ADX(平均方向性指数)は、相場のトレンドの「強さ」を測定するインジケーターです。英語では「Average Directional Index」と呼ばれます。一定期間内の価格変動を平均化して、トレンドがどれだけ強いかを数値で示すのが特徴です。
ADXは0~100の範囲で表示され、一般的には以下のような目安があります。
ADXの値が高いほどトレンドが強く、低いほどトレンドが弱いことを示します。ADXでトレンドが強いと判断される相場においては、トレンドフォロー戦略が狙いやすいと考えられます。
▼豆知識
ADXは、価格の上昇/下降といった方向性ではなく、「トレンド自体の強弱」に焦点を当てています。そのため、相場にトレンドが発生すれば、価格が上昇しても下降しても、ADXの値は上昇していきます。ADXと相場の方向性が連動するわけではないという点に、注意しましょう。
ADXの計算式は、以下の通りです。
+DI = +DMのN期間移動平均 ÷ TRのN期間移動平均 × 100
-DI = -DMのN期間移動平均 ÷ TRのN期間移動平均 × 100
DX = | +DI - -DI | ÷ ( +DI + -DI ) × 100
ADX = DXのM期間移動平均
※ N/M:対象期間
※ +DM:現在足の高値 - 前足の高値(マイナスの場合はゼロ)
※ -DM:前足の安値 - 現在足の安値(マイナスの場合はゼロ)
※ TR:以下の3つの値のうち最大値
ADXは、+DM/-DM/TRという値幅を意味する値をもとに算出します。これらの値の意味は、それぞれ以下の通りです。
+DIは、+DM/TRの設定期間(N)における平均値を取り、その+DMをTRで割って求めます。つまり、変動幅において上昇が強まった割合を意味します。-DIはこの反対で、変動幅において下降が強まった割合を意味します。
DXは、+DIと-DIの差の絶対値(上昇と下降の勢いの差)を、+DIと-DIの合計(上昇と下降の勢いの合計)で割って求めます。例えば高値ばかり更新していて安値が更新されていないなど、一方方向の動きが強いほど、DXは100を上限に大きくなる仕組みです。
ADXは、このDXを設定期間(M)で平均値を取った値です。
例えば、以下のように価格が推移した場合、ADXの値は次のように計算されます。なお、設定期間(N/M)は3/2とします。
期間 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|
高値 | 102 | 104 | 106 | 114 | 115 | 106 |
安値 | 99 | 100 | 102 | 104 | 101 | 98 |
終値 | 100 | 102 | 104 | 108 | 105 | 100 |
+DM | - | 2 | 2 | 8 | 1 | 0 |
-DM | - | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 |
TR | - | 4 | 4 | 10 | 14 | 8 |
【4期間目】
+DMの3期間移動平均:( 2 + 2 + 8 ) ÷ 3 = 4
-DMの3期間移動平均:( 0 + 0 + 0 ) ÷ 3 = 0
TRの3期間移動平均:( 4 + 4 + 10 ) ÷ 3 = 6
+DI:4 ÷ 6 × 100 = 66.66…
-DI:0 ÷ 6 × 100 = 0
DX:| 66.66 - 0 | ÷ ( 66.66 + 0 ) × 100 = 100
【5期間目】
+DMの3期間移動平均:⅓ × 1 + ⅔ × 4 = 3(後述)
-DMの3期間移動平均:⅓ × 3 + ⅔ × 0 = 1(後述)
TRの3期間移動平均:⅓ × 14 + ⅔ × 6 = 8.66…(後述)
+DI:3 ÷ 8.66… × 100 = 34.61…
-DI:1 ÷ 8.66… × 100 = 11.53…
DX:| 34.61… - 11.53… | ÷ ( 34.61… + 11.53… ) × 100 = 50
ADX:( 100 + 50 ) ÷ 2 = 75
【6期間目】
+DMの3期間移動平均:⅓ × 0 + ⅔ × 3 = 2(後述)
-DMの3期間移動平均:⅓ × 3 + ⅔ × 1 = 1.66…(後述)
TRの3期間移動平均:⅓ × 8 + ⅔ × 8.66… = 8.44…(後述)
+DI:2 ÷ 8.44… × 100 = 23.68…
-DI:1.66… ÷ 8.44… × 100 = 19.73…
DX:| 23.68… - 19.73… | ÷ ( 23.68… + 19.73… ) × 100 = 9.09…
ADX:½ × 9.09… + ½ × 75 = 42.04…(後述)
セントラル短資FXのTradingViewチャートのADXでは、移動平均の計算にRMA(Running Moving Average:修正移動平均)が使用されています。RMAの計算式は、以下の通りです。
初期値 = 直近N期間の価格合計 ÷ N
2つ目以降 = 1/N × 現在足の終値 + (N-1)/N × 前足のRMA
※ N:対象期間
初期値はSMA(Simple Moving Average:単純移動平均)と同じで、単純に合計して期間数で割るというシンプルな計算式です。
2つ目以降は、現在足に1/N、前足以前に(N-1)/Nの重みをかけて合計します。EMA(指数移動平均)の計算式と似ていますが、α(平滑化係数)の値が「2/(N+ 1)」ではなく、「1/N」となっている点が異なります。平滑化係数を「1/N」で計算するEMAともいえます。
上の計算例では、設定期間(N/M)が3/2でした。そのため、5期間目以降における+DM/-DM/TRの計算で、現在値に⅓、前足以前の値に⅔の重みをかけて合計しています。また、6期間目のADXの計算で、現在値に½、前足以前の値に½の重みをかけて合計しています。
▼豆知識
ADXは、数多くのインジケーターを開発したJ・W・ワイルダー氏が考案しました。ワイルダー氏のインジケーターでは、移動平均の計算においてRMAがよく採用されています。
ADXをチャートに表示する基本的な流れは以下の通りです。
表示したインジケーターは、主に以下の方法で削除することができます。
▼豆知識
チャート上で以下のようにキーボードを入力すると、マウスなしで素早くADXをチャートに表示することができます。
/ ⇒ adx⇒ ↓ ⇒ Enter
※インジケーターのウインドウは「Esc」を2回押下で閉じます
ADXの設定ウインドウの「パラメーター」タブについて、①~②の項目で調整できる内容を紹介していきます。
ADXの計算対象とする期間(計算式のM)を設定します。デフォルトの期間は「14」です。
+DI/-DIの計算で使用する、+DM/-DM/TRの移動平均値の計算期間(計算式のN)を設定します。デフォルトの期間は「14」です。