第3回彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター

対談 彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター

略歴

彩輝なお氏

女優、元宝塚月組トップスター。神奈川県出身。1990年に宝塚歌劇団に入団、『ベルサイユのばら』で初舞台。翌年月組に配属、同作の新人公演でアンドレ役に。星組、専科を経て2004年に月組トップスターに就任。05年、『エリザベート』のトート役を最後に退団。同年、『プロデューサーズ』でセクシーなヒロインを演じて話題を呼び、以降、舞台やミュージカル、映画、ドラマなどで幅広く活躍中。近年の舞台出演作に、『スサノオと美琴〜古事記〜』、『ドリアングレイの肖像』、『ファウスト・オデッセイア』、『DREAM A DREAM』(以上、荻田浩一演出)、『舞台版 こちら葛飾区亀有公園前派出所』(ラサール石井脚本・演出)、『マホロバ』(西森英行作・演出)、『ピアフ』(作:パム・ジェムス、演出:栗山民也)、『ハムレット』(荻田浩一演出)、『アニー』(作:ハロルド・グレイ、演出:ジョエル・ビショッフ)、カシオ「EXILIM CARD EX-S500」のCMなどに出演。

松田 先日彩輝さんが出演された、宝塚歌劇花組・月組100th anniversary「Greatest Moment」公演での圧倒的印象が、まだ目にも耳にも残っています。
コロナでは、こうした公演も大きな打撃を受けたと思いますが、改めて舞台が持つ力や限界について感じられたことはありますか?

彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター 1

彩輝 自分たちにはどうにもできない要因で舞台に立てなくなったのは本当にショックで、無力感を覚えました。でも、その間に自分と向き合う時間があったことで、改めて自分の舞台への情熱を確認し、自分が大切にしてきたものを見直すことができたと思います。

松田 聴衆も、しばらく公演に足を運べなくなったことで、かえってナマの舞台の良さを確認したのではないかと思いますが、今舞台に立っていて、そうしたことをお感じになられますか?

彩輝 劇場とは、お客さまと空間、時間、世界観を共有する場なので、お客さまも同じ気持ちだったろうと感じますね。

松田 長年宝塚で、われわれには想像もつかない厳しい規律・序列の中で生きてこられて、得たもの、あるいは十分に得られなかったものについて、今振り返ってどのように感じられますか?

彩輝 宝塚で育てて頂いたという経験、与えて頂いた愛情への感謝の気持ちで一杯です。厳しかったことといえば、音楽学校時代、掃除も担当場所が決まっていて、汚れていると誰が手を抜いたかがすぐ分かってしまうんです。少しでも窓は拭きあとを残してはいけませんので、鳥や虫が、ガラスがあることに気付かずぶつかってしまうくらいです(笑)。金属製のドアノブを磨いたあとは、そこに自分の顔が映ってしまうとか···。
確かに宝塚に入りたてのころは、皆お年頃の女性たちですが、恋愛をしながら成長していくといったことはあまりないといえるでしょう。恋愛禁止ではないので、そうしたことが全くないとは言えませんが(笑)。
やはり舞台の稽古が忙しくて、そうした時間がとりづらいというのはありますね。劇場を出ても、イメージというものがあり、まして自分は男役でしたから、手を繋いで堂々とデートするなんてことは難しかったですね(笑)。

彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター 2

松田 練習は厳しく、競争も熾烈な中で、落ち込まれることもあったろうと思います。そうした中でトップに上り詰められたのは、何が支えになっていたのでしょうか?

彩輝 支えになったのは、「好き」であることに尽きます。苦しいことも、つらいことも、悩むこともありますが、それ以上に、楽しかったり、嬉しかったり、愛を感じたりできました。外からは厳しく思われるかもしれませんが、団体生活の中で、お互いに世代を超えて支え合う結果、家族のようなつながりが生まれました。

彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター 3

松田 男役を演じたからこそ、男性について、そして女性について、発見できたことはありましたか?

彩輝 男役を作っていくには時間がかかります。「女性が男性を演じる」という架空の世界を美しく華やかに作り上げるうえで参考にするのは、昔の洋画における男性俳優の演技も所作もありますが、何と言っても、先輩方の所作から一番多くを学びました。一人ひとりの先輩が「理想の男性像」を演じられる中で、「自分にとっての男性の理想像」のイメージを築き上げていくのです。

松田 トップスターとして一番大きな羽根を付けて階段を降りるときは、どのような感慨を持たれましたか?

彩輝 20~30キロの羽根は確かにとても重いのですが、体に縛り付けて背負っているので、そこまでのものとは感じません。しかしその重みは、責任感の重さとともにしっかり感じたのを覚えています。

松田 今、宝塚に関心を持つ人にぜひ見て欲しいと思われる演目はありますか?

彩輝 一つを選ぶのは難しいのですが、時代物から現代物、海外ミュージカルまでを、様式美としてお届けできるのが宝塚の最大の武器です。とにかく、劇場でナマの舞台を見て、空間を共有して、その空気感を味わって頂きたいです。
宝塚専門チャンネルなどでも配信された映像を見ることができますが、「誰もが一つのことに対して手を抜かずに頑張っている純粋さ」を感じて頂けると思いますし、実際の舞台の大階段で踊る群舞やラインダンスは迫力があるものだと思います。

対談 彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター

松田 12月に演じられる「とんでもない女」~ドラマリーディング~の舞台は、新しい分野へのチャレンジでしょうか?

彩輝なお 女優、元宝塚月組トップスター 4

彩輝 宝塚での男役を離れて随分になりますが、この時間は、男役として作ってきたものを、徐々に脱いでいく、身から外していくプロセスでもあったように思います。演じる役に対する取り組み姿勢は変わりませんが、表現方法などは変わっていきます。逆に男役の経験が生きる時もあります。
ところで、私と松田さんには、共通するところがあります。私は実は、殺陣(たて)や立ち回りを見るのも演じるのも大好きで、松平健さんの立ち回りの現場に立ち会わせて頂いたことがあるんです。舞台上で、里見浩太朗さんと対決したこともありますよ。だんだん体力的に自信がなくなってくると、相手とペースや息を合わせなければならない殺陣ではなくて、居合に取り組むのも面白そうですよね(笑)。

松田 自分に合った、長続きするものを選ぶことが大事ですね。居合は相手がいないので、いまさら若いモンにボコボコにされる心配もないですし。殺陣なら、演技力が必要な斬られ役より、やはり斬る側に回りたいですけど(笑)。
最後に、日頃経済生活を送るうえで、あるいは将来を見据えて、お金の管理や投資について気を配っておられることはありますか?

彩輝 広告やネット情報が氾濫していて、何か怖い気がするので、正直、あまり投資といったことには気を配ることができませんでした。やはりこうしてサービスを扱っている方に直接お会いしてお話をしてみないと、知らない金融商品には手を出しづらい気がします。何かを始めるきっかけは、やはり知っている人がやっているとか、勧めているといったことが入口になるのではないかしら。メリット、デメリットが分かりやすいのが大事だと思います。

松田 確かに、サービスを提供する側の情報の伝え方にも問題がありますね。どうしても都合のいいことを前面に出して強調する傾向があって、個人が「本当にそんなにいいことばかりだろうか?」という疑念を持っても仕方ないような例も見かけます。お客さまの大切なお金を預かるサービスを提供する以上、メリットとともに、どこにリスクがあるのか、ということをきちんと示す会社でなければ信頼されないと思います。
今日は貴重で新鮮なお話をありがとうございました。

松田からひと言

舞台でのお姿も間近に拝見し、「エリザベート」におけるトート役としての演技や歌の力強さと存在感、そして表情にも体の動きにも一瞬の隙もなく、あらゆる所作を含めて演じ切る舞台人としての「プロフェッショナル魂」に圧倒されました。「『好きであること』が厳しい勉強、練習にも耐える心の支え」とのお言葉は、われわれにとっても「支え」になります。

対談映像はこちら

動画 「この人と心をカワセば」