最近は、スキルアップや収入を増やすために、本業以外の仕事(副業)をする人が増えています。
しかし、本業と並行して副業を行うのはハードルが高いと感じている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、大手企業で正社員として働きながら、さまざまな副業をかけ持ちする「ととのえさん」にインタビューを行いました。
副業を成功させるポイントや、副業を経験することで得られたスキルを詳しく紹介していきます。
ととのえさん
大手企業の人事として働きながら、教育系ベンチャーや大学の非常勤講師、ブログ運営など複数の副業を行っている。1歳の娘がおり、忙しい生活の中でも子どもとの時間を確保しつつ、日々副業を通してスキルアップに努めている。
Twitter: https://twitter.com/totonoe_san
学生時代は、勉強に打ち込んだ記憶はあまりなく、スポーツ一筋でした。ただ、自分が選んで決めた道はとことん突き詰めるタイプで、学生時代にはスポーツで全国優勝を果たしました。
社会人のファーストキャリアは、これまで打ち込んできたスポーツを活かしてスポーツインストラクターの道へ進みました。
スポーツインストラクター3年目に大きな怪我をしました。体を資本とする仕事だったので、この道を突き進むのは厳しいなと思い、かなり落ち込みました。
そのときの自分にはスポーツしか取り柄がなかったので、メンタル的にもどん底でしたね。
キャリアに悩むなかで、とある経営者の方にコーチングをしてもらえる機会があって、その方との1on1のコーチングを通して、スポーツ以外の道へキャリア転換することを決意しました。
もともと人への興味関心が高かったこともあり、縁あって大手メーカーの人事部で働くことになりました。
そこからは、人事の世界で採用・育成・評価業務を一通り経験しましたが、もっとビジネスマンとしてのレベルを上げたいという気持ちがあり、働きながら大学院に通ってMBAを取得しました。
大企業だけの経験に限界を感じた頃、大学院の仲間が起業したベンチャーで副業を始めました。
他にも、やりたいことを突き詰めたいという思いや、スキルや経験の幅を広げたいという思いから、国立大学で非常勤講師として働いたり、Webマーケティングについての勉強をするためにブログやSNSの運営をしたりしています。
今の本業では、会社の変革に向けた人事戦略を作り上げる仕事をマネージャーの立場で推進していますが、複数の副業のいずれにも本業と同じように注力しています。
大企業の経験しかないことに危機感を感じたことが、副業を始めようと思ったきっかけです。
大企業の中で仕事をしていると、私の場合は、1日の仕事の3~4割は、多くの社内関係者を動かしていくための調整や根回しに追われていました。
社内調整をするためのスキルとしての資料作成やプレゼンテーション、ネゴシエーション、会議のファシリテーションのレベルはかなり上がります。しかし、果たしてそこに終始していいのか、と疑問を感じていました。
もっと顧客と直に対峙しながら、スピード感を持ってダイナミックに仕事をする経験をして、より価値を生み出せるようなビジネスマンになりたいと感じていました。
また、大学院の同期の3~4割は大企業で働いていましたが、それ以外は起業したり、ベンチャーで働いたりしていて、そういった人たちとの感覚の違いを目の当たりにしたのも1つのきっかけです。
こうした大企業とは異なる経験を渇望しているなかで、大学院の同期が教育関係で起業するとのことだったので、私もそこに加わって働きはじめました。
事業戦略の策定など、教育サービスをゼロから立ち上げました。
これまでとは違う仕事の進め方をしたことで、難しさを感じながらも、同時に成長している実感もこれまでにないレベルで味わうことができました。毎日が良い意味での筋肉痛って感じですね。(笑)
成長という意味合いにおいて、副業の味をしめたことで、他にももっと色んな経験をしていきたいという思いが強くなりました。実際に、大学の世界で働いてみたり、Webマーケティングをはじめてみたりと、自分に足りない領域についてオセロを裏返すような感覚で、スキルアップに励んでいます。
副業を始める時に障壁になったものは、実はありません。副業はこれまで培った得意分野を軸足に取り組み始めました。
未経験領域も含まれることから、そこで上手くやっていけるかという不安はありました。ですが、未経験領域に踏み出したのは、視野を広げていくことや新しいスキルを身に付けていくことが狙いとしてあったので、健全な不安として受け止めていました。
当然、副業を始めるなかでは、失敗も色々出てくるんですが、その都度、本を読んだり、先駆者に話を聞いたりしながら、一つひとつできることを増やす努力を地道に続けています。
私の場合は、大企業ではなく、ベンチャーやスタートアップで働きたいという意思があったので、その思いをとにかく周りの人に話しました。
周りの人に話しをしていくと、自然と情報が集まり、仕事の機会が舞い込んで来るようになりました。大学院の同期に声をかけてもらったのも、事前に情報を発信していたからだと思います。
働き口がない限りは副業ができないので、まずは情報と機会が舞い込んでくる状態を作るのが大事だと思っています。
その後、機会が舞い込んで来たら、あまり深く考えずに「とにかくやってみる」ということを大事にしています。教育ベンチャーの話をもらった時にも2つ返事でYesと回答しました。
細かなことを詰めたり、必要な準備をしたりするのは、その後じっくりやっていけばいいと思っています。まずはチャンスを掴むということが大事だなと。
大学の非常勤講師のときも、「大学で先生をしたい」、と色んな場で話していたら、ふと話が舞い込んできました。
限られた時間のなかで、4つの仕事と子育ての両立ができるかは、やはり不安でした。
事前に妻とは仕事のことについてよく話をしていて、副業の必要性や、副業をすることで家族にとってどんなメリットがあるのかは伝えていましたし、妻も副業についてはかなり理解を示してくれていました。
子供が生まれてからの数ヶ月は、土日に妻が子供の面倒を見る横でパソコンで副業をしていました。
妻はそんな自分に対して特に何も言いませんでしたが、私自身の中で「これでいいのか?」という疑問はありましたね。
これまでも、家事や育児は、おそらく平均的な父親以上にやっているとの自覚はあったのですが、改めて妻としっかりと話し合うことにしました。
家事育児についての分担を見直し、家事育児を離れて妻がやりたいことと、それに必要な時間はどのくらいか、それをどう捻出するかについて家族会議をしました。
正直、子供の成長によって日々環境が変わるのですが、その中でも、子供が起きている時間は子供と向き合い、子供が寝ている朝と夜の時間を使って仕事をしています。
仕事ばかりでもいけないので、妻と話し合って月に数回はリフレッシュで遊びに出かけることもしながら両立を図っています。
妻との家族会議を毎週のように行っているのが功を奏している感じです。
副業を始める前後では、意識や感覚の面での変化が大きかったです。会社員をやっていると、顧客と徹底して向き合う意識がどうしても薄れてしまいます。それは、顧客と徹底的に向き合わなくても毎月給料がもらえてしまうからです。
でも、副業はある種「起業」だと思っていて、顧客に対して徹底的に向き合って満足してもらわないと対価としての報酬がもらえません。この感覚は、副業をやっているからこそ味わえる感覚だと思っています。
Webメディア事業は、完全に1人でやっているので、100%自由と責任の世界で成り立っています。
ネガティブな変化は、ハードワークによって体調を崩しかけたことです。本業の会社員は管理職なので、毎日定時で上がれる訳ではなく、時には残業もしています。
これに加えて3つの副業をするとなると、基本的に本業以外の時間のほとんどは副業をしていることになります。
本業はホワイト企業でも、副業で合算して考えると労働時間は過労死レベルを楽勝で超えていると思います。(笑)
当然自分の好きなことをやっているので、全く問題ないのですが、疲労困憊で、体調を崩しそうになったことがありました。
「時間が足りない」という点は、常に抱えている問題です。時間の問題を解決するために、実際に行っていることは、主に3つです。
1つ目は、自分でやらなくてよいことを他の人に任せることです。
教育ベンチャーの仕事においては、教育プログラムの設計や、実際に現場に立つ講師やコーチの役割は私がやりますが、それ以外の仕事は他の人に任せることを徹底しています。
2つ目に、朝と夜の時間をフル活用することです。子供の状況によりますが、早い時は朝4時に起きて仕事を開始します。
子供は7時には寝る習慣を身につけさせ、夜にも落ち着いて仕事ができる時間を確保しています。早起きな分、昼寝は必須です(笑)。
3つ目は、マインドフルネスとポモドーロテクニック(※)で生産性を極限まで高めることです。朝、マインドフルネス瞑想に取り組んでいて、集中力を高めています。
また作業を行う際にはポモドーロテクニックを活用して、時間あたりの生産効率が最大値になるように工夫しています。
※作業と休憩を交互に繰り返す時間管理術のこと。作業25分、休憩5分を1セットで行われることが多い
仕事は、「人生をより充実させるためのアトラクションの1つ」と捉えています。
こうした考え方がベースにあることから、1つの会社でずっと働き続けるのではなく、色んな仕事をした方がより充実度が高まるな、と。
しかも、それを自分自身で選択することができたらより充実度が高まるのではないか、と考えています。
人は、たとえ同じ経験をしても、それが自分で選択したか否かで、その経験の充実度は雲泥の差になると思っています。こうした考えを大事にしています。
こうした考えを持つようになったきっかけは、一時期本業がとても忙しく、月に200時間くらいの残業をしていた時のことでした。この時は、平日は朝早くから日付が変わるまで働き、土日もほとんど仕事といった状況でした。
かつ、経営トップ直下のプロジェクトを担っていたことから、役員からのプレッシャーもかなり強く、心身ともにギリギリの戦いを強いられていました。
こうした生活の中で、「会社員一本の仕事の仕方は、なんて自分の選択権がないんだろう…」と思ったことが、このような考えに至ったきっかけです。
当たり前なのですが、会社で働くということは、自分の時間やパワーを会社に提供する代わりに給料という対価をもらうことです。
自分の時間やパワーは基本的に会社に、自由に使ってください、と委ねているので、会社の指示命令によって動くことが当たり前です。
会社の仕事や労働条件が自分の理想とするものと100%マッチしていればいいのですが、いくらホワイト企業といえ、なかなかそうはいかないのが現状ではないでしょうか。
ただし、誰しもが会社に依存しない働き方ができるかというとそうでもありません。個人でやりがいのある仕事で稼ぎながら生きていくには、それなりのスキルが必要です。
でも、それを突き詰めていくことが、ハッピーになるために必要なことだと思い、副業を通した自己研鑽と誰にも依存しない状態づくりに励んでいます。本業の会社員の仕事も楽しいのですが、近い将来は会社員を卒業しようと思っています。
子供の状況によって時間の使い方が日々変化するので、規則正しい生活ではないのですが、朝は1〜2時間、夜は2〜3時間、土日はそれぞれ半日は副業の時間に充てています。
副業はどれも好きなことをやっているので、「仕事」という感じではなく、「趣味」といった位置づけです。なので「大変だね」とよく言われますが、実は大変という感覚はないんです。
でも、私の中では副業よりも家族の方がプライオリティーが高いので、時間の使い方については妻とよく話し合い、妻が納得する形で決めるようにしています。妻の協力を得ることが、時間捻出において最も大事なことだと思っています。
私の理想とする時間の使い方は、以下です(カッコは現状)。
仕事の時間を6時間程度まで圧縮していく必要がありますが、そこに必要な要素は会社員の卒業です。会社員でいると、少なくとも1日8時間は拘束されてしまうので。
今は、多忙を解消するために副業に取り組んでいます。
会社員を卒業するには、個人で戦っていけるスキルを身に付けなければならず、会社員一本の働き方では、いつまでたっても卒業できません。
なので、自分自身の中では、今はとことん仕事に打ち込み、必要なスキルを身につける期間と位置づけ、多忙な中でも副業に取り組んでいます。
もちろん副業は苦しいことだけではなく、自分のやりたいことをやっているので、かなり充実感に満ちています。
時代が目まぐるしいスピードで変化しているので、その時代の変化に乗りながら自分自身が変わっていくことが、より人生を楽しむうえで大事なことだと思っています。
「何かを成し遂げたい!」といったものはないのですが、こうした変化に柔軟に対応し、進化し続ける人間でありたいと思っています。
そこで必要な要素は、「時代の変化に対する十分なインプット」、「最先端の事象に対する大量のトライ&エラー」、「様々な物事を仕事や生活に取り入れることで生まれるクリエイティビティ」の3つだと思っています。
この3つを満たすために、まずはパワフルに生きていくうえでベースとなる「健康」を確保するために、よく寝ることを大切にしています。
そして、よく学ぶこと、最先端の領域でトライ&エラーを重ねるために、会社員ではなく、全て自分の選択で仕事ができるビジネスオーナーになること、クリエイティビティを高めるための余暇の充実。
こうした仕事の仕方や生き方をしていきたいと思っています。
ととのえさんのツイート。副業が本業にもたらすメリットを解説している。
今回は、会社員をしながら複数の副業にチャレンジしているととのえさんにインタビューをしてきました。
副業は収入を増やすために行うことはもちろんのこと、会社を退職して独立するための準備としても有効です。会社員として働くことが向いている人もいますが、そうでない人もおり、現状の働き方に不満があれば、まず副業という形で試してみると良いのではないでしょうか。
また、ととのえさんは、仕事を「人生をより充実させるためのアトラクションの1つ」と捉え、やりたいことを発信、チャレンジし続けることで、会社員としては得られない多くの経験が出来ると話していました。
目まぐるしく変わっていく現代で、変化に柔軟に対応し、進化し続けている人間(=市場価値のある人間)で居続けるための手段として、副業にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。