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金曜 松崎美子の英国発!すこしFX☆なが〜くFX ロンドン在住の女性トレーダーによる為替&経済コラム

英中銀の新しい冒険

更新日:2013年8月9日

私が住む英国の中央銀行であるBank of England (BOE)は、319年前の1694年7月27日に設立されました。その後、1997年に独立、翌年の1998年にイングランド銀行法が設定され、それに基づいて英国の経済政策支援を遂行すべく物価の安定を責務として現在に至っています。その伝統あるBOEが、8月7日に歴史に残る画期的な一歩を踏み出したのです。

それは、英中銀が四半期に一度発表するインフレーション・レポートの中で、はじめて「フォワードガイダンス制」の導入に踏み切ったからです。本日のコラムでは、英国におけるフォワードガイダンス制について、詳しく書いてみたいと思います。

事前予想

まず、この記事中に何度も繰り返される【フォワードガイダンス制】とは何か?については、この過去記事内の『英中銀の北米化1』を参考にしてください。

インフレ・レポートでフォワードガイダンスを発表するのか?もし、予想通りにした場合、どんな内容が予想されるのか? これについては、特にこれと言ったコンセンサスがなかったため、私は自分なりの勝手な予想を立てていました。

1) フォワードガイダンス反対派

英中銀金融政策理事会(MPC)は、総裁・副総裁を含め、9名の理事から構成されています。その9名のうち4名は、フォワードガイダンス制導入について、懐疑的あるいは反対していると公言していただけに、「もしかしたら、ガイダンスの導入が見送られるのではないか?」という報道も出ていました。つまり、ガイダンス導入は決して既成事実ではなかった点を強調しておきたいと思います。気になるその4名の反対派の理事名は、ビーンBOE副総裁・デールBOE主席エコノミスト・ウィール外部委員・ブロードベント外部委員。

2)フォワードガイダンス導入に踏み切った場合

反対派がいるにもかかわらず、米FRBや欧州中銀(ECB)のようにフォワードガイダンス制を導入すれば、カーニー総裁が他の理事の協力を得られた証拠となり、英中銀のCredibility(信用性)が高まることになります ⇒ ポンド買い材料。

3)どのくらい強烈なガイダンス内容となるのか?

・あんまりパッとしないガイダンス内容の場合
カーニー総裁が、思い切ったガイダンスを導入しようとしたにもかかわらず、他の理事達が乗り気でなかった場合、ECBが声明文で使用している「an extended period (長期に渡り)」という表現を使い、お茶を濁すことが心配されていました。その場合、MPC内でカーニー総裁の立場が思ったより強くないという失望に変わる可能性がある ⇒ ポンド売り材料。

・物凄く細かい内容が盛り込まれたガイダンスとなった場合
カーニー総裁の説得が効果をあらわし、BOEもFRBのように具体的な条件付きのガイダンス (例:失業率がX% など) を導入することに決定された場合 ⇒ 内容にもよるが、とりあえずはMPCの団結性が好感されて、ポンド買い材料。

4)escape velocity

これはカーニー総裁が7月にBOE総裁に就任された直後に、英経済について発言した有名なフレーズです。

「economies needed to be allowed to reach an ‘escape velocity’ in which they were out of danger of slipping back into recession

リセッションに逆戻りしてしまう危険性を完全に取り除くためにも、英経済は‘不景気からの脱出速度を高める必要’がある」

このescape velocity という言葉は、カーニー名言集とでもいうべきほどの強烈な発言として、こちらでは何度も繰り返し報道されています。

もしMPCの残りの理事達がカーニー総裁の意見を取り入れるのであれば、ガイダンスの文言は「英金融政策は、(例)失業率がX%以下となり、英経済が不景気から完全に脱出できるだけの速度を高めたと判断されるまで、緩和政策を継続することになるであろう」という感じになるはずです。

5)フォワードガイダンスの条件は?

米FOMCでは、「失業率 6.5%」と「インフレ率 2.5%」 という具体的な数字を付随条件として明記しています。BOEがつけると思われる条件の候補は

  • 名目GDP値
  • 失業率
  • Spare capacity(生産余力)
  • インフレ率
  • 賃金上昇率

6)失業率6.5%を条件として選んだ場合

現在の英国失業率は7.8%となっており、6.5%達成時期予想としては、先週のタイムス紙日曜版では2017年、IMFと英予算責任局(OBR)は2018年となっていました。さすがにこれだけ長期に渡り、超低金利政策を継続した場合、インフレ率が思いっきり高くなってしまうため、現実的ではないという声が高いのも事実。

英国が失業率ターゲットを導入する場合、(6.5%ではなく)7%という数字を使うのではないか?という意見もありました。失業率ターゲット導入に後ろ向きなエコノミストの言い分としては、景気回復と失業率改善は、相関性が高いと思われがちだが、そうとも限らない。つまりGDPが改善したからといって、失業率も同じペースで改善する保証はどこにもないということであり、この考え方には一理あるな...と私も思っています。

フォワードガイダンス発表

8月7日、ロンドン時間午前10時30分、市場の関心を一手に集めた四半期インフレーション・レポートが発表され、同時に記者会見が始まりました。そこには、フォワードガイダンスの内容や記者団からの質疑応答に答えるカーニー総裁やビーン副総裁、デール主席エコノミスト、フィッシャー公開市場操作最高責任者など、お馴染みの顔が並んでいました。

そしてこの日は、英中銀の319年の歴史において大きな一歩を踏み出した記念すべき日になったことだけは間違いありません。

気になるフォワードガイダンスの内容ですが、要点を並べますと

  • 政策金利見通しに失業率を数値基準として適用
  • 具体的には、失業率が7%を越える水準にとどまる限り、金融引き締めの可能性は、ない。
  • 失業率が7%を越える水準にとどまる限り、資産買い入れプログラム(QE1,QE2)の縮小は、ない。
  • 現在の政策金利(0.5%)は、少なくとも今後3年程度(2016年後半頃まで)継続すると予想。

しかし、英中銀が導入したフォワードガイダンスは、これだけではないんです。カーニー総裁は、フォワードガイダンスに、過去に例がない【ノックアウト条件】を追加しました。この【ノックアウト条件】というものは、フォワードガイダンスを導入しているカナダ・アメリカ・ユーロ圏の中央銀行でも取り入れた前例がない、はじめての試みとなりました。この発表があった瞬間、記者会見場に詰め掛けた報道各社のエコノミスト達が、「え?今、なんて言いましたか?」という戸惑いの表情を見せたのが面白かったです。

私も記者会見のライブ中継を見ていましたが、【ノックアウト】というオプション取引で使う方式を金融政策に取り組むという発想自体、非常に斬新であり驚きました。たぶん、大学教授や学者あがりの中央銀行総裁には、絶対に真似が出来ない手法ですね。そういう方々は金融学や経済学には優れた学識をお持ちでも、生きたマーケットというものに手を染めた経験がありませんし、特にオプション取引など触ったこともないでしょうから、ノックアウトという発想自体ないはずです。

ノックアウト条件

セントラル短資FXさんのウェブサイトにある金融用語集・オプション欄にも載っている通り、ノックアウトというのは、設定された価格が達成されてしまった場合、既存のオプション取引が消滅してしまう条件付きオプションを指します。

つまり英中銀が設定したフォワードガイダンスは、以下の3つの条件のいずれかが破られた場合、失業率が7%を上回る水準であっても、金融引き締めの可能性が出てくることを意味しています。

ここで特に注意して頂きたい点は、これはオプション取引のように『ノックアウトがついたら、有無を言わさず、自動的に即刻、取引が消滅してしまう』ものではなく、あくまでも『金融引き締めの可能性が出てくる』だけであり、自動的に有無を言わさず利上げとなる訳ではないという点は覚えておいてください。つまりノックアウト条件のひとつでもトリガーされた場合、MPCの理事達が集まり、「果たして利上げの必要性があるのか、低金利政策を継続する方がよいのか?」を協議し、そこで改めて決定するようです。

それでは、気になるノックアウト条件を抜粋 外部リンク しますと

1) 
in the MPC’s view, it is more likely than not, that CPI inflation 18 to 24 months ahead will be 0.5 percentage points or more above the 2% target;
18〜24ヵ月後のインフレ見通しが、インフレ・ターゲットである2%より0.5%かそれ以上(2.5%以上)のレベルで推移すると、MPCが判断した時

2)
medium-term inflation expectations no longer remain sufficiently well anchored;
中期的なインフレ予想が難しく、判断しづらくなった場合
(英中銀のインフレ見通しは、常に18〜24ヶ月先を見通して立てられています。この場合、その期間のインフレ見通しが、例えばリーマンショックや金融システム崩壊などという特殊な理由で、予想が不可能となった時...という意味だと思います。)

3) 
the Financial Policy Committee (FPC) judges that the stance of monetary policy poses a significant threat to financial stability that cannot be contained by the substantial range of mitigating policy actions available to the FPC, the Financial Conduct Authority and the Prudential Regulation Authority in a way consistent with their objectives.
英中銀の低金利政策が、金融安定に多大なるリスクを及ぼすと判断した場合
(例えば、低金利を背景にとんでもない条件で企業や個人に貸し出しする金融機関が増え、クレジットの質の低下リスクが台頭し、英国だけでなく世界的な金融安定を脅かすような事態になった場合...という意味だと思います。)

具体的に、このノックアウト条件を使って、フォワードガイダンス制の適用を停止する場合の例を出しますと、「18〜24ヵ月後のインフレ率が2.5%を越えてしまうな...こりゃ...」とMPCが判断した場合、その時点で失業率が7%を上回っていたとしても、金融引き締めの可能性が浮上してくると考えてよいでしょう。

逆にこの3つのノックアウト条件がトリガーされない限り、現在の0.5%という政策金利は、2016年まで継続されると理解されています。

インフレーション・レポート内容

それでは、ここからは、8月分の四半期インフレーション・レポートの内容を見てみましょう。

GDP

最近発表される経済指標が強いことを受け、5月発表の前回のインフレ・レポート時よりGDP予想は改善されるに違いないという予想がコンセンサスとなっていました。結果は、その予想通り、上方修正となっています。当日の記者会見の席でも、記者団から早速 「‘escape velocity 不景気からの脱出速度’に到達したと思いますか?」という質問が飛び出しましたが、カーニー総裁の答えは、その期待に完全に水を差す内容となり、「まだまだ不十分だ。現在の景気回復の度合いは、過去100年以上のリセッションの中でも、一番力が弱いものとなっている。」と述べています。

このチャートはレポートの46ページ目に載っているものですが、2015年第3四半期のGDPが、どのくらいの数字になっているか?の予想比較です。これをみると、5月の予想(灰色の線)よりも、8月のもの(緑の部分)のほうが、GDPが強い方向へずれているのがわかります。具体的に数字で表しますと、以下のように変化しました。

注 : 最初の数字は8月レポートでのGDP予想、カッコ内の数字は5月レポートでの予想

インフレ率

チャート: 英中銀インフレ・レポート(2013年8月分)

インフレ率予想に関しては、GDPほどすっきりしておらず、微妙な雰囲気でした。

注 : 最初の数字は8月レポートでのGDP予想、カッコ内の数字は5月レポートでの予想

この数字をみるとわかりますが、中央値・平均値ともに、8月と5月の予想は全く同じになっています。しかし最初のグラフ(2015年第4四半期のインフレ率予想)では、5月レポートの灰色の枠よりも、8月レポートの赤い山が右側、つまりインフレ率が高くなる可能性がある方向へ、ずれているのがわかります。しかし、2015年第4四半期のインフレ率予想値(チャート上に青い矢印で示した灰色と赤い山、それぞれの頂上)は1.9%と2.0%となっており、ほとんど差がありません。

これに関しては、インフレ・レポートの47ページに
「英中銀金融政策理事会でも、将来のインフレ予想について、数々の違った見方が披露された。これだけ見方が違う理由としては、企業収益に対する期待度、為替レベルの予想の違い、商品価格見通しなどが分かれたからに他ならない。」と説明されていました。

まとめ

それでは最後に、ノックアウト条件付きのフォワードガイダンスを発表してから、マーケットではどのような動きがあったのか?それからみてみましょう。

金利先高感の台頭

低金利政策の長期化を意図するはずだったフォワードガイダンス発表を受け、実際の金利先物市場での反応は、「利上げ時期の前倒し予想が高まった」という皮肉な結果となっています。その最大の理由は、ノックアウト条件のひとつである「18〜24ヵ月後のインフレ見通しが、インフレ・ターゲットである2%より0.5%かそれ以上(2.5%以上)のレベルで推移すると、MPCが判断した時」というもの。

現在のインフレ率は+2.9%ですが、MPCは‘’18〜24ヶ月後の見通しとして、ターゲットの2%まで下がる‘’とみています。しかし金利先物市場ではそうは見ていません。木曜日のインフレ・レポート発表前の時点では『3年後に政策金利が上がる可能性』の織り込み度は75%でしたが、発表後はそれが90%まで上がりました。そして、『4年後までに、政策金利が現在の0.5%から1.0%まで上昇する(0.25%の利上げが2度起こる)可能性』の織り込み度は、レポート発表前は80%であったのに対し、発表後は100%織り込み済みへと変化しました。

この金利先高感の変化が、ポンドを押し上げ、株価の下落に結びついたのです。

フォワードガイダンスの【失業率】レベル

米FOMCでは、フォワードガイダンスの追加条件として「失業率 6.5%」というターゲットを挙げています。そのため、英中銀も米国同様、6.5%というレベルを使用するのではないか?と考えられていました。しかし、いざ蓋を開けたら、その数値は7%となっていました。

つまり、アメリカと比較して、英国の失業率ターゲットは、達成しやすいレベルを設定している ⇒ そうなると、最初の利上げのタイミングは、米国より英国の方が早いに違いない と市場は理解し、これがポンド買いに繋がったようです。

ただし、一部のエコノミストは、「景気の回復と失業率の改善が、必ずしも同じスピードですすむ訳ではないことを、忘れてはならない。例えば、労働市場の規制緩和が発表されると、一気に失業率は低下するであろうし、逆に雇用関連での増税が発表されれば、解雇数の増加に繋がる。米連銀は『最大限の雇用と物価安定』というデュアル・マンデート(2つの責務)を背負っているため、どうしても失業率ターゲットの設定は低めにならざるを得ないであろう。そう考えると、英中銀が7%を達成する時期が米国より早いという考え方は見直す必要があるかもしれない。」という意見を出していました。

インフレ見通し判断の発表は?

フォワードガイダンスのノックアウト条件の中に「18〜24ヵ月後のインフレ見通しが2.5%以上で推移すると判断された時」というものがありますが、この判断は毎月の金融政策理事会でなされるのか?それとも四半期インフレーション・レポート(3ヶ月に一度)のインフレ見通しでの発表となるのか?です。月一度開催される金融政策理事会(MPC)での判断となれば、発表当日に声明文を通して市場との対話が出来ます。でなければ、2週間後の議事録になるのかもしれません。しかしインフレ・レポート時となると、2・5・8・11月の年4回に限られてしまうので、かなり時差がありますよね。

インフレ・ターゲットの照準は?

英中銀の金融政策の目的は「物価安定の維持」であり、2%というインフレ・ターゲットを採用しています。そしてインフレ・ターゲットを使用することを通じて、金融政策の透明性向上を狙っています。具体的には、先行きのインフレ見通しが、ターゲットである2%から大きく外れそうな場合に、政策金利の変更を行うということです。

しかし、今回のフォワードガイダンスのノックアウト条件のひとつとして『18〜24ヵ月後のインフレ見通しが2.5%以上で推移すると判断された時』という内容が出てきたため、マーケット参加者である私達は、一体2%のターゲット達成に注意を払うべきなのか?2.5%以上行くか行かないか?に注意すべきなのか?わからなくなってしまいました。

この発表があった記者会見の席でも、やはり同様の疑問を持った記者の一人が、これに関して質問をしていましたが、カーニー総裁の答えは、「BOEは2%のインフレ・ターゲットを採用しているので、当然2%のターゲット達成が大事」という趣旨の発言をされていました。

理屈ではわかるのですが、実際にポジションを持ってマーケットで戦っている私達にしてみれば、中期的な見通しが2.5%を越えたら利上げの可能性が台頭するという目先の問題の方が、より重要になるに違いないと私は思っているのですが、果たして間違っているのでしょうか?

いろいろ書きましたが、この【ノックアウト条件付きのフォワードガイダンス】に関しては、不透明な部分もたくさんあるので、これからひとつひとつ自分なりに理解していこうと思っています。まだ新しい発見がありましたら、コラムで書かせてくださいね!

 

松崎美子

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