火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

落ち着かないままで

更新日:2017年8月22日

先週は本邦勢がお盆休みでほぼ不在となりましたが、市場に「年内利上げ見送り論」が台頭する中、週明けのNY市場ではダドリーNY連銀総裁が「経済が予想通り展開すれば、年内あと1回の利上げを支持する」との見解を表明。また、「9月にバランスシート縮小の開始時期を決定するという市場の見方は不合理ではない」と、少々回りくどい言い方ではありますが、「9月FOMCでの決定」を示唆しました。市場は当然のことながら米長期金利の上昇とドル買いという反応になりました。あくまでも、ダドリーNY連銀総裁が示したシナリオが「メインシナリオ」であって、少なくとも、現時点ではこのメインシナリオを崩す事態にはなっていないということを、市場に知らしめたといえます。10日にダウ平均と日経平均先物が大崩れしたことから、市場では「暴落シナリオ」も点灯していたようですが、やはり「カリアゲ君」ネタだけでは限界があったということかもしれません。

そして翌日の日本が終戦記念日の15日、北朝鮮では自動的に「戦勝記念日」となっていたわけですが、朝方から「グアム攻撃計画」の実施を巡って市場が警戒感を高める中、北朝鮮が「しばらく米国の出方の様子をみる」ことになると、ドル円で米短期筋の買い戻しが加速。NY市場でも、7月米小売売上高が前月比0.6%と市場予想の0.3%を大幅に上回る強い数字となったほか、自動車を除く数字も0.5%と予想の0.3%を大幅に上回る結果。また、同時に公表された8月米NY連銀製造業景気指数、いわゆる「エンパイア指数」も25.2と予想の10.1を上回る強い数字。さらに市場を驚かせたのが、6月分の小売売上高の数字が▲0.2%から0.3%に上方修正されたこと。「文句の付けようがない」数字を受けて、米10年債利回りは2.2816%まで上昇、ドル円も一時110.849円まで買い上げられることになりました。その後は110.395円まで下押し。引けにかけては再び110.708円まで買い戻されてNY市場を引けました。市場からは「数字の割には上げ方が控えめだった」との声も聞かれていますが、アジア時間の安値109.609円から考えれば、1円を超える大幅な上昇だったわけで、111.00円手前で頭を抑えられたとしても仕方なかったのかもしれません。

ただ、翌日からは再びリスクオフの動きが強まります。ようやく「カリアゲ君」との舌戦に勝利したかに思われたトランプ米大統領でしたが、政策など助言を求めるべく召集した諮問機関である「製造業評議会」と「戦略政策フォーラム」を解散してしまいました。製造業評議会のメンバーであったメルク、インテル、アンダーアーマー、3M、ユナイテッドテクノロジーズ、キャンベル、テスラなど、大企業のCEOがトランプ大統領の白人至上主義に反発して相次いで辞任。解散も時間の問題となると、トランプ大統領自らが口火を切ってしまいます。本来であれば、味方につけておかなければならないところを、「解散出来た。皆さんありがとう」なんて捨て台詞を吐くあたり、「相変わらず」の状態が続いています。コーンNEC(国家経済会議)委員長も「嫌悪感を覚えるとともに動揺している」とトランプ米大統領を痛烈に批判。そもそも、会議がまともに開かれていた形跡はなく、事実上機能不全状態であったわけで、解散したとしても実際の影響は全くないはずでしたが、市場ではハト派的なFOMC議事要旨(7月25-26日分)も加わって、市場参加者のマインドを完全に冷やしてしまったといえます。週末には「スティーブ・バノン首席戦略上級顧問が解任」との爆弾が市場に投じられると、逆にドル円やダウ平均が急騰することになったわけですが、市場はかなり困惑気味です。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は荒い値動きとなりました。週明けからダドリーNY連銀総裁の発言を受けて買いが先行。北朝鮮による「グアム攻撃」が中止となったほか、7月米小売売上高など強い米指標を受けて一時110.951円まで買い上げられたものの、トランプ米大統領が諮問機関を解散するなど、政権内部での対立が鮮明となると一転して売りが強まる展開に。コーンNEC委員長辞任の噂も売りを後押し。一時108.606円まで下落しました。週末には、バノン首席戦略上級顧問の解任が報じられると、一転して買い戻される動き。一時109.60円までショートカバーが進みました。

今週のワタシの「注目通貨ペア!」

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は底堅い動きを予想しています。本邦勢がお盆休暇から戻ってくることから、本邦実需勢のフローに左右されることになりますが、長期資金を中心にドル買い意欲は強くなっています。目先は先週末の安値108.606円で下値を確認したかたちとなっているほか、トランプ政権の内部対立の中心人物であったスティーブ・バノン首席戦略上級顧問が解任されたことを受けて、リスクオフの動きが巻き戻される可能性が高そうです。下値は先週末の安値108.606円がサポートレベルとして意識されている一方、上値は一目均衡表転換線の109.78円や16日の高値110.951円がレジスタンスレベルとなっています。また、今週は週末に予定されているイエレンFRB議長とドラギECB総裁のジャクソンホールでの講演に注目が集まります。