第8回米国の連邦準備制度 (1)概要

米国の連邦準備制度(Federal Reserve System、略称「FRS」。「Fed」<フェド>の略称でも呼ばれる)は、1913年の連邦準備法によって設立された中央銀行制度です。
その総括機関が、ワシントンDCにある「連邦準備制度理事会」(Federal Reserve Board、略称「FRB」)で、7名の理事(うち議長1名、副議長2名)で構成されています。

FRBは、その下に「連邦準備銀行」(以下、「地区連銀」という。全12行)を抱え、業務全体に関する広範な監督権限を有しています。FRBは連邦議会の下にある政府機関ですが、予算の割当や人事の干渉を受けず、独立性が確保されています。
地区連銀は、各地区における金融機関の監督や決済システムの運営等を担っています(日本では、日本銀行がわが国唯一の中央銀行として金融政策の決定と実行に当たっていますが、米国は連邦制であるため、地方分権制を採っています)。

金融政策の決定に関する議論は、「連邦公開市場委員会」(Federal Open Market Committee、略称「FOMC」)で行われます。FRB理事7名とニューヨーク連銀総裁(いずれも常任)、4名の地区連銀総裁(輪番制、任期1年)が議決権を持ち、FFレート(Federal Funds Rate<フェデラルファンドレート>の略)(※)の誘導目標等をFOMCで決定します。

※FRSの加盟銀行は、預金残高の一定割合を地区連銀に預け入れることが義務付けられていて、預け入れるべき資金が不足している場合に、加盟銀行が互いに短期資金をやりとりする市場で成立する金利のことをFFレートといいます。

米国の中央銀行制度は1つの中央銀行が存在するわけではなく、このように鍵となる3つの主体(FRB、地区連銀12行、FOMC)から構成される集合体です。

連邦準備制度

FRSの金融政策運営の目的は、連邦準備法で「最大雇用と物価安定、および適度な長期金利という目標の達成を効率的に推進すること」と規定されています。
中央銀行の目的として「物価安定」のみを掲げるのではなく、「最大雇用」の達成も明確に掲げている点が特徴的で、「最大雇用と物価安定」の二つは、FRBとFOMCに課されている法的使命として、「デュアル・マンデート(Dual mandate)」といわれます。

その目的の下で3つの主体から構成される集合体が中央銀行の役割を担い、①金融政策の遂行、②金融システムの安定の維持、③金融機関の監督と規制、④決済システムの安全性と効率性の向上、⑤消費者保護と地域開発の促進、という5つの機能を果たすという、分権的な中央銀行制度になっています。