木曜 津田穣のG´Day! (グダイ!) 豪ドルレポート 豪州からホットな最新情報をお届け

assimilation(同化)とdissimilation(異化)

更新日:2017年9月28日

マーケットの焦点

今週のドル/円は週初北朝鮮の発言「トランプ発言は宣戦布告に相当する」に反応して111円台半ばに下落したが、その後は差し迫ったトランプ税制改革への期待感やイエレン議長講演でのタカ派的発言を受けて113円台前半まで反発した。

ただ税制改革発表後は、既に事前報道されていたことや、具体性への警戒感や遡及措置を見送ったことへの失望からドル/円、株価ともにやや伸び悩んでいる。ドル/円は9月になってから北朝鮮リスクで売られて、その後は急速に買い戻される展開だが、先週も述べたようにタイミング良くドル買い材料が重なる。

今週イエレン議長はその講演で「FOMCはゆっくりし過ぎないように注意すべき」、「緩和政策の長期化は金融の安定を損ないかねない」とややタカ派的ニュアンスだが、同議長の低インフレに対する強い懸念は、今月のFOMCを経て、「原因の定かではない低インフレに惑わされて政策が後手に回ることを回避したい」と変化している。

また、トランプ大統領は今回の税制改革で中間所得層への大幅減税を柱とする大規模な所得減税、法人減税実施を明らかにしており、今週米債利回りは既に上昇で反応している。 また独総選挙においてメルケル政権は単独過半数割れとなり、英国のBrexit交渉も前途多難であることから、ユーロやポンドなどの欧州通貨の軟調も米ドルをサポートしている。 10月10日の朝鮮労働党創建72周年を控えて、引き続き地政学的リスクによる円買い需要と、その他のドル買い材料が綱引きする展開が続きそうだ。

一方、国際情勢、国際政治に関しては大きな時代の流れを感じる。つまり現在金正恩という異端児が最大の地政学的懸念であることは言うまでもないが、ナショナリズムの高揚は昨年のBrexitやトランプ大統領誕生でも顕著であった。その他でもイラクのクルド自治区やスペインのカタルーニャ自治政府独立の動き、Brexitに絡んだスコットランドや北アイルランドの独立運動、更には独選挙における反移民の右派政党“ドイツのための選択肢(AfD)”の躍進など、現行の国や同盟の枠組や既存政権を否定する動き、つまりdissimilation(異化)の動きが世界の各所で見られ、それぞれリスク要因を孕んでいるといえるだろう。

これはリーマンショック後に見られた金融政策での国際協調や欧州ソブリンリスク時の国際協力(assimilation=同化)とは対照的な動きだ。ギリシャ一国のEU離脱回避のために欧州はじめ主要国が躍起になっていたのが、つい7-8年ほど前だが、今ではEU離脱を目指す勢力が雨後の筍のように各国に誕生しているのだから。

その背景にあるのは貧富の差や人種や宗教の違い(広義の南北問題)、更には価値観の多様化があるだろう。リーマンショック後世界経済は回復したが、どの国においてもpart-time-jobが増加し賃金上昇率が低下するなど、個人の信頼感、満足感が著しく低下し、現状否定的な見方が増えていることが根本原因であるように思う。

基本的に一国の政権が変わろうが、国際法上は前政権の締結した安全保障や通商条約は“継続性の原理”により反故にされることはないが、この慣例に真っ向から挑戦しているのがトランプ政権である。

また一般に政権が変わろうが国内経済や国際金融市場への影響は軽微であるが、国の分離独立が国際紛争に発展したり、地域同盟の枠組みが変更されたりする場合には、国際経済への影響が生じ、それはリスク要因となる点は忘れてはならない。

上述のように現在の地政学的懸念は北朝鮮のみならず多くの国や地域に存在するわけで、そういった時代に我々はいるということだ。

豪ドル相場見通し――上値重い展開

向こう一週間の予想レンジ:

  • 豪ドル/ドル:0.7700-0.7900
  • 豪ドル/円:87.00-90.00

1) 概況

豪ドルは強い8月雇用統計や原油反発を背景に、9月になってから一時対ドル81セント台、対円90円台に上昇したが、今週は米ドルが上昇する中78セント台に反落する一方、対円ではドル/円上昇と相殺し合いながら88円台で底堅い。
S&Pが中国の格下げ(Aa-からA+に格下げ)を行ったことも鉄鉱石価格の重石となっており、鉄鉱石価格は年初高値94ドル台から現在再び64ドル台に下落していることも売り材料視されている。
このところRBAの豪ドル高牽制は鳴りを潜めているが、やはり対ドル80セント以上が警戒水域であることは明らかだ。
来月は5年に一度の中国共産党大会が開催されるが、北朝鮮情勢とともに中国発の情報にも注意を払いたい。引き続き“豪ドルは米ドルの受け皿”であり米ドル動向が注目される。

2) RBAの金融政策

今週ロウ総裁は「他の中銀にRBAが歩調を合わせる必要はない、豪ドルが少し下落すればもっと良い」と再度述べており、またブロックRBA総裁補(金融安定化担当)は「高水準の家計負債はリスク要因であり、RBAは政策に考慮する必要がある」と述べるなど、全般的にハト派的発言が目立ったことも豪ドルの上値を重くした。引き続き“RBAの次のアクションは利上げだが、利上げはあっても来年後半”との見方が一般的である。ただ、まだ先の話であり、当面は利上げ前倒しか、先送りかの議論を重ねていくことになる。依然として金利先物市場ではRBAによる25bpの利上げを来年6月では約50%、11月では100%織り込む水準となっている。

3) 商品相場

商品相場(CRB INDEX)は先週木曜日の185.70から昨日は186.21に小幅上昇した。原油(WTI)は原油在庫の予想外の減少で52ドル台に上昇。金価格は地政学的懸念後退から1,286ドル台に続落している。また鉄鉱石価格は64ドル台に小反発し、一方石炭(燃料炭、New Castle積み出し価格)は97ドル台で堅調。

4) テクニカル分析

(長期トレンド)
豪ドル/ドルは2013年5月にパリティー(1AUD=1USD)を割って以来下降トレンドとなり、2015-2016年の70セント割れで底入れ。現在なだらかな上昇トレンドを築きつつある。
豪ドル/円は2014年11月に102円台を付けた後下落トレンドとなり、昨年6月に72円台を付けて底入れしたが、今回の高値89円台で頭打ち。

(足元)
豪ドル/ドルはボリンジャーバンドの下限、一目均衡表の雲の中に下落してきた。豪ドル/円はボリンジャーバンドの中ほどに、また雲の上限に向かって下落。豪ドル/ドルの下値サポートは5月安値73セント台と9月高値81セント台の半値戻しである77セント台前半。豪ドル/円は8月安値85円台と9月高値90円台の半値戻しである88円近辺。豪ドル/ドルは20日の「波高い線」と翌日の「長大陰線」、豪ドル/円は21日の「長大陰線」が、いかにも後味が悪かった。結局「下値遊び」から下げに転じた形。
RSI は豪ドル/ドルは 36.95 %、豪ドル/円は52.98%で、豪ドル/ドルのoversoldが増える。

【豪ドル/ドル チャート】

【豪ドル/円 チャート】

今週の豪ドル関連情報

豪州の人口過去最大に

豪州の人口は今年Q1に前期比で0.52%、126.1千人増加し、推定24,512千人となった。
1990年の人口17.2百万人から実に40%伸び、過去10年でも20%の伸びを示しているのはOECDでもダントツの人口増加率である。
人口増加は過去1年で389千人、1.61%の増加となるがこれは2014年以来の高い伸びである。
また過去1年で232千人の移民を受け入れているが人口増加の60%となり依然増加傾向にある。
この力強い人口増加は慢性的な住宅不足を引き起こし、それが過去1、2年の豪州住宅価格高騰の根本的原因であると考えられる。
また連邦及び州政府に道路、空港、電力・ガス・水道などの強力なインフラ支出を余儀なくしており、逆にこの公共支出が豪州経済に活力を与えることとなる。
州別では移民が集中するビクトリア州が最大で、過去1年で149千人(2.4%)の人口増加となった。またニュー・サウス・ウエールズ州、クイーンズランド州、首都特別地区(ACT)も堅調な伸びを示す一方、西オーストラリア州は過去1年で25千人(0.8%)と低調だ。
2050年には人口が40百万人に達するとの統計予測もあり、豪州の経済成長は人口減少が懸念される米国以外の主要国よりも優位にあるともいえるだろう。