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再びドル安・円高に

更新日:2017年3月23日

マーケットの焦点

先週のFOMC、オランダ下院選挙、G20を通過し、再びドル安・円高となってきた。オランダ下院選挙での与党勝利に続き、仏大統領選の討論会でマクロン氏が国民戦線のルペン氏を圧倒。依然本選でのマクロン氏優位が予想されることから、ユーロは対ドルで1.08台まで反発した。また、メイ首相は今月29日EU離脱通告をする予定であるが、発表された英国2月消費者物価指数(CPI)が予想を上回り、ポンドが対ドルで1.24台まで上昇しているなど、欧州通貨反発がドルを押し下げた。

しかし最大のドル下落の原因はトランプ政策の雲行きが怪しくなってきたことだ。政策面でトランプ大統領はオバマケアの廃止、税制改革、財政支出で大型インフラ投資を標榜してきたが、税制改革の前提でもある新たな医療保険法案を可決できず、最初の部分で暗礁に乗り上げていて、税制改革に着手できないでいる。

また新入国禁止令は再度差し止め命令を受けたが、にもかかわらず今度はイスラム系8か国から米国に向かう航空便への電子機器持ち込み禁止の新措置導入を発表し、再び物議を醸している。

加えて今週は、FBIのコミー長官が公聴会でトランプ大統領の主張する選挙期間中のオバマサイドの盗聴疑惑には証拠がないと述べ、逆に大統領選挙中のトランプ陣営とロシアの関係を犯罪性も含めて調査中と発表した。公聴会の場で係る重要発言をしたということは、何らかの証拠を既に押さえた可能性があるだろう。オバマ前大統領や民主党側は“STOP TRUMP”の秘策を練っているとも伝えられるが、ロシアとの関係が証明されれば、極端な場合“反逆罪による弾劾”というケースも考えられ、トランプ政権の存続にかかわることだ。

FOMCは今年3回の利上げの可能性を示したが、FRBも毎回指摘しているように、トランプ財政政策の不確実性は依然高い。経済の回復に支障をきたすようであれば、むしろ3回の利上げの大前提が覆される可能性すらあるわけで、利上げ=ドル高のシナリオに早くも黄色信号である。

需給面では昨日発表された2月の日本の貿易収支は8,134億円の黒字を計上し、前日発表された米国Q4経常収支▲1,124億ドル(▲12.5兆円)と対照的だ。今回のG20で「保護主義に対抗する」という文言が削除されるとともに、「競争的な切り下げを回避する」という、いつもの為替文言が最前段に格上げされたことは、ともに米国の主張を尊重した形であることは明らかで、“日本の貿易黒字増加=円高にすべき”論が再度米国で復活してくる可能性がある。以上より足元ドル安/円高地合を予想する。

豪ドル相場見通し――リスク回避色強まれば軟調推移

向こう一週間の予想レンジ:

  • 豪ドル/ドル:0.7550-0.7750
  • 豪ドル/円:84.00-87.00

1) 概況

先週の豪ドルはFOMC後のドルの下落と、原油価格や鉄鉱石価格の反発を受けて、予想を下回る2月雇用統計にもかかわらず、対ドルで77セント台、対円で87円台まで反発。しかし、今週はドル軟調の中、原油の47ドル台への反落もあり、対ドルでは76セント台半ば、ドル/円の急落を受けて対円では一時85円割れまで大幅に下落。アジアや中東の地政学的リスクなどから、特に米国発、欧州発のリスク回避の円買い需要を指摘する声が聞かれた。
今週発表されたRBA議事録では、内外経済に対する楽観的な見方や住宅バブル懸念を述べたことから、“ややタカ派的”との見方が一般的だ。 豪ドルは引き続き米ドルの動きに影響されるが、市場のリスク許容度が更に低下する場合には、リスク通貨豪ドルに対する需要が一時的にせよ低下する可能性があるだろう。

2) 今週の指標

  • Q4の住宅価格インデックス:)
    前期比+4.1%(予想+2.5%、前回+1.5%)
    前年比+7.7%(予想+6.3%、前回+3.5%)
  • 2月熟練工求人率:+0.1%(前回+1.0%))
  • 2月WESTPAC Leading Index:▲0.1%(前回0.0%)

3) RBAの金融政策

米国利上げを受けてRBAの利上げ観測がやや高まったが、予想を下回る2月雇用統計後に年内利上げ観測は急速に後退した。ただ、今週発表された3月のRBA理事会議事録では、内外の経済見通しには従来より楽観的だが、住宅価格の上昇/家計債務の増大には懸念を示し、これまでより“ややタカ派的”、というのが当地のRBAウオッチャーの評価。依然、年内据え置き、来年のいずれかの時点で利上げとする見方が優勢。市場金利は来年の利上げを60%織り込んだ水準となっている。
来年にかけてFRBが予想を上回る利上げをし、現在の豪州の政策金利1.50%を抜く可能性もないわけではない。因みに最後に米国の政策金利が豪州を上回ったのは、2000年12月でFF金利が6.5%、豪州キャッシュレートが6.25%であった。

4) 商品相場

この1週間商品相場(CRB INDEX)は185近辺で小康を保っていた。原油価格は依然軟調で47ドル台から48ドル台中心の揉み合い。供給過剰懸念と米国のシェールオイル/ガスの在庫増加から、引き続き上値が重い状況だ。鉄鉱石価格も90ドル台から92ドル台で小康。

5) テクニカル分析

(長期トレンド)
豪ドル/ドルは2011年のパリティー(1AUD=1USD)から下降トレンドとなり、2015-2016年の70セント割れで底入れ。現在なだらかな上昇トレンドを築きつつある。 豪ドル/円は2014年の102円台を付けた後下落トレンドとなり、昨年72円台を付けて底入れ。現在上昇トレンドの中にある。

(足元)
豪ドル/ドルは一目均衡表の雲の上直前まで下落し、豪ドル/円は雲の下に下落した。豪ドル/ドルはボリンジャーバンドの上限から中ほどに、豪ドル/円は下限を抜けるまで一気に下落したが、両ペア共に昨日は「長い下ヒゲ」を出して下値抵抗感を示した。豪ドル/円は85円を下抜けすれば年初の83-84円台が下方ターゲットになる。豪ドル/ドルは雲の上限0.7650近辺がサポートされるかどうかがポイント。RSIは豪ドル/ドルは55.32%、豪ドル/円は38.11%で、豪ドル/円が急激にoversoldになってきた。

【豪ドル/ドル チャート】

【豪ドル/円 チャート】

今週の豪ドル関連情報

  • ① 2月雇用統計
  • ② 3月RBA議事録

① 2月雇用統計

先週発表された2月の雇用統計は就業者数が▲6.4千人(予想+16千人、前回+13.7千人)と5か月ぶりの減少。一方、失業率は5.9%(予想5.7%、前回5.7%)と2016年1月以来の高い数字となり、不安の残るものであった。過去1年の就業者数の伸びを見ると、+104.6千人であったが、この内full-time-jobは▲23.1千人であるのに対し、part-time-jobは+127.7千人。就業者数の伸びは、主にpart-time-jobによりもたらされた実態を再確認した。
州ごとの就業者数の増減を見ると、増加の州はビクトリア州の+10.6千人、ノーザンテリトリーの+1.1千人、首都特別地区(ACT)+0.1千人。減少した州は減少幅が多い順にクィーンズランド州▲11.5千人、西オーストラリア州▲5.5千人、タスマニア州▲0.8千人、ニューサウスウエールズ州▲0.7千人、南オーストラリア州▲0.3千人など。依然、資源州での軟調が目立つ。
州別の失業率は、低い順にニューサウスウエールズ州5.2%、タスマニア州5.8%、西オーストラリア州6.0%、ビクトリア州6.1%、南オーストラリア州6.6%、クィーンズランド州6.7%であった。
今回の結果を見る限り、今年も賃金の伸びの鈍化と家計収入の低い伸びが続くことになり、個人消費にもあまり期待が持てそうにない。また、政府の税収増加による財政赤字削減期待を後退させることにもなる。
RBAのロウ総裁は豪州経済における懸念事項として住宅バブル懸念以外では、設備投資の低迷と雇用のばらつきを挙げているが、今回の結果により年内利上げ観測は後退した、との見方が強い。

② 3月RBA議事録

今週発表された3月のRBA議事録の内容は、タカ派的な印象を受けるものであった。国内外の経済状況に対しては楽観的な見方をしていて、欧州政局不安やBrexit、更にはトランプ政権出現による不透明感にもかかわらず、「世界的に鉱工業生産、世界貿易の量と企業景況感は改善し、世界的にインフレ率は上昇傾向にある」としている。国内経済では家計負債の増加と住宅価格の上昇がリスク要因であり、金融緩和余地のないことを明言している。
また豪ドルレートについては、従来の文言「更なる豪ドル高は経済の調整を複雑にする」を引き続き踏襲した。3月のFOMCでの利上げが豪ドルの上昇圧力を抑制してくれることを期待していた節があるが、実際にFOMCでの利上げ後も豪ドルは堅調に推移していて、豪ドル高が足元の利上げを阻害する一因となっていることは間違いがない。
金利先物市場では追加利上げ観測が大きく後退する一方で、来年中の利上げを60%織り込む水準となっている。