火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

本質を探る力

更新日:2017年9月26日

先週は、北朝鮮を巡る「カリアゲリスク」が「ロケットマンリスク」に名称が変更されるという珍事を体験することになりましたが、一方で、英米の金融政策について重要な動きが観測されました。

前週末の15日、前日14日の英MPC議事要旨に続いて、市場はプリハ英MPC委員から「北朝鮮からの弾道ミサイルとは比べ物にならないくらい上質なプレゼント」を受け取ることになりました。このプリハ英MPC委員、昨年7月には率先して利下げを主張していた、いわば「札付き」のハト派。そのハト派が何と「今後数ヶ月以内に利上げとなる可能性」に言及したとなれば、市場は前日以上に「目を瞑ってポンド買い」に走ったのはいうまでもありませんでした。ポンド円は安値から約5円の暴騰となっていることを考えれば、不思議にも「弾道ミサイル」などなんとも「小物」にみえてしまうような錯覚に陥ってしまいます。

やはり「政策の変更の兆し」を感じとることの重要性を改めて認識させられているわけですが、今回のように「超ハト派のはずが、利上げとか言っている」とか、逆に、「いつもタカ派のはずが、なんだか利上げに消極的になっている」とか、普段とは違う「おかしな発言」を感じ取れるかどうかが、勝負の分かれ目となります。ただ、プリハ委員が「あり得ない発言」をしたと、とっさに感じられた参加者がどれだけいたかどうかといえば、なかなか難しかったはずです。先週も週半ばまでポンド買いが続くことになったわけですが、常にアンテナを広げておくことはもちろんのこと、ただただ入ってくる情報に流されることなく、本質的な意味をきちんと理解しようとする姿勢が求められています。

そして米国の金融政策ですが、21日の明け方3時に公表されたFOMC声明文には、予想通り「バランスシート正常化プログラム」の10月からの開始が盛り込まれました。また、同時に公表された「経済・金利見通し」では、長期的な金利予想が6月の3%から2.8%に下方修正されたほか、PCEコア・デフレータも2017年と2018年の見通しがともに引き下げられることになりました。ただ、一方で「ドットチャート」における2017年末のFF金利見通しでは、FOMCメンバー16人中、12人が年内の更なる利上げを予想していたことが判明。市場では「年内はもう利上げ出来ない」との声も多かっただけに、FOMCのあくまでも「メインシナリオ」を崩さない姿勢に、ドル買いで反応せざるを得なかったのかもしれません。ドル円は発表直後に111.116円まで売り込まれたものの、一転して112.531円まで買い上げられました。米10年債利回りも2.2871%まで上昇したほか、米2年債利回りなど短期金利もまた急激な上昇となりました。

これまでもお伝えしてきているとおり、「日米の金融政策の方向性の違い」は鮮明となっているわけで、バランスシートの縮小という、明らかな米長期金利上昇要因が物理的に実施されることが決まったことで、市場は通常の分かりやすい、本来の方向性へと向き始めています。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は買われる展開となりました。週明けから安倍首相が解散総選挙を決意したことを受けて買いが先行。3連休明けも日経平均が大幅な上昇となるなか、上値を試す動きとなりました。20日のFOMCの結果を受けて米長期金利の上昇とともに上げ足を速め、一時112.716円まで買い上げられました。週末には北朝鮮の外相が国連で「米国に対抗するために太平洋で水爆実験を行う可能性」を示唆。一時111.654円まで売り込まれる場面もみられましたが、引けにかけては再び112円台を回復しています。

今週のワタシの「注目通貨ペア!」

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は引き続き底堅い動きとなりそうです。依然として北朝鮮に絡む地政学リスクはくすぶってはいるものの、9月中間期末を控えて本邦実需勢や機関投資家からのドル買い需要が強まる可能性が高いです。突発的なニュースなどで下押した場面はしっかりと拾っていきたいところです。下値では、一目均衡表雲上限の111.55円や25日の安値111.477円、一目均衡表転換線の111.13円がサポートレベルとして意識されています。上値では、21日の高値112.716円がとりあえずの目処となっていますが、7月14日の高値113.575円や7月11日の高値114.495円がレジスタンスレベルとして意識されています。26日にはイエレンFRB議長の講演が予定されているほか、週末29日には8月米PCEコア・デフレータなどが公表されます。