テレビ・電気洗濯機・電気冷蔵庫が『三種の神器』と言われていた高度成長時代に生まれ育った筆者は、自他共に認めるテレビっ子である。鉄腕アトムや鉄人28号などを白黒テレビで観て育ったこともあり、長い期間、筆者が見る夢は白黒であった。この歳になって、ようやく夢もカラー化してきた次第である。
しかし、テレビっ子である筆者も最近はテレビを観なくなってきた。夜のゴールデンタイムと言われる時間にチャンネルをひねると、どの局も同じようなクイズ番組ばかりを放送している。昔は番組を観ただけでどの局の放送かすぐわかったものだが、最近はとんとわからない。出演している人はお決まりの面々である。これで良いのか、と心配になるのは筆者だけであろうか。
クイズ番組というと思い出す映画がある。『スラムドッグ$ミリオネア』である。第81回のアカデミー賞でも作品賞を獲得している。当時、日本アカデミー賞協会の会員であった筆者も劇場で鑑賞したのを覚えている。この映画は、主人公の青年がクイズ番組に出演し、懸賞金額がどんどん吊り上がるなか正解を続けて(途中で止めることも出来るのだが)、遂には最終問題に正解して多額の懸賞金額を手にするというストーリーである。最終問題に不正解だと途転(ドテン)、積み上げてきた懸賞金額は一文も得られないのだが、正解のたびに、更なる懸賞金額の獲得を目指して階段を登るというストーリーは、はらはらドキドキである。
相場にも似たところがある。上昇トレンドに乗ると、価格は上昇していく。つまり階段を登っていくのだが、はらはらドキドキもする。そして、最後に天井を形成しドテン、つまり流れが逆になる。こうした動きを捉えたテクニカル分析、それが今回紹介する「パラボリック」である。
トレンド追随型のテクニカル分析で「ドテン買い・ドテン売り」のシステムといわれている。ドテンというのは、例えば、上昇トレンドが続く中、買いポジションを取っていたところ、トレンドが変わったと判断して決済すると同時に、売りポジションを新規に取ることを言う。売りポジションを取っていたのであれば、決済すると同時に買いポジションを取ることになる。すなわち、常に「買い」か「売り」のポジションを持っていることになる。
公式は以下の通りである。
翌日のSAR=当日のSAR+当日のAF×(当日のEP-当日のSAR)
後述するが、このSARが価格とクロスした時がトレンド転換の売買シグナルとなる。
矢印で指している赤い丸と青い丸がSARである。
そして、赤い丸と青い丸が交互に出現していることが確認できる。
赤い丸が表示されているときは、現在の相場が上昇トレンドであることを意味している。逆に、青い丸が表示されているときは、現在の相場が下落トレンドであることを意味している。
丸の間隔が広がっている状態は、それぞれのトレンドの動きが強く現れていることを示している。
ところで、売買シグナルというのはどのように判断しているのだろうか。
点線で囲った部分を見ていただきたい。①と②の箇所は「売りシグナル」③と④の箇所は「買いシグナル」を示している。
まず、①と②の売りシグナルの前というのは、上昇トレンドであることからローソク足(価格)下方に赤丸が表示されているのがわかる。そして、その赤丸が表記されている水準をローソク足がクロスをして割り込む(青矢印)とトレンドが転換したと判断され、今度はローソク足の上方に青丸が出現する。つまり、下落トレンドを表すことになる。
逆に、③と④の買いシグナルの前には、下落トレンドを表す青丸が表示されている。そして、その青丸をローソク足(価格)が超えてくると上昇トレンドに転換したと判断され(赤矢印)、今度はローソク足の下方に赤丸が表示される。
つまり、この赤丸と青丸というのは売買の転換水準を表している。
そして、これがクロスをした瞬間に、買いポジションから売りポジションへ、売りポジションから買いポジションへとポジションをチェンジする。すなわち、ドテンすることになる。
パラボリックの特徴は大きくトレンドが出た時に有効であるといわれている。買いでも売りでも大きなトレンドに乗り、大きく利益を出そうということである。トレンドが強く現れない状況においては、頻繁にドテンを繰り返すことになることから、利益が出にくい状態になると考えられるので注意を要する。
金融ジャーナリスト・経済評論家
1986年銀行系証券会社に入社。資産運用業務に従事。その後も銀行系投資顧問(現・三菱UFJ国際投信)三洋投信会社で11年間ファンドマネージャーを務める。
その後、ブルームバーグL.Pに移りアプリケーションスペシャリストとして投信の評価システムを開発し、ブルームバーグL.Pを投信の評価機関にする。
1992年ペンタゴンチャートに出会い、方眼紙に手書きでペンタゴンチャートを描き始める。以降、現在に至るまで分析を続けており、国内第一人者として多数の著書を持つ。
そして外資系証券会社等を経て2004年10月に独立、オフィスKAZ 代表取締役に就任。
現在までテレビ番組やラジオなどメディア出演は多数。「SMAP×SMAP」では木村拓哉氏とも対談。最近では、テレビ朝日のドラマ「アイムホーム」をはじめ、フジテレビの月9のドラマの監修も担当。行動経済学学会会員。