第12回ECBの仕組み

European Central Bank(欧州中央銀行、以下「ECB」)はEUの中で単一通貨ユーロを採用している国々(ユーロ圏)の中央銀行のことで、これらの国に統一的に適用される金融政策の決定等の重要な役割を担います。
1998年に設立され、本部はドイツのフランクフルトにあります。
2021年12月現在、EU加盟国(27か国)のうち次の19か国がユーロを導入しています。

オーストリア、ベルギー、キプロス、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、リトアニア、ラトビア

一方、EU加盟国でユーロを導入していないのは、デンマーク、ルーマニア、チェコ、ハンガリー、ブルガリア、ポーランド、クロアチア、スウェーデンの8か国です。

ユーロ圏における中央銀行としての様々な業務は、各国の中央銀行(NCBs:National Central Banks)が担っており、この点は、米国における連邦準備制度理事会と各連邦準備銀行との役割分担に似ている点もあります(ただし、米国ではニューヨーク連邦準備銀行が特別な地位を占める点で、ECBと異なる点も少なからずあります)。

ECBの主な権限:
・ユーロ圏の金融政策決定
・公開市場操作の決定、調整、モニタリング
・ユーロ紙幣の発行
・為替介入による外国為替操作
・決済システムの運営
・ユーロ圏内の銀行システムの監視

NCBsの主な権限:
・ECB決定事項の実行
・公開市場操作
・ユーロ紙幣の印刷
・自国内の銀行の監視

ECBには、役員会(Executive Board)、一般理事会(General Council)などいくつかの重要な政策決定機関(会合)がありますが、ユーロ相場との関係で最も重要なのは、政策理事会(Governing Council)と呼ばれる会合です。これはECBの最高意思決定機関として金融政策を決定する権限を有し、役員会メンバー6名とユーロ圏の中央銀行総裁19名の25名で構成されます。
原則として6週間に1回、予め公表されたタイミングで開催され、そこでの決定事項および会合の都度、会合後に開かれる総裁の記者会見は、市場関係者の高い注目を集めます。 議事録は次回の政策理事会の前に公開されます。

政策理事会に理事6人は毎回出席しますが、中央銀行総裁は、国の経済・金融規模に応じて付けられた順位が1~5位までの国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ)から輪番で4人と、その他の国(14か国)から輪番で11人が出席し、いずれも1人1票を行使します。参加国が増えても同じ定数で投票されます。

政策金利の種類として、次の3つがありますが、通常、「政策金利」という場合は、②を指します。

  1. 預金ファシリティ金利:金融機関が手元資金をオーバーナイトでECBに預ける金利
  2. 主要リファイナンス・オペ金利:ECBの主要政策金利。ECBやNCBsが行う公開市場操作において、金融機関が、自己の保有する国債等を担保に資金供給を受ける際の下限金利
  3. 限界貸付ファシリティ金利:急な資金需要が生じた市中銀行が、ECBから資金を借り入れる際の借入金利

政策理事会で決められた金融政策は、役員会が具体的な指示を各中央銀行の総裁に行います。各中央銀行はこれに従って公開市場操作など金融政策を実施していきます。

ところで、ECBはかつて世界で最も独立性の高い中央銀行とされたブンデスバンク(Deutsche Bundesbank:ドイツ連邦銀行)を様々な点においてモデルとして作られており、実際、これまで金融政策の判断等について各国政府やユーロ圏の他の機構から干渉を受けることは稀でした。