会社勤めをしながら副業で収入を得ている人は、確定申告の仕組みが気になるのではないでしょうか。「自分も確定申告が必要なの?」、「確定申告をすると副業の収入が会社に知られてしまうのでは?」などと考える人もいるでしょう。
この記事では、副業をしている人が確定申告する際に知っておくべきことを解説するので参考にしてください。
確定申告とは、所得に対してかかる税金(所得税)を計算して、精算する作業のことです。会社員の場合は、会社が年末調整をしてくれるのでほとんどの人が確定申告不要です。しかし、副業をしている会社員には、確定申告が必要な場合があります。あなたは確定申告が必要かを、以下を参考にチェックしてみましょう。
以下のような場合は、会社員でも確定申告が必要です。
1のケースでは、副業をしていなくても確定申告が必要です。
2のケースの「給与以外の所得」とは、クラウドソーシングなどで仕事を請け負った場合の所得や、投資の運用益などが該当します。所得とは、収入金額から認められている経費を差し引いたものです。基本的に副業やFXなどの運用益は雑所得※として、これに該当します。
※雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得のこと。
3のケースの「年末調整をしていない給与の収入金額」とは、居酒屋などのアルバイトで得た収入金額そのものを指します。
たとえば、副業で給与をもらうアルバイトとクラウドソーシングをかけもちしている場合は、アルバイトの給与収入とクラウドソーシングの所得の合計が20万円を超えているなら、確定申告が必要です。
副業の給与収入や、所得の合計が20万円以下の人は、確定申告が不要です。ただし、副業収入のある人が確定申告をしない場合は、住民税の申告が必要になります。住民税の申告は、1月1日時点で住所のある市区町村の役所にて、通常毎年3月15日までに行わなくてはなりません。
確定申告は、必要な書類を準備し申告書を作成して、住所のある地域を管轄する税務署に提出することで完了します。ここからは、副業の確定申告をする方法を解説します。
確定申告の申告書提出期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。
確定申告に必要な書類は申告書と、申告書に添付して提出する書類です。ここから詳しく見ていきましょう。
確定申告書の書式は税務署でもらえるほか、国税庁の確定申告書等作成コーナーで、作成・ダウンロードすることも可能です。申告する所得が給与所得、雑所得、配当所得、一時所得のいずれかに該当する場合は、作成が簡単な確定申告書Aを使用できます。
一方、確定申告書Bはすべての所得に対応できる申告書です。副業の所得が給与所得・雑所得であれば、確定申告書Aの方が項目が少なく、記入の手間が省けます。ただし、FXの雑所得を申告する人は確定申告書Bを使用します。
申告書が完成したら、直接持参、郵送、e-Tax(国税電子申告・納税システム)での送信のいずれかにより税務署に提出します。
では、副業をしたい人はどのように確定申告を行えばいいのでしょうか?
副業により確定申告をすると、会社から給与天引きされる住民税の額が増えるので、会社は副業していることを知ることができます。
住民税の納付には「特別徴収」と「普通徴収」の2つの方法があります。特別徴収は、給与天引きで会社が住民税を納付してくれる方法です。給与所得者の住民税は、特別徴収が原則となっています。一方、普通徴収は、自治体から送付される納付書または口座引き落としにより、納税者が自ら納付する方法です。
会社員にとっては、特別徴収は住民税納付の手続きを会社が代行してくれるので手間が省けますが、副業をしている場合は、住民税の税額が会社にも伝わります。
しかし、副業が給与所得以外であれば、確定申告書A・Bの第二表「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄の「自分で納付(普通徴収)」に、マルをすることで、副業分の住民税は別途自分で納付することになり、会社に情報が伝わらなくなります。
ただし、副業が給与所得の場合は、特別徴収が原則で、普通徴収が選択できないので注意が必要です。
副業で確定申告が必要な人が申告しないとどうなるのでしょうか。期日までに確定申告をしないと、ペナルティーが発生します。ペナルティーには、税金を納めるのが遅れたことに対する延滞税と無申告に対する無申告加算税があります。
さらに、悪質な行為とみなされた場合には重加算税が課されることもあるので、注意が必要です。いずれにせよ、副業の確定申告は、期日までにきちんと済ませましょう。
最後に、副業の収入にかかる所得税の計算方法を解説します。
所得税では、所得を10種類の所得区分に分けて所得金額や税額を計算します。副業における所得の種類は、主に給与所得と雑所得です。給与所得は、給与収入から給与所得控除を差し引いて求めます。給与以外の副業収入のほとんどは雑所得に分類されますが、規模が大きくなると事業所得に該当することに注意しましょう。
所得税は、すべての所得を合計し、所得控除を差し引いた課税所得金額に課税されます。この課税方式を総合課税といいます。ただし、FXの雑所得など一部の所得は、総合課税の所得と分けて税金を計算します。これを申告分離課税といいます。
所得税の計算は、総合課税か申告分離課税かによって変わります。
総合課税の所得税額を計算する手順は、以下のとおりです。
総合課税では、副業がある場合でも本業と副業の所得を合算して1年間の税額を計算しなおします。
【アルバイトで給与所得を得た場合の所得金額】
副業が給料をもらうアルバイトの場合は、本業と副業の1年分の給料を合算します。合算した収入金額から給与所得控除を差し引いて給与所得金額を求めます。
【クラウドソーシングなどで雑所得を得た場合の所得金額】
副業がアフィリエイトやクラウドソーシングなどの雑所得の場合は、副業の収入から必要経費を差し引いて雑所得金額を求めます。求めた雑所得と本業の給与所得を合計します。
上記で求めた所得金額から、配偶者控除や生命保険料控除などの所得控除を差し引きます。差し引いた残りの金額が課税所得金額です。
課税所得金額に所得税率を掛けて、所得税の金額を求めます。住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、求めた所得税の金額から差し引くことが可能です。
最終的な所得税額から本業などですでに源泉徴収された所得税額を差し引いて、納税額を求めます。
たとえば、本業の課税所得金額が400万円の場合は、所得税額は37万2,500円(400万円×20%-42万7,500円)となります。ここに副業の所得が加算され、課税所得金額が450万円になったとします。その場合の所得税額は47万2,500円(450万円×20%-42万7,500円)で、10万円(47万2,500円-37万2,500円)が納税額となります。
税率は国税庁のサイトを参考にしてください。
申告分離課税は、総合課税とは対照的に、ほかの所得と合算せずに別々に課税する方法で、一律20.315%の税率で所得税が課されます。ちなみに、20.315%の内訳は、所得税15.315%(基準所得税の2.1%の復興特別所得税を含む)と住民税5%から構成されています。
FXの運用益は雑所得に分類されますが、申告分離課税です。FXの運用益から必要経費を差し引いた所得金額に、一律20.315%の税率で所得税が課されます。