第6回クロス取引の算出方法を覚えて、トレードに役立てよう!!!!

クロス取引とは、「ユーロ/円」や「ポンド/スイス」のように一見「米ドル」が介在しない取引のことをいい、「合成通貨」と呼ばれることもあります。
第1回目のコラム「マーケットはドルが中心」でも説明しましたが、クロス取引のレートは対米ドルレート(以下ドル)を基準として算出されます。

クロス取引の算出方法は、以下の2つのケースに分けることができます。

  1. 「〇〇/ドル」と「ドル/□□」のように、2通貨ペア間でドル表記が違う側となるケース・・・「掛け算通貨」
  2. 「ドル/△△」と「ドル/□□」のように、2通貨ペア間でドル表記が同じ側となるケース・・・「割り算通貨」

では、「掛け算通貨」の例として、主要通貨ペアである「ユーロ/円」のBID/ASKを、「ユーロ/ドル」と「ドル/円」のレートを使って算出してみましょう。
・・・BID同士、ASK同士をそれぞれ「掛け算」する。

※現在のレートを、以下のとおりとします。(かっこ)は、レートを受ける側の視点で記載しています。
ドル/円:
108.800(ドル売り円買い)-108.802(ドル買い円売り)
ユーロ/ドル:
1.20100(ユーロ売りドル買い)-1.20103(ユーロ買いドル売り)

ユーロ/円:
BID:108.800×1.20100=130.668(ユーロ売り円買い)
ASK:108.802×1.20103=130.674(ユーロ買い円売り)

この方法は「1ユーロ=●ドル」や「1ポンド=●ドル」のように、「自国通貨1単位との交換に、ドルがいくら必要か」を表示する通貨の対円レートを算出する場合に使います(ニュージーランドドル、豪ドルなども同様)。

次に、「割り算通貨」の例として、「スイスフラン/円」のBID/ASKを、「ドル/スイスフラン」と「ドル円」のレートを使って算出してみましょう。

円やスイスフランは「1ドル=●自国通貨」のように、「外貨1単位と交換するために自国通貨がいくら必要か」を表す自国通貨建て方式となっています。

ドル/円:
108.80(ドル売り円買い)-108.802(ドル買い円売り)
ドル/スイスフラン:
0.90700(ドル売りスイスフラン買い)-0.90704(ドル買いスイスフラン売り)
※(かっこ)は、レートを受ける側の視点で記載しています。

こちらも、ドル買いとドル売りを相殺して、スイスフラン/円のBID/ASKを算出します。
今回は、BIDとASK、ASKとBIDをそれぞれ除して、ドルのポジションを相殺します。

スイスフラン/円:
BID:108.800÷0.90704=119.950 (スイスフラン売り円買い)
ASK:108.802÷0.90700=119.958 (スイスフラン買い円売り)

上記の方法で、クロス取引のさまざまな通貨ペアのレートを算出できます。

(注)カナダドル、トルコリラの場合は決済日(バリューデート)が通常のスポット(2営業日)ではなく、翌営業日(トム-Tommorowの意味)となります。決済日を揃えるため、ドル/カナダドル、ドル/トルコリラで、日数分のスワップポイントを考慮して計算する必要があります。

このように、クロス取引のレートが対ドルの価格をベースに算出されていることを理解すると、「ユーロ/円」を取引する場合には、「ユーロ/ドル」、「ドル/円」、「ユーロ/円」のレートを順に見ることで、どの通貨が一番買われているのか(売られているのか)を知ることができます。

例えば、「ドル/円」が上昇し、「ユーロ/ドル」が下落している状況を考えてみましょう。この場合、円、ユーロに対してドルが買われている結果、一番強い通貨はドルと判断することができます。さらに、「ユーロ/円」が下落(ユーロ売り円買い)しているのであれば、通貨間の強弱関係は、ドル>円>ユーロであることが推測できます。
しかし単純に「ユーロ/円」だけだと世界で一番取引され、一番重要なドルの動きを無視して考えることになってしまいます。

また、「ユーロ/ドル」、「ポンド/ドル」の双方が上昇している場合、ユーロとポンドの強弱関係を知るには、「ユーロ/ポンド」のレートを見れば一目瞭然です。

次に、資源国通貨の豪ドルを例に考えてみましょう。

「豪ドル/円」が買われていたとします。
まず、着目する通貨ペアは、「豪ドル/ドル」、「ドル/円」、そして「豪ドル/円」です。「豪ドル/ドル」が上昇し、「ドル/円」が膠着状態となっている場合、豪ドル>ドル、円の強弱関係が推測できます。その結果、豪ドルが買われているということであれば、資源国通貨仲間の「ニュージーランドドル/ドル」や「ドル/カナダドル」の相場もあわせて確認してみましょう。同じような動きをしているのであれば、原油価格などのコモディティ相場に何か動きがあり、資源国通貨が買われているといった推測にも繋がります。

日本で取引していると、「円」を中心に相場を考えてしまいがちですが、基軸通貨である米ドルを中心に考えることで、「マーケットで今起こっていること」を様々な角度から考えることができるのです。