 110 ) + ( 105 - 110 ) × ( 109 - 110 ) + ( 110 - 110 ) × ( 112 - 110 ) + ( 115 - 110 ) × ( 108 - 110 ) + ( 120 - 110 ) × ( 111 - 110 )} ÷ 5 = 1
通貨ペアA/Dの共分散はマイナス、それ以外はプラスとなりました。このことから、通貨ペアA/Dは逆方向に動くことが多く、それ以外は同方向に動くことが多いことが読み取れます。
ただし、通貨ペアA/B/Cは桁が違うだけで動きは完全に同じですが、通貨ペアA/Bの共分散は5、通貨ペアA/Cの共分散は0.5と、異なる値です。価格水準が異なると、共分散では比較ができなくなることが分かります。
続いて、CCは以下のようになります。
通貨ペアA/BのCC:5 ÷ ( 7.07… × 0.707… ) = 1
通貨ペアA/CのCC:0.5 ÷ ( 7.07… × 0.0707… ) = 1
通貨ペアA/DのCC:-50 ÷ ( 7.07… × 7.07… ) = -1
通貨ペアA/EのCC:1 ÷ ( 7.07… × 1.41… ) = 0.1
このように、すべて-1~+1の範囲の値となり、比較できるようになりました。
通貨ペアA/Bと通貨ペアA/CのCCはいずれも1で、完全に同じ動きをしていることが分かります。また、通貨ペアA/DのCCは-1で、完全に反対の動きをしていることを示しています。また、通貨ペアA/EのCCは0.1で、両者の値動きには関連性が薄いことを示しています。
▼豆知識
例えば、強い正の相関にある2つの通貨ペアを両方「買い」で取引すると、リスクは倍近くになります。リスクが大きくなると、成功時の利益が大きくなると同時に、失敗時の損失も大きくなります。リスクを抑えたい場合は、片方は「売り」から入る/負の相関のある別の通貨ペアを選ぶ、といった戦略が考えられます。
標準偏差はデータのばらつき具合を数値化する統計的な指標で、一般的に「σ」と表記されます。標準偏差の計算式は、以下の通りです。
分散 = 対象期間の「 ( 価格 - 平均)2」の合計 ÷ N
標準偏差 = 分散の平方根
※ N:対象期間
先ほどの価格推移の場合、標準偏差はそれぞれ以下のように計算します。
通貨ペアAの標準偏差:
{( 100 - 110 )² + ( 105 - 110 )² + ( 110 - 110 )² + ( 115 - 110 )² + ( 120 - 110 )² } ÷ 5 = 50
√50 = 7.07…
通貨ペアBの標準偏差:
{( 10.0 - 11.0 )² + ( 10.5 - 11.0 )² + ( 11.0 - 11.0 )² + ( 11.5 - 11.0 )² + ( 12.0 - 11.0 )² } ÷ 5 = 0.5
√0.5 = 0.707…
通貨ペアCの標準偏差:
{( 1.00 - 1.10 )² + ( 1.05 - 1.10 )² + ( 1.10 - 1.10 )² + ( 1.15 - 1.10 )² + ( 1.20 - 1.10 )² } ÷ 5 =0.005
√0.005 = 0.0707…
通貨ペアDの標準偏差:
{( 120 - 110 )² + ( 115 - 110 )² + ( 110 - 110 )² + ( 105 - 110 )² + ( 100 - 110 )² } ÷ 5 = 50
√50 = 7.07…
通貨ペアEの標準偏差:
{( 110 - 110 )² + ( 109 - 110 )² + ( 112 - 110 )² + ( 108 - 110 )² + ( 111 - 110 )² } ÷ 5 = 2
√2 = 1.41…
CCをチャートに表示する基本的な流れは以下の通りです。
表示したインジケーターは、主に以下の方法で削除することができます。
▼豆知識
チャート上で以下のようにキーボードを入力すると、マウスなしで素早く CCをチャートに表示することができます。
/ ⇒ cc ⇒ ↓ ⇒ Enter
※インジケーターのウインドウは「Esc」を2回押下で閉じます
CCの設定ウインドウの「パラメーター」タブについて、①〜②の項目で調整できる内容を紹介していきます。
CCの計算で、メインシンボルと比較するシンボルを設定します。
CCの計算対象とする期間(計算式のN)を設定します。デフォルトは「20」です。