火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

物足りなさゆえ

更新日:2017年7月18日

先週は、ドル円がチャート上で非常に重要視されていた5月11日の高値114.37円を上抜けたことで、11日のNY時間に入って一時114.495円まで買い上げられました。しかし、トランプ米大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏が「ロシア人弁護士との面談を仲介した人物とのメールを自らが公開する」という、いわゆる「ジュニアメール」をきっかけに、ポジション調整の動きが加速。130ドル近く下落したダウ平均がプラス圏を回復したものの、ブレイナードFRB理事の発言なども売りを後押しすると、一時113.72円まで値を下げることになりました。市場では「トランプジュニアのメールは、そもそも身の潔白を証明するために自らが公表したもの」であるがゆえに、改めて「ロシアゲート事件を囃したところで長続きしない」との声も聞かれていますが、如何せん「ドル円を買い上げていた矢先」のヘッドラインだったことから、利食い売りの格好の材料となったのは言うまでもありません。

親父の悪い癖を踏襲して「ツイッター」でぶちまけるあたり、トランプファミリーらしい振る舞いではありますが、親父とは似ても似つかない風貌の息子を「非常に明瞭なよくできた男だ」とツイートし返すあたり、滑稽さは否めません。先週末の最新の米世論調査の結果が歴史的な低支持率であったことにも、大きく影響したと言えます。

そして翌12日には、イエレンFRB議長の半期に一度の議会証言が米下院金融サービス委員会で行われました。23時からの予定でしたが、前もって21時30分にはFRBがその証言原稿を公表。ドル円は一時113.718円のNY時間高値をつけてから一気に売り込まれることになりました。「数年間は漸進的な追加利上げが必要」であるとの見解が示された一方、「金利は中立水準に達するまで大きく上昇する必要はない」との立場であることを表明。前回FOMC後の定例記者会見で「弱いインフレ市場は一時的に過ぎず、ノイズ」との強気の姿勢だったにもかかわらず、議会証言では「経済に対するインフレの反応が重要な不確実要因」であるとの見方を示すなど、その他の内容も全般ハト派的なものとなりました。実際の議会証言の場では、「バランスシートの縮小は年内の比較的早い時期に開始する」ことを再確認するに止まりました。

市場参加者からは「9月FOMCでバランスシート縮小を開始し、12月FOMCで追加利上げするというコンセンサスを変えるものではない」との声も聞かれてはいますが、「市場のドル円のポジションがかなりロングに傾いてしまっていた」ことから、「目先のポジション調整をするにはいい機会」だったのかもしれません。

イエレンFRB議長の発言には、「それほど変化があったとは思えない」のも事実ですが、市場が「勝手にタカ派的な内容を期待して、勝手に落胆した」のもまた事実です。「バランスシート正常化プログラムの開始決定が9月、追加利上げが12月」がほぼ既成事実化してしまっているがゆえに、市場は「それ以上の何か」が見えないと満足できない状況。逆に、「これまでと同じ」というイメージが、「物足りない」といった欲求不満の状態を生んでしまうという矛盾が、市場では生まれています。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は頭の重い動きとなりました。週明けから買いが先行。11日には一時114.495円とこれまでのレジスタンスレベルとして意識されていた5月11日の高値114.37円を上抜ける場面もみられましたが、その後はトランプ米大統領長男によるロシア絡みのメール公開をきっかけに売りが強まる展開に。ブレイナードFRB理事の講演やイエレンFRB議長の議会証言でのハト派的発言も売りを後押し。週末には6月米CPIや6月米小売売上高が市場予想を下回る弱い数字となると一時112.27円まで売り込まれています。

今週のワタシの「注目通貨ペア!」

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は神経質な動きを予想しています。下値では、3日の安値111.859円や200日移動平均線の111.79円がサポートレベルとして意識されています。上値では、一目均衡表転換線の113.38円や14日の高値113.575円がレジスタンスレベルとなりそうです。日銀金融政策決定会合が19-20日に予定されているほか、20日にはECB定例理事会が開催されます。各国の金融政策の方向性の違いが市場のテーマとなっている以上、市場は金利動向に敏感に反応することになりそうです。ドル円に対しては米10年債利回りの動向に注目が集まります。