火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

前とは違うリスク

更新日:2017年3月28日

先週はFOMCや日銀金融政策決定会合を経て、G20財務大臣・中央銀行総裁会議などのビッグイベントをようやくこなしたことで、目先は材料不足になるのではないかとの認識が高まりましたが、その懸念も杞憂に終わり、再び「トランプリスク」といったところに注目が集まりました。

17-18日に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議は、大方の予想通りの結果。簡単にまとめれば、為替に関する文言は一言一句、前回の中国成都G20から変更はなく、為替レートに対して何ら問題提起されていないことが判明しました。そのかわり、米国の要請から前回盛り込まれた「我々はあらゆる形態の保護主義に対抗する」の文言が削除されたと同時に、「我々は、経済成長の追求にあたって、過度の世界的不均衡を縮小し、更なる包摂性及び公正を促進し、格差を削除するために努力する」という文言が付け加えられました。「自由貿易」から「貿易不均衡是正」へとテーマが移されたことになったわけですが、あくまでも「経済成長追求」のためという大義名分が与えられていて、表面的には「米国のため」というあからさまな「本質」からは目を逸らせようとする配慮がなされました。

ただ、市場は「どうにも反応のしようがない」のも事実。同時に行われた日米財務相会談でも「為替の急変は世界経済の安定に悪影響を与えるとの考えで一致した」ことが報じられましたが、そもそも「動きが止まってしまった為替市場」に注文をつけるわけもなかったというところです。

そんな手詰まり感の中で浮上してきたのが、米下院での「オバマケア代替法案」審議でした。トランプ政権の最初の目玉とされていた法案でしたが、身内の米共和党内部からも反対議員が続出。法案の可決には「26人が反対を表明していて、あと7票足りない」などの生々しい内情が明らかになるにつれて、市場では「トランプ米大統領のパーソナリティ」がもたらす当初の「リスク」ではなく、米国の政権運営といった政治リスクそのものである「トランプリスク」が急速に台頭。週末にかけては「リスクオフ」が意識されることになりました。

結局、どういう結末になったかと言えば、「可決出来ないことを前提としていない」、言い換えれば、「可決することが前提であった」オバマケア代替法案について、週末にいくら時間を費やしても、必要な得票数が望めないことをトランプ米大統領は確認。この重要法案を取り下げ、「採決」自体をしないといった結論に達しました。「ライアンケア」などと言われていたように、事実上の主導権を握っていたライアン米下院議長が、共和党内部の保守派を説得できずに断念。白旗を揚げてしまったことが取り下げの大きな理由でしたが、市場はこの報道をきっかけに、売られていたドル円を一気に買い戻す動きとなりました。市場では、「代替法案に傷をつけることなく延命措置をとった上で、税制改革などのその他の重要法案に取組むことが出来る」といった「ポジティブ」な見方からか、ショートカバーが加速。週末のNY市場引け際という特殊要因も重なり、結局は行って来いの値動きとなりました。ただ、週明けのアジア市場では、再びドル円を売り仕掛け。「トランプ政権に対する不安定要素が強まった」といった「ネガティブ」な側面を短期投機筋に改めて仕掛けられたというところです。この「第2次トランプリスク」が「Fake」になるのかどうかを少し慎重に見極める必要が出てきています。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は売られる展開となりました。週明けは東京市場が春分の日の祝日で休場となりましたが、米長期金利の低下につれて次第に上値を切り下げる動きとなりました。ダウ平均の下落も、売りを後押し。また、22日のNY市場では、オバマケア代替法案の議決に疑問符が付けられたことを受けて一気に売りが加速。法案に関する報道が錯綜する中、週末には一時110.628円まで売り込まれました。ただ、代替法案の米下院での議決がぎりぎりになって中止されると、週末のNY市場の引けにかけては、111円台前半まで買い戻されています。

今週のワタシの「注目通貨ペア!

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は神経質な動きが続きそうです。3月期末週とあって、実需勢のフローが中心とならざるをえないでしょう。市場では「ある程度の玉は出るだろうが、アマウントはあまり大きなものはないのでは」との声も聞かれていて、むしろ先週末から材料視されてきている、主要国の政治リスクなどに注意したいところです。特に米国では、週末に米下院がオバマケア代替案の法案を取り下げ、採決自体を中止する事態となりました。政策の行き詰まりとも、政策の柔軟的対応ともとれ、市場の見方は分かれています。目先は本邦実需勢のフローを睨みつつ、いずれにしても、株価や米長期金利の動向に左右されることになりそうです。下値では、27日安値の110.116円や節目の110.00円、または2016年11月18日の安値109.799円がサポートレベルとして意識されています。一方、2月7日の安値111.596円や一目均衡表転換線の111.83円が目先の目処として意識されています。