火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

え、まさか

更新日:2016年6月21日

先週は、米国と日本で重要な金融政策決定会合が開催されました。14-15日に開かれたFOMCでは、市場の予想通り利上げは見送られました。声明文では第1段落の現状認識のみがアップデートされたのみで、その他のフォワードガイダンスやリスクバランスについての認識には何の変更も見つけられないままとなりました。唯一、これまで利上げを主張して反対票を投じてきたジョージ米カンザスシティ連銀総裁が賛成に回ったことがサプライズとなりました。

また、同時に公表された「経済金利見通し」では、2016年末のFF金利見通しで、中央値こそ据え置きとなったものの、年4回の利上げ予想が前回と比べて3人から1人、3回予想が3人から1人に減少。一方で2回予想が9人のままで同じ。1回予想が1人から6人まで増加するといった下方向へのシフトチェンジ。2017年末と2018年末の中央値も揃って下方修正されるなど、全般ハト派的な内容となりました。ドットチャートからは、2016年末までに1回の利上げを行った後、2017年、2018年末まで一度も利上げを予想していないといった、いわゆる「筋金入りのバリハト派」(後になってブラード米セントルイス連銀総裁ではないかとの見方が台頭していますが)も出現するなど、市場の予想を遥かに上回るハト派的な内容となりました。

ただ、イエレンFRB議長が定例記者会見で「1、2回の統計に過剰反応すべきではない。第2四半期の指標は著しい持ち直しを示すだろう」との見解を示したほか、「7月利上げは不可能ではない。適切と判断すれば数ヶ月以内に行動する」との見通しに言及しました。市場では解釈の違いからか、かなり受け取り方にばらつきが出ているわけで、市場の反応もそういった不安定な心理状況を表す動きとなりました。

一方、15-16日に開催された日銀金融政策決定会合では、大方の予想通り「政策の現状維持」を決定しましたが、一部では根強い緩和期待があったこともあり、ドル円や日経平均が一気に売り浴びせられることになりました。加えて、黒田日銀総裁の「極めて緊張感のない記者会見」も格好の売り材料となったわけです。

そんなリスクオフの動きに拍車がかかるなか、その日のNY市場では想定外の悲劇が勃発します。キャメロン英首相が日に日に高まるEU離脱支持の世論を受けて、野党労働党のブラウン元首相にキャンペーンの先導を依頼したばかりではありましたが、そのブラウン氏と共に中心となってEU残留支持を訴えていた2児の母、ジョー・コックス英下院議員が、白昼の集会後に3発の銃弾を受けた後、何度もナイフで刺し殺されるといった惨劇となりました。

キャメロン英首相をはじめ、両陣営が早速投票に向けたキャンペーンを一時中断。市場では「国民投票自身が延期されるかも」といった噂まで飛び交うことになりました。市場の反応はこれまでの「リスクオフ」ポジションを巻き戻す動き。ポンド円やユーロ円などクロス円が急激な買い戻しとなったほか、株価も大幅な上昇となりました。

市場では、移民問題から離脱支持が多い野党労働党が、あからさまに離脱を叫べなくなったばかりか、投票行動を未だに決めかねている層にとっては、投票を決心する大きな要因となるはずで、EU残留に向けた声が加速度を増す可能性も出てくるといった認識が台頭したわけですが、週明けに発表された最新の世論調査では、案の定、残留支持が離脱を逆転。市場の流れは一変したと言っても過言ではありません。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は頭の重い動きとなりました。週明けは一時106.932円まで値を戻す場面もみられましたが、その後は次第に上値を切り下げる展開となりました。日経平均が弱含むとクロス円中心に下落。16日には日銀が追加緩和を見送ったことをきっかけに売りが加速しています。目先の重要なサポートレベルとして意識されていた2014年10月15日の安値105.195円を下抜けるとストップロスを断続的に巻き込んで下げ足を速め、一時103.549円まで急落しました。その後は菅官房長官による強めの円高牽制発言などもあり、104.831円まで買い戻されています。

今週のワタシの「注目通貨ペア!」

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は底堅い動きを予想しています。16日に起きた英下院議員銃殺の影響を受けて、週明け早朝からポンド円中心に買い戻しの動きが強まっています。市場では「離脱支持派の野党議員が極右思想の人物に殺害されたことで、世論がかなり残留に傾いてきている」との声が強く、これまで英国のEU離脱の可能性が高まったとしてリスクオフポジションが積み上げられていたことから、その巻き戻しの動きが先行しそうです。ただ、23日の国民投票の結果を見極めるまでは予断を許さない状況に変わりはなく、目先は荒い値動きを繰り返しそうです。市場では、21-22日に予定されているイエレンFRB議長の半期に一度の議会証言にも注目が集まっています。

下値では、16日の安値103.549円がサポートレベルとして意識されているほか、上値では、2014年10月15日の安値105.195円や先月5月3日の安値105.547円がレジスタンスレベルとして意識されています。