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2017年豪ドル相場見通し

更新日:2016年12月29日

2016年の相場レビュー

今年もBrexit や米大統領選におけるトランプ氏の勝利、ISなど地政学的問題に絡む世界的なテロの増加など、将来振り返れば歴史的なイベントに彩られた1年であったと言えるだろう。

昨年末、今年の豪ドル相場のキーワードとして、米ドル相場(FRBの金融政策)、中国経済、商品相場、RBAの金融政策、欧州経済、資源ブーム終焉のその後、投資家動向などを指摘し、メインシナリオとして豪ドル底入れから反発、とした。

昨年末の各シナリオは以下の通り

1.メインシナリオ ― 豪ドル底入れから反発

  • 予想レンジ:AUDUSD:0.68-0.85  AUDYEN:83-100

年前半は米ドル堅調、商品相場の軟調、RBAの追加緩和観測から豪ドル軟調地合いが継続するが、年後半は米ドル反落、中国経済ソフトランディング・シナリオ、欧州経済回復期待から商品相場底入れに。年後半はRBAの金融引き締め観測浮上。

2.サブシナリオ1 ― 豪ドル続落シナリオ

  • 予想レンジ:AUDUSD:0.55-0.75  AUDYEN:60-80

米ドル続伸、中国経済ハードランディング・シナリオ、欧州経済後退懸念、商品相場続落、RBAの緩和政策継続、豪ドルの投資通貨としての魅力がさらに減退。

3.サブシナリオ2 ― 豪ドル急騰シナリオ

  • 予想レンジ:AUDUSD:0.80-0.95  AUDYEN:90-105

予想を上回る世界経済回復期待が強まる(中国、欧州、米経済は拡大継続)、需給バランス改善から商品相場の大幅上昇、豪州の資源ブーム再来、RBAの金融引き締め。

実際の結果は「対ドル軟調、対円堅調」であったと言えるだろう。実際のレンジは、
AUDUSD:0.6827-0.7778 -年初68セント台から反発、11月には77セント台まで上昇したが、トランプ氏勝利後のドル高を受けて71セント台に反落。(⇒軟調)
AUDYEN:72.47-87.83- 年初高値87円台から、6月のBrexitを受けて72円台に下落。その後徐々に回復し、トランプラリーのUSDJPY:118円台で再び年初高値87円台に並ぶが、年末にかけてはAUDYENの急落で84円台に反落。(⇒堅調)
このように従来になくAUDUSDとAUDJPYの動きが乖離した1年であった。

項目別にみると予想が当たった項目は、年前半の商品相場の軟調、RBAの利下げ観測、年後半の商品相場の回復などであっが、2大イベント「Brexitとトランプ氏勝利後のトランプラリー」については予想外の展開であり、今年の相場予想を外す原因となった。
筆者は年後半のドル相場下落を予想したが、これはBrexit絡みのポンドやユーロの下落、並びにトランプ氏勝利後のドル上昇で大きく覆された。
米大統領選でクリントン氏がもし勝利したなら、あるいはトランプ氏勝利によりトランプラリーの代わりにリスク回避が活発化したなら、現在の相場とは全く異なる展開になったであろう。

2017年豪ドル相場見通し

1.メインシナリオ ― AUDUSDはやや軟調であるが、年後半は反発も。AUDJPYは堅調で上値テストも。

  • 予想レンジ:AUDUSD:0.6700-0.8000  AUDYEN:78.00-95.00

年前半はトランプラリーとドル高相場継続。豪ドルは対ドルでは上値限定的であるが、対円ではUSDJPYの120円台を超える上昇を受けて堅調地合。トランプ新政権の財政拡大政策は世界経済をバックアップ。ただし年後半はドル高の弊害や欧州・英国の景気回復期待から欧州通貨の反発もあり得るだろう。
Brexitや欧州諸国の国政選挙の結果は予想されたほど深刻なものではなく、結局ハードBrexitや反EU運動の激化は回避されるのではないだろうか。豪州でも年後半はRBAの利上げ観測が強まり、米豪金利格差の一方的な縮小とはならず、豪ドル反発の可能性があるだろう。

2.サブシナリオ(悲観的シナリオ) ― 豪ドル下落。

  • 予想レンジ:AUDUSD:0.6500-0.7500  AUDYEN:67.00-87.00

二つの豪ドル押し下げ要因:

  1. トランプ新政権が強化され、米金利は予想を超える速度で上昇し(FRBは年4-5回の利上げを実施)、米豪金利格差大幅縮小。ドル相場続伸でAUDUSDは大きく下落。
  2. トランプ新政権がとん挫し、株高・ドル高のトランプラリーが大きく修正される。豪ドルはドル安の「受け皿」として対ドルではサポートされるが、むしろ株安、商品相場安でリスク回避相場となり、豪ドルは対ドル、対円ともに大幅下落。

また、ドル高から人民元や新興国通貨安、資金流出がアジア危機の様相に発展し、商品相場下落で豪ドルにも大きな売り圧力がかかる。

3.主要変動要因

1) 米ドル相場 ― トランプラリーがどこまで、あるいはいつまで続くか?

トランプ氏の成長戦略がワークする限り、FRBは年3回を上回る利上げを実施するであろう。2001年のITバブル崩壊後のFRBによる3年間で17回の利上げを見ても、米国の利上げサイクルが複数年続く可能性がある。また財政拡大のポジティブな面は、米国を世界経済の新たな「牽引車」と位置づけ、米国に資金還流→ドル高の構図が継続するだろう。
一方、現レベル(ドルインデックスは103と、2003年以来の高値)からの更なるドルの続伸は、米貿易赤字を更に拡大させ、財政拡大とあいまって、“新たな双子の赤字問題”につながってドル安要因となるだろう。米国産業にダメージを与え、FRBならびにトランプ新政権自体からドル高けん制が行われる可能性が増す。トランプ新政権の保護主義から、為替操作国認定問題が再燃する可能性もあるだろう。
また、更なるドル高は、人民元をはじめとした新興国通貨の続落と資本の逃避を呼び、G20などの国際会議においてドル高阻止へのコンセンサスができれば、ドル高の大きな抑制要因となるだろう。

2) 中国経済

昨年の株式相場のメルトダウンから今年年初は中国懸念が強かったが、今年の中国経済は3四半期連続で+6.7%と予想を上回る成長を見せ、ここ2-3年でも最も安定した内容となった。トランプ新政権との貿易摩擦や人民元安と資金流出問題、不動産バブルの可能性など、依然として不安材料があるが、最大の焦点は、貿易摩擦に加えて安全保障問題や二つの中国問題など、トランプ新政権の対中戦略にかかっていると言える。
習国家主席は中国の成長率が+6.5%を下回ることを容認する姿勢とも伝わっているが、トランプ新政権の出方次第では、世界経済の牽引車の地位を放棄するだろうし、米国を揺さぶるために米債投資戦略を見直す可能性もあるだろう。

3) 商品相場

今年の商品相場(CRB INDEX)は、年初安値155台から12月には195台を回復するまで反発した。その間原油価格は安値26ドル台から一時55ドル台まで反発し、鉄鉱石は40ドル割れから81ドル台、燃料炭は50ドル割れから112ドル台まで一時上昇した。
昨年末、今年も商品相場続落を予想していた当地商社の社長連中に「世界経済は回復基調にあり、有限資源が限りなく下落することはあり得ないし、今年は反発するだろう」と反論していた筆者は内心ほくそ笑んでいるが、ただ現在の商品相場の反発が来年も続く保証はない。中国の鉄鋼や石炭の過剰生産防止策の効果が表れているが、中国の景気減速懸念が再び高まれば、資源価格にも影響が出るだろう。また、OPEC・非OPECの15年ぶりの減産合意で急反発した原油価格であるが、過去の例を見ても来年から本格的に始まる減産体制に対する懐疑的な見方は依然強い。さらに、年末の商品相場上昇も一連のトランプラリーによるところが大きく、その継続性についても慎重に見る必要がある。

4) RBAの金融政策と豪州経済

スティーブンス前RBA総裁は、今年5月と8月、2回の利下げを行って、政策金利のオフィシャル・キャッシュレートを1.5%の史上最低水準とした。利下げの理由は低インフレと豪ドル高と考えられた。9月に就任したロウ新総裁は、「金利は既に歴史的に非常に低水準で貯蓄者にとりマイナスと認識」と述べ、また住宅価格の高騰に懸念を表明するなど、前総裁ほどはハト派ではないとの印象だ。
IMFは住宅バブルに警鐘を発し、OECDは住宅バブル沈静のため、2017年にRBAは利上げすべきと提言した。現在コアインフレ率は前年比+1.7%と依然RBAのターゲット2-3%の下にあるが、RBAは徐々に上向くとの見通しを述べている。Q3GDPは約5年ぶりに前期比-0.5%とマイナス成長になったが、これは一時的な現象との見方が強く、豪州経済の雇用と個人消費は今後とも堅調との見方ができる。また資源価格の上昇を背景に、豪州の交易条件は3年ぶりに上昇に転じる見通しであり、長らく低迷している資源部門への設備投資の回復が期待される。
豪州経済がトレンド成長率(2.85%前後と言われる)を回復すれば、来年後半にはRBAの利上げが現実味を帯びてくる。

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