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金曜 松崎美子の英国発!すこしFX☆なが〜くFX ロンドン在住の女性トレーダーによる為替&経済コラム

ドラギノミクス:3本の矢

更新日:2014年9月26日

毎年9月になると、一番最初の週末を利用して、イタリア・コモ湖畔では経済会議【アンブロセッティ・フォーラム】が開催されます。欧州の経済関係フォーラムでは、スイスのダボス会議が有名ですが、このアンブロセッティ・フォーラムの参加者は、欧州各国の元首・閣僚・欧州委員会要人・中央銀行関係者・ビジネスリーダーなど≪ヨーロッパを基盤とした人物≫に限られていることが、ダボス会議とは大きく異なる点かもしれません。

40回目の記念すべきフォーラムとなった今年の会合でのキーワードは、ずばり【ドラギノミクス】!

これは【欧州版・アベノミクス】と呼ばれ、「失われた10年」に非常に似た問題が欧州を悩ませている今、苦しみ抜いた日本をデフレから救出した安倍総理にちなんで、今度はドラギECB総裁が≪救世主≫に祭り上げられた格好になっています。

本日のコラムでは、ここまでのデフレと低成長の危機に迫った欧州にスポットライトを当ててみたいと思います。

ジャクソンホールでのドラギ総裁講演

8月末にアメリカ・ジャクソンホールで開催された経済シンポジウムで講演したドラギECB総裁は、

「The monetary policy should be supported by increased spending by countries with strong fiscal positions and structural reforms in economies such as France and Italy.
金融政策は、財政面でゆとりがある国々の柔軟な財政出動と、フランスやイタリアの構造改革に対する努力にサポートされるべきである。」

と語り、低インフレや景気低迷からの回復は、金融政策のみに限られた対応では不十分であり、財政政策による ‘援助’も必要になってきたという見解を披露しました。

更にマーケットを驚かせたのは、ドラギ総裁は事前に用意された原稿内容だけでなく、ご自分のアドリブも加え、低インフレ懸念に対し今までにない見解を披露したことでした。具体的な内容を比較しますと、

事前に提出された原稿でのインフレに関する言及
Inflation has been on a downward path from around 2.5% in the summer of 2012 to 0.4% most recently. Acknowledging this, the Governing Council would use also unconventional instruments to safeguard the firm anchoring of inflation expectations over the medium- to long-term.

ドラギ総裁の講演内容
Inflation has been on a downward path from around 2.5% in the summer of 2012 to 0.4% most recently. I comment on these movements about once a month in the press conference, and I have given several reasons for this downward path in inflation, saying it is because of food and energy price declines; because after mid-2012 it is mostly exchange rate appreciation that has impacted on price movements; more recently we have had the Russia-Ukraine geopolitical risks, which will also exert a negative impact on the euro area economy; and of course we had the relative price adjustment that had to happen in the stressed countries as well as high unemployment. I have said in principle most of these effects should in the end wash out because most of them are temporary in nature ― though not all of them.
But I also said if this period of low inflation were to last for a prolonged period of time, the risk to price stability would increase. Inflation expectations exhibited significant declines at all horizons. The 5year/5year swap rate declined by 15 basis points to just below 2% ― this is the metric that we usually use for defining medium term inflation. But if we go to shorter- and medium-term horizons, the revisions have been even more significant. The real rates on the short and medium term have gone up, on the long term they haven't gone up because we are witnessing a decline in long-term nominal rates, not only in the euro area but everywhere really. The Governing Council will acknowledge these developments and within its mandate will use all the available instruments needed to ensure price stability over the medium term.

オリジナルの原稿では、わずか3行の講演内容が、実際にはその6倍の18行にまで増えており、全てドラギ総裁がアドリブで付け加えたようです。そして私が勝手に斜め文字・太字表記に変えた部分が、同総裁の焦りが表れていると思った箇所です。

過去のドラギさんの記者会見を思い出してみると、「ユーロ圏の日本化はあり得ないことであり、インフレ期待値は中長期でみれば安定している」という内容の発言に終始していましたが、この時の講演では、「財政出動の可能性」にまで踏み込みました。たぶん金融政策だけでヨーロッパを引っ張っていくことに限界を感じた総裁は、加盟各国政府の財政面や構造改革における協力が得られない場合は、本当にデフレに陥り、失われた10年が現実化する危機感を抱いていたことが、ヒシヒシと感じられました。

ここで同総裁がインフレ期待値を判断する道具として、【The 5year/5year swap rate  5年先スタートの5年物インフレ・スワップ金利】を持ち出したことも特筆すべきことかもしれません。これについては、後ほどあらためて説明したいと思います。

ドラギノミクス

ジャクソンホールでの講演を聞いた経済学者:ルービニ・NY大学教授は、「この発言内容は、アベノミクスの3本の矢と非常に似ている。」と語り、同教授はこれを【ドラギノミクス】と名づけたのです。

アベノミクスの3本の矢とは、
@ 大胆な金融緩和   A 機動的な財政出動  B 民間投資を喚起する成長戦略
のことです。それでは、果たして【ドラギノミクス】の3本の矢は、どのような内容となるのか、私なりに考えてみました。

 @ 構造改革

責任の所在: 加盟各国政府

潜在成長率の引き上げを可能にするためにも、労働市場改革に代表される構造改革が必要 ⇒ 対象国: イタリア、フランス ⇒ 両国とも、改革志向の内閣が誕生したことは、ポジティブな動きであるが、それに対する反対勢力も強く、改革に時間がかかることも、考えられる。

スペインやアイルランドは、既に相当の構造改革を実施済み。

ただし、ドラギ総裁の毎月の定例記者会見を聞いていると、ここ1〜2ヶ月で少しづつ変化が現れてきたと私は感じており、景気浮揚には構造改革の実施だけでは不十分で、需要を喚起する政策も不可欠であるという結論に達したと思われます。そこで、2本目の矢の登場です。

 A 柔軟な財政政策と積極的な財政出動

責任の所在: 加盟各国政府

  • 緊縮財政策を断行し、赤字削減を徹底することは大切である
  • ただし、財政規律を維持した上で、柔軟な対応を認めることも、景気浮揚につながる
  • 景気浮揚が可能となれば、構造改革の推進余地も高まる
  • 短期的には財政の柔軟性により、需要・成長・失業率の改善を可能にする
  • 中長期的には財政規律と構造改革が重要となる
  • 各加盟国に義務付けられた財政均衡化達成年度の遅延を許可するなど、財政規律の柔軟な運営と財政拡張が必要となってきた
  • 財政的に余裕があるドイツなどが、時限措置として【減税や公共投資の増加】など、積極的な財政出動を実施し国内需要を呼び起こすことが望ましい
  • ユーロ圏全体をターゲットとした大規模な公共投資プログラムの実現
  • EUレベルで景況感を高める措置も必要

 B 量的緩和策(QE)の導入

責任の所在: 欧州中銀

加盟国の国債購入も視野に入れたQE策の導入に加え、民間投資を増やすことに積極的に取り組む。既にECBはTLTRO(条件付き長期リファイナンス・オペ)を実施しているが、本格的なQE策は、まだである。


こうして書き並べてみると、今までECBにおんぶに抱っこであった加盟各国政府ですが、ここからは彼らの役割分担が大きく増えてきたようです。

インフレ率を判断する際にECBが使用する物差し

ドラギ総裁のジャクソンホールでの講演の中で出てきたのが、【5年先5年物インフレーション・スワップ金利】。自分の記憶を遡ってみたのですが、たしかユーロ圏債務危機が一番悪化していた2011年頃だったと思うのですが、トリシェ前総裁が先行きのインフレ見通しを判断する上で、このスワップ金利が非常に当てになる…というような発言をされていらっしゃたと記憶しています。その時には、あまりにも難しい言葉なので、そのままスルーしておりましたが、ECBが毎月発表する月報にも、【5年先5年物インフレーション・スワップ金利】を使ったインフレ見通しチャートが、必ずといってよいほど、掲載されています。

これは9月11日に発表された≪9月 ECB月報≫に載っていた、【5年先5年物インフレーション・スワップ金利】のチャート (赤い点線) です。2013年の間は2.2〜2.4%の間で推移し、今年に入ってからも、ほとんどずっと2%より上での推移となっていました。 見やすいように、2014年分の拡大図を載せてみましょう。

これを見ると分かりますが、ジャクソンホール講演時には、2%を割れてしまいましたね。なので、ドラギ総裁も焦ってしまい、インフレに関する言及部分をあれだけ拡大し、アドリブを入れてまで「見通しの変化」と「財政出動の必要性」を訴えたかったのかもしれません。

この月報に載っているチャートは9月11日付けですが、それ以降の動きを自分の手で書き加えてみました。最新の9月24日時点では、ジャクソンホールよりも低い1.9%での推移となっており、ますます将来のインフレ見通し期待値が低下していることが確認できます。

低インフレ・景気低迷に対するECBの手段

低インフレの是正や景気浮揚のためにも、流動性を供給しながら企業投資などを原動力とした景気回復が必要であることが分かりました。そして、2度にわたるマイナス金利の導入で、ECBにはあまり手段が残されていないことは、過去のコラム記事でもお伝えしています。

ここでは、ECBに残された非伝統的政策手段を考えてみました。

 @ TLTRO

TLTRO(Targeted Long Term Refinance Operation 条件付き長期リファイナンス・オペレーション)は、民間企業向けの貸し出し促進策という位置づけであり、2012年8月に英中銀が実施したFunding for Lending Scheme (FLS 融資促進のための資金調達スキーム) と似た措置となっています。

簡単に仕組みを説明しますと、銀行がここで特別に安い金利(0.25%)で資金を引っ張ってくる ⇒ 低利の融資として企業や民間に貸し付ける ⇒ 企業投資や個人消費が活発になる ⇒ それが景気浮揚に結びつく  という趣旨であると、私は理解しています。

具体的な内容を見ると、オペは2段階に分かれており、

@ 第1段階 (2014年9月と12月の2回実施)
2014年4月30日時点のユーロ圏の民間非金融部門への貸し出し残高から、家計向け住宅ローンを除いた額の7%相当を上限として借り入れが可能となる。当初予定総額は、4,000億ユーロ

A 第2段階 (2015年3月〜2016年6月)
上記期間に四半期ごとに実施。オペ対象金融機関は、ユーロ圏の民間非金融部門への純貸出から、家計向け住宅ローンを除いた額の最大3倍までの追加調達が可能。

第1段階と第2段階をあわせた想定規模は、だいたい8,000億ユーロと言われており、借り入れ期間は「4年間」と設定されています。【条件付き】という名前がついていることから、企業融資に特化されたものではありますが、実はこれには抜け道があり、融資以外の目的で借り入れることも可能であり、ペナルティーや罰則は、ありません。ただし、その場合に限り、返済期限が4年ではなく、2年に短縮 されます。

当然のことですが、TLTROの割り当て額はECBの一存では決定出来ず、あくまでも欧州系銀行の参加意欲に左右されるため、どれだけECBが意欲的に流動性を高め景気回復の手がかりに したいと考えていても、銀行が動かなければ、それまでのこと。

 第1段階:9月のTLTROの結果

今年11月に予定されているECBの銀行監督一元化に先駆け、欧州の金融機関の資産査定(AQR)とストレステストが現在進行中です。10月末に結果が発表されますが、資金不足という烙印を押された銀行は、あらたな資本増強の必要性に迫られます。それらの事情もあり、バランスシートを大幅に変更したくない銀行にとって、9月18日に実施された最初のTLTROには積極的に参加するだけの根拠がなかったとも言えます。

事前にブルーンバーグが実施したエコノミストを対象にした調査によると、

  • 9月の第1回目のTLTROの割り当て額予想: 1,740億ユーロ
  • 12月の第2回目のTLTROの割り当て額予想: 1,670億ユーロ

となっていましたが、いざ蓋を開けてみると、

  • 826億157万ユーロ
  • 255行の参加

予想の半分以下という散々な結果へ…

ただし、9月22日に欧州議会・経済金融委員会で3ヶ月に一度の議会証言を行ったドラギ総裁は、この点に関する質問に対し、「TLTROの結果は、9月だけの数字を見ずに、9月と12月の合計金額で判断して欲しい。」と答えていました。

 A 量的緩和策(QE)の導入

9月の理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は、「住宅ローン担保証券(RMBS)を含む資産担保証券(ABS)に加え、域内銀行が発行したカバード・ボンドを買い入れる枠組み」について言及し、その実施に伴う詳細は10月2日の次回理事会後に提示する と述べました。

その規模について、ざっと計算してみました。

データ: 欧州金融市場協会  2014年第1四半期報告書

※クリックで拡大できます

これは一番最新のデータで、2013年第4四半期時点の残高。赤く丸で囲んだ部分は、

  • 資産担保証券(ABS)の規模    2,013億ユーロ (約27兆円)
  • 住宅ローン担保証券(RMBS)の規模    8,628億ユーロ (約117兆円)

ヨーロッパ全体のアセット残高規模(国債を除く)が、1兆4864億ユーロ、そのうちの半分以上をRMBSが占めています。つまり、ECBがABSを対象とした量的緩和をする時に、RMBSを含むと含まないとでは、大きな差があることがわかりました。

カバード・ボンドに関しては、欧州カバード・ボンド協議会(ECBC European Covered Bond Council)が毎年発表している報告書を見てみると、2012年末時点の発行残高が、全世界で 2兆6,000億ユーロという膨大な規模。国別の市場規模に目を移すと、 6大カバード・ボンド市場国は、ドイツ・デンマーク・スペイン・フランス・スウェーデン・英国の順となっています。

ただしここで問題となるのは「格付け」です。RMBSを含んだABSの規模が1兆ユーロを超えることは分かりましたが、ECBは何でも手当たりしだい闇雲に購入する訳ではなく、≪一定の格付け要件を満たす資産のみを対象に購入する≫でしょうから、買い入れ可能な額は、大幅に減少しそうです。

ECBからは具体的な購入規模は公表されておりませんが、報道を読み比べると【ABSとカバードボンド】両方合わせると、ロイター調査では「2年かけて3,000億ユーロ規模の購入」と予想されている傍ら、他の報道では、「5,000億ユーロ規模」という数字が載っていました。いずれにしても、思ったほど強烈なインパクトはなさそうです。

ただし、QE策はTLTROとは違い、ECBがその額を決定出来るという利点は、残っています。

バランスシート規模に関するドラギ総裁発言

 ECBバランスシート残高

2011年と12年、2度に渡る1兆ユーロ規模のLTROの前倒し返済が毎週行われているため、ECBのバランスシート残高は、どんどん減少しています。この2ヶ月間だけでも、イタリアとスペインの銀行による返済額は、790億ユーロにのぼりました。

データ:  欧州中銀ウェブサイト

※クリックで拡大できます

上の表はECBのウェブサイトで毎週発表されるバランスシート残高ですが、先週金曜日にとうとう2兆ユーロを下回ってしまいました。

下のグラフは、ECBのウェブサイトからデータを取り、私自身がエクセルを使って作成したチャートです。左軸は、ECB発表のユーロ実効レート(赤いライン)、右軸は、バランスシート残高(水色の部分)となっており、それぞれ比較してみました。

チャートの下に黄緑でハイライトを入れた期間の前半部分は、
ECBが2度にわたるLTROを実施 ⇒ 1兆ユーロの流動性を供給 ⇒ バランスシートは急拡大 ⇒ ユーロがジャブジャブとなった ⇒ 通貨の価値は下がった(=実効レートは下落)時。

黄緑の後半は、
LTROの前倒し返済が開始 ⇒ マーケットに放出されたユーロが、どんどんECBに返済された ⇒ 流動性縮小 ⇒ マーケットがタイトになる ⇒ ユーロの価値が上がった(=実効レートは上昇)時。

それに対して、ピンクでハイライトを入れた時期は、流動性縮小と足並みをそろえてユーロの価値も下がる(=実効レートは下落)という動きをしています。これはユーロ/ドルが1.40の手前から急落してからの動きと一致します。当時は、欧州議会選挙が終わったばかり ⇒ 政治家達が、特にフランスから、ユーロ高についてさかんにけん制発言が出た ⇒ インフレ率も1%を下回る状態が継続 ⇒ ドラギ総裁は「マイナス金利導入の可能性に言及」 ⇒ しかし、なかなか実行に移さず、狼少年と呼ばれていた時 ⇒ その後、ドル高相場が始まる ⇒ ECBのバランスシートが縮小しても、実効レートは上昇せず、一気に下落へと追い込まれ、現在に至っています。

 9月の記者会見での言及

9月理事会後の記者会見の席で、ドラギ総裁は希望的バランス・シートのサイズについても言及しており、【2012年のレベル】つまり3兆ユーロくらいまで拡大したいと洩らしました。そうなると、今から更に1兆ユーロ規模のバランス・シート拡大をする魂胆のようです。

もしABSとカバード・ボンド両方を使ったQE策の規模が5,000億ユーロとなった場合、残りの5,000億ポンドをどこかから引っ張ってこなければなりません。TLTROが絶好の対象となりますが、9月は僅か826億ユーロですので、全然足りません。

そこで候補に挙がってくるのが、「加盟国の国債も対象としたQE策の導入」です。事実、9月のECB理事会では、理事の間で量的緩和が議論され、複数の理事達がABSとカバード・ボンドの購入プログラムだけでは、不十分とし、さらに踏み込んだ資産購入策が必要と主張したことが示唆されています。

 国債購入という選択肢も含んだQE策導入

ABSとカバードボンドの購入プログラムの決定について、「全会一致での決定か?」と問われたドラギ総裁は、「全会一致ではなかった」と答えています。しかし、「過半数には十分な理事達(comfortable majority)が賛成した」とも付け加えていたことから、マーケットでは、『少なくとも2名以上の投票メンバーが反対票を投じた』 と理解しています。

ABSだけでも2名かそれ以上の理事が反対しているのに、国債購入も含んだQE策の導入となった場合、果たして何名の理事が反対に廻るのか、考えただけでも気が重くなります。

米FRB、英BOEや日銀は自国の国債購入という手段を使って量的緩和に踏み切ったのに、どうしてヨーロッパではそんなに反対意見が多くなってしまうのか?それには理由があります。加盟国の国債の直接購入は、リスボン条約123条 『政府債務の直接的な取得の禁止』 という条項で禁止されています。これは、ECBや加盟国の中央銀行が加盟国の財政赤字の補填のために信用供与をしたり、国債を「直接購入」する事を禁止 するという意味ですので、どうしてもECBが国債を購入するのであれば、新規入札が行われる発行市場ではなく、Secondary market つまり流通市場での購入とならざるを得ません。

しかし、過去にECBが発表した非標準的措置:≪新たな国債購入計画  OMT:Outright Monetary Transactions)≫は、ドイツ憲法では違憲行為となる可能性も残っていたため、現在に至るまでOMTが発動された記録は、ありません。

しかしここまでインフレ見通しが落ち込んでしまった今となっては、禁じ手の【国債購入】も含むQEを実施し、「とにかく量で勝負!」というセンチメントに変わりつつあるのかもしれません。特にOMTでは、スペインやイタリアなど特定国の国債のみが購入対象となっていたのに対し、QEでは加盟国全ての国債が対象となりますので、モラルハザードという面からも、実行に移しやすいのかもしれません。

ドイツとの関係

現地の新聞報道

ユーロ圏債務危機がどんどん悪化し、ユーロ崩壊説まで出回った2012年、ドラギ総裁は、 「whatever it takes to save the euro ユーロを救うなら、なんでもやる!」 という有名な演説をロンドンで行いました。あの当時は、ギリシャから端を発した債務危機がアイルランド、ポルトガルへと拡大しており、「ここから、スペインやイタリアまで飛び火してしまったら、取り返しのつかないことになる」という点で、ドイツ財務省とドラギ総裁は一致した見解を持っており、二人三脚での救済発言となりました。

しかし、今回ECBが導入するかもしれないQE策は、ドイツを敵に回す政策です。既に、一部のドイツ経済学者は、ECBのQE策の合憲性に対し、OMTの時同様、憲法裁の判決を仰ぐのが正論だという考え方を表明しています。そして、ドイツ議会も絶対多数の議員がQE策の導入に反対しているため、ドイツ連銀だけでなく、メルケル首相やショイブレ財務相をはじめとするドイツ政府の反対をも押し切ってのQEとなりそうです。

最近ドイツ国内の新聞で、「ドラギ総裁が本当にやろうとしているのは、QE策導入ではなく、それを脅し文句に使って、財政的にゆとりがあるドイツ政府に財政出動をしてもらい、域内全体の需要を喚起することを目論んでいるようだ。」と報道されました。もちろん、ECBは加盟国の財政政策に口を挟むことは出来ません。ですので、とりあえずドラギ総裁は「QE策を導入しますよ!」と公言し、それに大反対しているドイツ政府やメルケル首相が、「QEは絶対に許しません。それをするくらいなら、ドイツが財政出動しますよ。」と重い腰を上げてくれるタイミングを、じっと待っているのかもしれない…と締めくくられていました。

この新聞には、このドラギ作戦が成功する可能性について、「ドイツ財務省は『今後ドイツ経済が後退する傾向を示したら…』という前提付きで緊急景気対策を準備しているようだ」 という憶測記事も一緒に載せているようです。

ドラギ総裁、ラジオインタビュー

9月24日にドラギ総裁は、フランスのラジオ1でのインタビューに答えました。その内容はECBウェブサイトに載っていますが、ドイツに関する質問にも答えていらっしゃいます。

本来であれば私が翻訳する必要はないのですが、現在のドラギ総裁の考え方を知る上で重要な部分があるため、大事な部分だけ訳してみましょう。

What is the main danger, the main enemy of Europe?
Well, the main enemy for Europe is unemployment: youth unemployment and unemployment in general. But this is caused by a broader sentiment of lack of confidence in the future and lack of trust between member states, and we have to fight this.
Q: 現在ヨーロッパが直面している最大の危機、最大の敵は?
A: ヨーロッパの最大の敵は失業問題です。これは若年層の失業と、一般の失業両方を指します。失業問題が長期化しているのは、自分達の将来に自信が持てないことだけでなく、加盟国間でのお互いに対する信用が欠けていることも問題でしょう。

Are there three or four words that symbolize your ambition for Europe?
First is investment. Private investment, but also public investment.
Q: ヨーロッパの成功を表わすシンボリックな言葉はありますか?
A: 何をさておいても、「投資」です。民間投資も重要ですが、公共投資も当然大事です。

Did you say it to Ms Merkel?
I did say so in Jackson Hole. Not to her, but to every country that has fiscal space. But the other thing that we have to remember is -- and I did say this before -- we have to restore confidence. Investors, entrepreneurs have to go back being confident in the future and in the resilience and robustness of Europe.
Q: それについて、メルケル首相に話しましたか?
A: ジャクソンホールの講演でこの考えを披露しました。メルケル首相には直接話してませんが、財政的に余裕のある国全てに対して提案したつもりです。しかし、ここで忘れてはならないことは、ユーロ圏が自信を取り戻すことの重要性です。投資家や企業家が、ヨーロッパの景気回復の力強さと将来の見通しに自信を持てる環境に戻らなければいけません。

And you say it for all countries. Some people wonder if we are assured about the survival of the euro.
What answer do you expect from someone who said that we will do whatever it takes to preserve the euro within our mandate?
Q: ユーロの継続について自信を持ち続けるべきか、わからない人がいるのでは?
A: 責務の範囲内であれば、どんな事をしてでもユーロを守ると宣言した人に対して、どんな答えを期待しているのですか?

So you still say it.
The euro is irreversible. The euro is irreversible and we will do whatever it takes within our mandate to make sure it will happen.
Q: 今でも全く同じ気持ちなのですね?
A: ユーロは後戻り出来ないものなのです。繰り返しますが、ユーロはもう後戻り出来ないので、我々は何がなんでも継続を確かなものとします。

まとめ

長々と書いてきましたが、8月のジャクソンホール以降、ドラギ総裁の考え方が大きくハト派へ転換し、本気で【欧州の日本化】を心配しはじめたと私は理解しています。ルービニ教授が指摘するような【ドラギノミクス】が本当に実現するのかについては、責任の所在が加盟国政府にある項目が多いこともあり、こればかりは何とも言えません。

バランスシート拡大のためのLTROにしても、9月と12月の効果が実感出来るのは、早くても来年第1四半期かそれ以降になるでしょう。「インフレ率が0%からさほど離れてないレベルにまで落ち込んできた今、そんな先まで効果を待つ余裕はないから、流動性を供給するために、ドイツが何を言おうが、さっさと国債も対象に入れたQE策の導入に動いたらいかがなものか?」という意見も出てくるでしょうが、これ以上の金融緩和強化の実施は、各国政府の構造改革に向けた取り組みの約束と引き換えにでもしない限り、ECBには残された手段がなくなってしまいます。

もちろん、ドラギ総裁がヨーロッパの日本化をここまで心配しているのであれば、構造改革や財政出動を待たずにQE策で時間稼ぎをすることも十分に考えられますが、国債購入を含んだQE策の導入に踏み切ると予想しているエコノミストは、全体の40%。

今年前半を振り返ると、マイナス金利導入の可能性をちらつかせては、何もしないことを選択したドラギ総裁は「狼少年」と呼ばれました。そのような金融緩和手段の出し惜しみや、ドイツ主導の財政均衡達成をあまりにも追及した結果、景気が一気に冷え込み、低インフレが予想以上に欧州を悩ませています。そして、景気回復がついてこないので、失業率も高止まりしたままです。

ドイツを敵に回さない限り、実行に移せないであろう国債購入を含んだQE策を実施したとして、それがもし失敗に終われば、ドラギさんはイタリアに帰り大統領に立候補するという噂まで出ているようです。噂はあくまでも噂であり、私はドラギ総裁がそう簡単にさじを投げるとは思えませんが、ジャクソンホールの講演を聞く限り、加盟国政府の協力なしでは、もう金融政策の限界にきてしまったと宣言したも同然だと感じました。

この問題が解決されない限り、そしてインフレ率が大きく戻さない限り、ユーロが大きく戻ることはなさそうです。それもあって、中長期的には、ユーロ/ドル 1.22台をターゲットにしてみたいと思います。

 

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