自分のやりたいことを実現するためにFIREを選択する方もいるでしょう。
FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉で、経済的に自立をすることで、仕事を早期リタイアする事です。
生きていくために必要な資産を形成しつつ、自己実現のためのFIREを成功させるためには押さえておきたいポイントがあります。
本記事では、元GAFA(※)系企業の部長を経験し、40代前半で資産1億円以上を達成して、FIREを成功させた「寺澤伸洋さん」にインタビューを行いました。
GAFA時代から作家活動を行っていた寺澤さんの現在の執筆生活についてや、自己実現に向けたFIREの考え方・ポイントは必見です。ぜひ最後までご覧ください。
※GAFAとは米国IT企業の大手4社Google(グーグル)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック、現メタ)、Amazon(アマゾン)の頭文字を取った言葉。
寺澤伸洋さん
40代前半で1億円を超える資産形成を達成し、夫婦でFIREを達成。元GAFA部長で、在籍中にこれまでの経験を書籍化。現在も作家活動を行いながら、資産運用を行っている。FIREしたことで、2人の息子とゆっくり一緒に過ごす時間を確保できている。
Twitter: https://twitter.com/ohtsuma?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
25歳の頃、メーカーで経営企画に所属していた時の上司(Nさん)に非常に多くのことを教えてもらい、「Nさんの教えを必ず本にします!」と約束して本を書いたのがきっかけです。
その約束を果たすために2020年3月にその物語を電子書籍で出版しました。ただ、当時は売れる/売れないというよりは、ただNさんに「出しましたよ!」と言いたかっただけなんですが、それが素人の本としては異常なほど読まれたことから、KADOKAWAから書籍化しました。
その後もダイヤモンド社、世界文化社から計3冊の本を商業出版し、一気に作家として階段を上がった感じです。電子書籍版のシンデレラストーリーと言えるかもしれません。
現在は順調に部数を伸ばし、2021年12月に著者累計10万部を達成しました。今は20万部を達成すべく、さらに本を出そうと意気込んでいます。
「いい本を出してやる!」っていう思いが、すごくモチベーションにつながりましたね。
紙も電子もそうですが、「手を抜いた作品を出して読者にがっかりされたくない」、「最高のものを作り上げたい!」というのがモチベーションを保つことが出来ているポイントだと感じます。
僕は執筆が短期間なタイプで。1年かけてゆっくりと本を書くことを、全くよいとは思ってないですね。だいたい1ヶ月、2ヶ月で出版しています。
僕、書くのがすごく早いんですよ。1冊目の思考法の本を電子書籍で出版したときには、2週間程度の製作期間でした。
その後、転職についての本を書いたときは、4月末に書きますとSNSで宣言して、ゴールデンウィーク中に書いて、5月6日とかに出したんですよ。
やはりアクションが短ければ短いほど、次のアクションもすぐに取れるじゃないですか。
1年かけて書いた本が売れなかったら、もう最悪でしょ(笑)。1つのアクションが短いと、はい次、はい次ってどんどんチャレンジできますから。
早さが最高の武器というか、執筆において一番大切にしたいポイントですね。
当時は会社員だったので、終業後23時から夜の2時まで執筆をするみたいなことを、しかも3冊同時にやっていたんです。
でも、紙の本を書いていたときのことはあんまり覚えてないんですよ。本当に、朝から晩まで一歩も家の外に出ないで、パソコンの前に張り付きだったんです。当時はかなり頑張っていたはずなんですけど、全く記憶がなくて。半年ぐらい空白があって気がついたら3冊ぐらい本ができていた、みたいなそんな感じですね。(笑)
寺澤さんのツイート。執筆活動において意識することについて触れている。
そうですね、執筆のスピードは加速したと思います。FIREしたことで、とにかく何にも追われずに、好きな時に好きな活動をできることが大きいです。
FIREしたことで時間的にもストレス的にも解放され、有意義な作家活動になっていると感じます。
最近も8万字(通常書籍と同等量)の電子書籍を1ヶ月で書き上げることができました。
例えば、20代の時に「絵を描いて生きていきたい」とか、「音楽で食べていきたい」と思っていた人が夢破れて、就職せざるを得なかったっていうパターンはたくさんあると思っていて。
そういう経緯で会社員として働いている人たちが、こつこつ頑張って、40代や50代で資産を貯めてFIREして、自分のやりたかったことにもう一度挑戦していくのって、すごくいい生き方だと思うんです。
今だったらSNSで、好きな絵を描いたり、音楽を作って発信したりすれば、可能性を掴んで売れるかもしれないし。
それに、こう生きたい・これをやりたいといったFIRE後の目標を持つことで、より意欲的に、楽しみながらFIREの準備にも取り組めますしね。
こうした「リタイア」の文脈だけでなく、自己実現という目標を持ったFIREも僕はとても魅力的だと思いますね。
以前は情報発信としてブログを活用していましたが、今は全く更新をしていないですね、もう2年ぐらい。
僕のブログは雑記ブログだったので、あまりSEOも強くなく、読者もつかなかったんですよね。ですが、その中の記事をテーマに沿ってまとめてKindle書籍化することで、一気に読まれるようになりました。
その経験をして以来、Kindle書籍の可能性を感じ、自分の時間をそちらに注力していったという経緯があります。また僕自身、一昔前は、検索をして色んな方のブログを見ていましたが、今はもうブログってあんまり読まれないなっていう感覚があるんで、あまりそこにフォーカスすることは得策でないと思っています。
僕、つい2022年2月にKindle出版のやり方に関する本も書いたのですがKindle書籍は、まずはAmazonの検索のSEO対策が必要だと考えています。
電子書籍の1冊目は「40代でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ~」のようなタイトルにしたんです。当時「GAFA」という言葉が流行っていたため、そのワードで検索されたんだろうなと感じます。個人のKindle作家ってどうしても、出版社が出す広告などがないので、人の目に届きにくいじゃないですか。その弱者の戦略としては、「今ある時流に乗る」しかないんですよね。
だから、まずはインプレッションを増やすための施策として流行りのキーワードをちりばめて、どうやってその本に出会ってくれるのか、という点にフォーカスをしています。
YouTubeに関しては、動画の編集がすごく大変なイメージです。
その作業が苦にならない人は、YouTubeで収益化を図ればいいと思うんですけど、1つ動画を作ってみて、改めて僕は、この長い時間を編集に使うくらいだったら、本1冊書いた方が圧倒的に効率がいいなという風に感じました。
YouTubeとKindle出版って実はすごくビジネスの形態が似ていると思っています。まず、ユーザーが気軽に見られるじゃないですか。
YouTubeは無料、Kindleは月額980円払えば、Kindle Unlimited対象の書籍が読み放題。さらに、YouTubeは見てもらえば、Kindleの本ならそれを読んでもらえば収益が入る仕組みです。
あとは、その収益がどこから入るかというと、YouTubeはGoogleから、KindleはAmazonから入ってくるわけですよね。
ものすごくビジネス形態としては似ているので、YouTubeでの発信が得意な人はYouTubeを活用したらいいし、Kindleでの出版が得意な人はKindleに行ったらいいと思います。
違うのは、マネタイズまでの期間ですよね。YouTubeは1,000人のチャンネル登録と4,000時間、1年で見られないといけないんですけど、Kindleは出した翌日からマネタイズできる仕組みですから、そこの違いは大きいと思います。
僕の考えとしては、YouTubeは更新し続ける手間がありますが、Kindle本は1度出してしまえばもう何もしなくてもお金が入ってくる可能性があるので、そこが良いなと思っています。
自分がいいものを出せるところに特化して、いいものを出し続けるというのが、成功の秘訣だなと思います。
注釈:本章のYouTube、Kindleの収益や条件はあくまで一例であり、実際の情報は各公式サイトをご確認ください。
寺澤さんのツイート。家庭を持っている人のFIREへの道のりについてツイートされている。
株式投資を始めたのは2004年、28歳ぐらいの頃ですかね。
当時はデイトレードで億の資産を達成する人が注目をされていた時代で、僕もそうした情報に惹かれて株式投資をはじめました。証券口座は、手数料が他より安かったという理由で決めました。
また、僕が利用していた会社は、当時ネットで証券が買える会社の中で、一番インターフェースとしても使いやすかったのも選んだ理由の一つですね。
エクセルを活用して、自分で「どの株の出来高が急増しているのか」が見られるような仕組みを作っていました。既成のツールだけに頼らず、かなりテクニカルな感じで株式の運用を始めましたね。
リスク分散をして投資するべきだと思います。ただ、銘柄を分散しても下がる時は一緒に下がってしまうので、時間(購入するタイミング)を分散すべきですね。
すなわち、ドルコスト平均法(※)で投資していくのがよいかと思います。何に投資するかよりも、どれだけ長く投資できるかが重要ですね。なので、若い人ほど早めにドルコスト平均法での投資に着手してほしいと思っています。
ドルコスト平均法では、下げた時ほど大きく購入できるし、いったん下げてから上げた方が、利益が大きくなるので上下に一喜一憂せず、何も考えずに一定額をコツコツと積み上げていくべきだと思っています。
※価格が変動する金融商品を、一定の金額で定期的に購入する方法
FIREの資産運用って、一般的に4%って言われているじゃないですか。僕は全然それを信用してなくって。まさに今(2021年12月時点)なんか、米国株がものすごく下がっているじゃないですか。
それで、FIREしている人たちってすごく焦っていると思うんですよね。資産運用1本柱だけの方は焦ると思うんですけど、僕の場合、毎月印税が入ってくるので、株が下がろうが何が起きようが、全然焦らない。
1本柱の方と比べて、心の余裕が全然違うと思うんですよね。そういう意味では、収入源が何個もあるっていうのは、すごくいいなと思います。
印税に限らず、YouTubeの人はYouTubeの広告収入でいいだろうし、収入の柱を増やしておくことが大切だと思いますね。
インターネット期以前の、作家や画家、作曲家などのクリエイターは、どうにかして出版社やレーベル大手に売り込んでチャンスを得るしかなかったと思います。
あらゆるチャンスを逃さないためには、そういったクリエイターが会社員として働きながら活動するという形は、なかなか難しかったと思います。
しかし、SNSで人同士が繋がりあえる現代では、マネタイズが以前に比べて圧倒的に容易になってきています。作家はKindleでマネタイズし、その本が売れれば出版社から声がかかる。
画家はInstagramで世の中にアピールできるし、作曲家・音楽家はYouTubeを通してバズれる時代になりました。
こういう時代では、会社員として安定した生活を確保しながら、副業として自分の夢を追い続けてマネタイズし、その収益が会社員の収入と比較しても見劣りがしなくなってきたタイミングで、軸足を副業に移すということをすべきだと考えます。
投資に関しては、そうした会社員・副業とは同じ軸で語られるものではなくて、別途そうした定期的・不定期な収入から、一定金額をコツコツとドルコスト平均法で積み立てていくことが大切であると考えています。
投資については、何に投資するかよりも、複利効果でどれだけ長い期間出来るかの方が重要だと考えているので、若い人にこそ投資を早く始めることの大切さを知ってほしいと考えています。
寺澤さんのツイート。
今回は、作家として新たな人生を歩むためFIREした寺澤さんに、FIREと作家生活についてのインタビューを行ってきました。
寺澤さんは、多少過酷な時期があったものの、会社員として働きながら副業としてクリエイティブ活動を行い、なおかつ資産運用もコツコツ行ったことで、FIREを達成していました。FIRE達成後は、やりたい仕事と資産運用の収益で生活するという、ある種理想の生き方とも言える生活を過ごしています。
FIRE達成後は何にも追われず、自分の好きなことを追求する時間を得られるため、FIRE前から自分のやりたいことを少しずつ始めて準備するのも良いかもしれません。場合によっては、そのやりたいことでも十分稼げるようになり、より安定したFIRE生活を過ごす手助けになる可能性があります。
クリエイティブ活動以外でも、「自分のお店を持ちたい」、「動物に関わる仕事がしたい」など、みなさんがぼんやり叶えたいと思っている夢を実現するためにFIREを目指すのも、1つの生き方かもしれません。
経済的自立には、投資という手段がやはり重要だと思いますので、長い期間運用するためにも、まず一度出来る範囲で投資を試してみてはいかがでしょうか。