1級ファイナンシャル・プランニング技能士
中村 奈津紀 氏
岐阜県出身。10年以上の金融機関勤務経験を経て2021年5月独立。金融機関在職中の2019年3月、1級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得。2020年12月、宅地建物取引士試験に合格。
私が家計のご相談を受ける際は、最初に収入と支出の状況を伺います。収入は「手取り」でお伺いしますし、支出は「光熱費はお幾らぐらいですか?」と細かく伺います。その収入と支出を差し引きすると月々や年間の「残るお金」が算出される、ということなのですが、ここで出てきた金額×年数=貯金額では全然ないというのが実情です。
もちろん病気やケガなどで想定外の支出が発生することもあれば、旅行や冷蔵庫が壊れた場合などの大きな買い物などもあるでしょう。そうした思いがけない多額の出費も、何に使ったのかわかっているものであるならば特に問題はないと思います。問題なのは、何に使ったのかが不明なものです。これが文字通り「使途不明金」ということになります。
後払いのお金は使途不明金になりやすいといえます。その代表的なものは、クレジットカードの支払いですね。明細が出るのだから使途不明金ではないのでは?と思われる人もいらっしゃると思います。しかし「毎月〇〇万円くらいはカードの引き落としがあって~」とお話しされる人も多く、「ちょっと待ってください、その内訳はなんですか?」と聞くと「さあ?明細を見ればわかると思うけど」という人がとても多いです。まずは、明細を把握するクセをつけると、後払いによる使途不明金が減りやすいです。
次に考えるべきは、家賃、保険料など、毎月かかってくる「固定費」と、旅行や交際費などの「変動費」を分けて考えるようにすることです。ここで実際のケースを見てみましょう。
【無駄使いしているつもりはないけど貯金できていない。(相談者Aさんの場合)】
特別に節約している訳ではないけど、そんなに無駄使いしているつもりはない。年収だって人並みだと思っているのになぜ貯金ができないのか。
普段の支出を伺う前に、いくつかの質問に答えていただきました。
Q:飲み会って月にどのくらい行って、いくらくらい使いますか?
A:月に1、2回で、一度に5,000円くらい使います。
Q:ゴルフの道具って高額のものも多いですよね、良いものが欲しくなると聞きますが?
A:高いから買えないですよ(笑)。
Q:フットサルはお金がかかるスポーツですか?
A:全然かからないです、みんなで折半するから一人2,000円とか、安ければ1,000円とか。
Q:交通系ICカードのチャージってしますか?
A:クレジットカードから自動でされているから・・・。
Q:コンビニやスーパーで買い物をする時に、レシートをもらいますか?
A:コンビニではもらわないけど、スーパーではもらうようにしています。
Aさんの毎月の支出を確認させていただきました。
カテゴリー | 項目 | 金額 |
---|---|---|
収入 | 給料(手取り) | ¥220,000 |
収入合計 | ¥220,000 | |
支出(固定費) | 家賃 | ¥85,000 |
保険料 | ¥10,000 | |
支出(変動費) | 旅行代(2回/年→月換算) | ¥5,000 |
ゴルフ(道具代を含めた月換算) | ¥10,000 | |
携帯代 | ¥10,000 | |
飲み代 | ¥10,000 | |
食費 | ¥40,000 | |
クリーニング代 | ¥5,000 | |
雑費 | ¥5,000 | |
光熱費 | ¥10,000 | |
支出合計 | ¥190,000 | |
使途不明金(できているはずの貯金) | ¥30,000 | |
実際の貯金額 | ¥0 |
支出のお答えが事実であれば全部足しても月に20万円未満、ボーナスはまるまる残り、毎月数万円は放っておいても余っていることになります。年間50万円の貯金は余裕で可能なはずです。
これを聞いてAさんは、「使途不明金が30,000円ですか?在宅ワークも増えたし、飲み会も減ったし、これでも支出額は少し多めに言ったつもりです。でも、残っていないのが事実です」と苦笑されていました。
そこで、この様な質問を追加でさせてもらいました。
Q:普段お忙しい時にデリバリーとかは頼まないですか?
A:最近、忙しくて、お昼とかもデリバリーを頼んでしまうことがある、これは全部クレジットカード払いで、いくら使っているかは意識していない。
Q:フットサル後は必ずまっすぐ家に帰りますか?飲み物などは家から持っていきますか?
A:フットサルの後にご飯を食べに行くこともあるし、最近はご飯を食べに行っても現金で払うことは少ない。
家から飲み物を持っていくことは殆どないし、考えてみればコンビニでは交通系ICカードで払っている。
Aさんは、ウーバーイーツやコンビニで買った飲み物代を覚えていませんでした。
このように、多くの人は、自分が実際に使った額と記憶している金額が、しっかりと記録をしていない限りずれてしまうものです。そして、記憶にはないけれど使ってしまったお金のことを、申し上げた通り使途不明金と呼び、これを減らすことが貯金できるようになる早道です。
計算の結果、使途不明金は月にして3万円程あることが分かりました。Aさんもその多さにやはり苦笑しておられました。ただ、逆に言えば、自分でしっかり把握するクセさえつければ、無理な節約をしなくても十分に貯金はできることが分かったと仰っていました。
無理な節約をする前に、
などを実践することで支出を減らせます。まずはできるところから始めましょう。
使途不明金が減って貯金ができるようになったら、次は資産を増やすことも考えてみましょう。たとえば、貯金だけでなく、外貨預金を検討してみる、NISAで投資信託や株式投資を始めるきっかけにするなどです。他にも、債券、FXなど、様々な金融商品が世の中にはあります。様々な選択肢について早い段階で理解を深めることは、預金の低金利が長引いていることを考えても大事なことではないでしょうか。
FXとは「Foreign Exchange」の略で、文字通り外国為替に関する取引です。為替相場は時々刻々と変動していますので、1米ドルは100円だったり、110円だったりします。この価格変動から得られる収入や、ある通貨の残高(ポジション)を持ち続けることで得られる収入に着目して取引する投資がFXです。
FXでは、スワップポイントという2通貨間の金利差から生まれるお金を日々(原則毎営業日)受け取れます。(※重要:スワップポイントは受け取りから支払いに転じる可能性もあります。)また、レバレッジという特徴的な仕組みを使えば、少額でも取引できます。 FXを始める場合、仕組みやリスクをしっかりと理解するところから始めましょう。