火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

トランプリスク再び

更新日:2017年5月23日

先週は再び「トランプリスク」に市場は振り回されることになりました。怪しい動きが出たのが、NY市場がクローズした直後の16日早朝、「トランプ米大統領はロシア側に米政府内でもアクセスが限定されている重大な機密情報を漏らした」との、いかにもなヘッドラインが流れました。しかし、「既にこの類のニュースは旬を過ぎている」とあって、反応も極めて限定的に終わると、市場は「日経平均の20,000円乗せ」といった目先のテーマへと興味を移していきました。ただ、日経平均が19,998.49円までで頭を抑えられると、一旦はその興味が失せることに。為替市場関係者からは「なんとも中途半端な情けない動きだ」との苦言を呈する向きが多い一方、株式市場関係者からは「リンク債絡みの防戦売りが先物で厚くなっている。ドル円がもう少し上げてくれれば20,000円も達成出来たのに」といった、こちらも「他人任せ」の声が多く聞こえ、「常にやる気のない東京市場」の典型的な動きが繰り返されてしまいました。

ところが、翌日の17日早朝、再び「トランプ米大統領が先日解任したコミー前FBI長官に対して、これまたロシアへの情報漏えい問題で辞任を余儀なくされたフリン前大統領補佐官の捜査を打ち切るように指示したメモの存在」が明るみになりました。市場では早速「トランプゲート」なる言葉が飛び交うことに。ダウ先物や日経平均先物、米長期金利が大幅に低下。ドル円も売り仕掛けられることになりました。市場は異様な雰囲気に包まれます。

アジア時間こそ、ドル円は112円台半ばから前半にかけて断続的に観測されていた本邦実需勢の買いや、チャート的に112円台前半に位置していた「一目均衡表雲上限」などが意識されたことで、神経質な動きが続きましたが、「張本人」のNY勢が参入すると同時に、一斉に「リスクオフ」の動きが加速。米民主党ばかりでなく、身内の米共和党からも非難の声が高まると、「トランプ米大統領弾劾の可能性」という、最近では「カリアゲ君リスク」に匹敵するような「トランプリスク」の再燃で、米長期金利は急激に低下。ダウ平均や日経平均先物も大幅な下落となると、ドル円は一時110.795円まで値を下げました。そして翌日の欧州市場では、一時110.238円まで売り込まれることになったわけです。

ただ、NY時間に入ると、5月3日に非公開で実施された米上院司法委員会での議会証言のビデオが明るみとなりました。時の人となっているコミー前FBI長官が、「ロシア疑惑を終了させる政治的な圧力を受けてはいない」と証言している様子が政治専門チャンネルの「C-SPAN」で放映され、市場で取り沙汰されると、一気にドルの買い戻しとなり、荒い動きにつながっていきました。具体的には、「I’m talking about a situation where we were told to stop something for a political reason, that would be a very big deal....... It’s not happened in my experience.」と発言しています。簡単に言えば、「捜査を政治的な理由でストップさせるなんていうことは一大事だ。私の経験上、一度もそんなことは起きていない」ということに。一部からは「ホワイトハウスやトランプ大統領などと特定していない」との声も当然出てきてはいるのですが、「政治的理由」とはっきりと言及していることも事実です。市場では、それぞれの立場においてその解釈を2分しているわけですが、そろそろ「トランプ政権とマスコミとの与太事」なんていう、しらけた反応も出始めています。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は売られる展開となりました。週初こそ一時113.852円まで値を上げる場面も見られましたが、その後は「コミーメモ」を巡るロシア疑惑が高まったことを受け、一転して売り込まれる動きとなりました。米長期金利の急低下も売りを後押し。18日には一時110.238円まで売り込まれました。ただ、その後は111.736円まで買い戻されるなど、下値も限定的に終わっています。

今週のワタシの「注目通貨ペア!

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は動きづらい展開を予想しています。チャート的にも一目均衡表雲の中に入り込んできており、目先はもみ合いが続きそうです。また、依然として「ロシアゲート」問題に対して不透明感が残るほか、24日深夜にはFOMC議事要旨(2-3日分)も公表されることから、それまでは神経質な動きとならざるをえません。6月FOMCでの利上げを織り込めることができるのかどうかがポイントとなりそうです。下値では、週明け早朝の安値110.847円が目先の目処として意識されている一方、一目均衡表転換線の112.30円がとりあえずの上値目処となっています。