第15回ペンタゴンチャート

世の中には理屈で割り切ることのできない不思議なことが多く存在する。しかも、それらの摩訶不思議がマーケットや経済とも関係することがあるから面白い。例えば、太陽黒点。太陽黒点の数の増減はおよそ11年周期で繰り返される。この11年というのは景気循環でいう『ジュグラー波』の期間とほぼ一致している。たしかに、日本の景気循環を見てみると、太陽黒点の数が多い時期に景気は拡大し、縮小に向かう時期に景気後退になることが多い。
そして今回取り上げる『ペンタゴン』も不思議な存在である。ペンタゴンとは『正五角形』のことである。この正五角形も魅力ある形をしている。特に、正五角形の中に引かれる対角線の形、すなわち五芒星の形はピタゴラス学派のシンボルマークとされている。五角形というのは完成度の高い形と言われ、力が均等に伝わる。故に、五角形の形をしたパター『ペンタゴンパター』も開発されていたりする。ボールに均等にエネルギーが伝わり、転がりが良いのだそうだ。そして、五角形の一つの角度は108度である。『108』というのは煩悩の数でもあり、野球の硬式ボールの縫い目の数でもある。

■ペンタゴンチャート黄金分割比

ペンタゴンチャートはすべてが黄金分割比から出来ている。下記の図を見ていただきたい。

ペンタゴンチャート黄金分割比

例えば、ACの長さを1とするとAC:FC=1:0.618となる。JDのそれを1とするとJD:ID=1:0.618となる。また、BJを1とするとBJ:BE=1:1.618となる。
すべてが黄金比ででき上がっているのだ。

前回のコラムにて、フィボナッチを取り上げ、黄金比について説明した。その中でフィボナッチがマーケットで使われていることも紹介した。価格と時間の分析ができるということである。

価格の分析というのは高値と安値の値幅を取り、その値幅を1とした場合の0.618や0.382(1-0.618)の水準がポイントになる価格と考える。

時間の分析というのは高値や安値を示現した日柄を計算する際にフィボナッチを使う。例えば、安値から高値を付けた日柄が13日目だとすると、安値から1.618倍の21日目が次の変化日になるであろうと分析する手法である。

しかし、これらのフィボナッチの分析というのは、それぞれ別々に分析を行っていた。つまり、価格の分析は価格の分析として、時間の分析は時間の分析としてそれぞれ別の機能を使って分析をしていた。

チャート

(それぞれ別の機能を使って分析している)

ところが、ペンタゴンチャートは、ペンタゴン自体が黄金比でできているが故に、ペンタゴンをチャート上に描くことによって、縦軸および横軸を同時に黄金比で分析することができる。
つまり、ペンタゴンチャートは価格と時間を同時に分析できるチャートなのである。

ペンタゴンチャートの特徴

■ペンタゴンチャートの特徴

ペンタゴンチャートの特徴をまとめると以下の4点となる。

ペンタゴンチャートの特徴
  1. 上図①の部分に注目をしていただきたい。各辺に引き寄せられ、対角線に沿って動く傾向がある。また、各辺が上値抵抗線や下値支持線になることが多い。
  2. 上図②で示した時間帯の値動きに注目していただきたい。各交点の位置を通過することによって、流れが変わっていることが見て取れる。すなわち、各交点の位置が変化日になることが多い。
  3. 通常、ペンタゴンは時間の流れとともに、左から右側へと描き足されていく。すなわち、下図で言えば、赤い矢印方向に新しいペンタゴンが描き足されていく。
    ところが、青線で表示をしたように、大きく上昇したり、大きく下落したりすると右から左側に新しいペンタゴンが描き足される時がある。これを『時間の逆行』という。この時間の逆行は、ペンタゴンチャート上あってはならないこと、とされている。したがって、図で示した太線の部分は強い上値抵抗線、強い下値支持線になると考えられる。仮に、時間の逆行が生じたとしても、短時間で元のペンタゴンの中に戻ることができれば逆行は解消される。逆に、逆行が完成した場合には、描き直すことになるのだが、筆者の知る限り、時間の逆行というのは10年に1度あるかないかというぐらいに確率的には大変低い現象である。
  4. 時間の逆行
  5. ペンタゴンの中心点の上方を通過すると、次のペンタゴンが上方か真横に描き足される確率が高くなる。換言すれば、下方に描き足される確率は低い、ということになる。
    逆に、中心点の下方を通過すると、次のペンタゴンが上方に描き足される確率は低いことになる。
    下図を見ていただきたい。赤い矢印で示したペンタゴンのど真ん中の時間帯に、ペンタゴンの中心点の下方を通過している。ということは、次のペンタゴンが上方に描き足される確率は低く、真横か真下に描き足される可能性が高くなる、と判断できる。実際には、青矢印で示したラインが上値抵抗線となり、右上に新しいペンタゴンが描き足されることはなかった。
  6. ペンタゴン

これら4つの特徴を考慮しながら分析していくのがペンタゴンチャートである。

■描き方

描き方のポイントは2つある。一つはペンタゴンを置く場所で、もう一つは大きさである。

チャートを表示すると、チャート上にはいくつかの屈折点、すなわち高値や安値が存在する。その高値や安値にペンタゴンの各交点を合わせることから始める。
そして、必ず守っていただきたいルールがある。決して、現在値を中心にペンタゴンを置いてはいけない。それは、現在値を含めた場所にペンタゴンを置くことによって、現在を自分に都合よく解釈できるようになるからだ。したがって、ペンタゴンを置く場所は過去の高値または安値がポイントになる。
下図を見ていただきたい。チャート上の高値や安値はいくつか存在するが、決して青矢印で示した現在値に近い場所に最初のペンタゴンを置いてはいけない。必ず、過去、すなわち、赤矢印で示した高値や安値に合わせて最初のペンタゴンを置くことになる。

ペンタゴンチャート 描き方

次に大きさである。極端に大き過ぎると各辺や各点に届くのに距離が開き過ぎてしまうし、小さ過ぎると時間の逆行が生じやすくなる。

赤で示した高値や安値が最初のペンタゴンの中で各点や各辺で相性良く示されていることがポイントとなる。下図を見ていただきたい。

ペンタゴンチャート 描き方

複数ある始点の候補から①の箇所に合わせてペンタゴンを描いてみる。大きさも調整することで、赤矢印で示した部分がペンタゴン内で当てはまっているのがわかる。しかも、①の箇所からは右肩下がりの対角線に見事に沿って推移しているのがわかる。

一つのペンタゴンの中でここまで相性が良ければ、その後も相性良く、黄金分割比を示し続けてくれるであろうと推測できる。実際に、続きを描いてみよう。

ペンタゴンチャート

赤丸の箇所を見ていただきたい。変化日であったり、上値抵抗線、下値支持線であったりと、綺麗にその後の値動きと相性良く描かれている。

また、青丸の箇所に注目していただきたい。時間の逆行が生じたのだが、その後、元のペンタゴンの中に戻り、時間の逆行が回避されている。

過去から作図して、ここまで相場の動きと相性が良ければ、このまま描き続けることを良しとする。

ここでは、現在値がペンタゴンの点に引き寄せられるともに、下辺にも到達している。ということは、下辺が下値支持線として下げ止まることが出来るのか否かの正念場を迎えていると分析することができる。

では、最後に筆者が描いているペンタゴンチャートを紹介しておこう。

これはドル円のペンタゴンチャートである。描き始めたのが2000年であるので、かれこれ20年以上も描き続けているモノである。その間、時間の逆行も生じることなく続いている。

ここで特に注目していただきたいのは、中心点である。ペンタゴンの中心の下方を通過していることから、次のペンタゴンが右上に描き足される確率は低い。ということは、現ペンタゴンの中で推移している間に140円台に乗せていく確率は低い、と分析することができた。

そして、案の定、矢印で示した交点と同時に強い上値抵抗線に到達した後に下落に転じている。まさしく、ペンタゴンチャートの本領が発揮されている。

ペンタゴン

是非、価格と時間を同時に分析できるペンタゴンチャートを使っていただきたい。

▼ 筆者: 川口 一晃(かわぐち かずあき)氏

川口一晃氏

金融ジャーナリスト・経済評論家

1986年銀行系証券会社に入社。資産運用業務に従事。その後も銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)三洋投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
その後、ブルームバーグL.Pに移りアプリケーションスペシャリストとして投信の評価システムを開発し、ブルームバーグL.Pを投信の評価機関にする。
1992年ペンタゴンチャートに出会い、方眼紙に手書きでペンタゴンチャートを描き始める。以降、現在に至るまで分析を続けており、国内第一人者として多数の著書を持つ。
そして外資系証券会社等を経て2004年10月に独立、オフィスKAZ 代表取締役に就任。
現在までテレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。最近では、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。