火曜 和田仁志が斬る、相場のセンチメント 相場の今の"空気"を読み解く

方向性の違い

更新日:2017年3月21日

先週は14-15日に注目のFOMCが開催されましたが、結果は予想通りの0.25%の利上げとなりました。FF金利の誘導目標を0.75-1.00%に設定。市場が100%織り込んでいた利上げが決定されました。ただ、市場の反応はドル売り。FOMC声明文と同時に公表された「経済・金利見通し」における「ドットチャート」の中央値が、その形状を見ればかなり上方向にシフトしてはいたものの、前回12月から全く変更なく1.375%だったことを確認すると、ドル円は一気に売り浴びせられることになりました。米10年債利回りも10bpを超える急低下となったことも、売りを後押ししました。市場では「直前になって米系証券などが年4回利上げをはやすなど、かなり前のめりになっていた」状況の中、FOMCメンバー全員の中央値が、前回と同じく「年3回」の利上げを予想していたことを受けて、「短期ポジションの投げ」が出された形となりました。

ところで、市場の目先の反応は別として、今回のFOMCで明らかになったことは何か。一言で言えば、「金融政策正常化の本格的な開始」だったということになります。一見すると、インフレ見通しが若干上方修正されただけの、ほとんど変り映えしていない声明文のように見えますが、実はデュアルマンデートと言われる「雇用の最大化」と「インフレの安定化」といった目標がほぼ達成されたことを確認。

特に、「2%のインフレ」をほぼほぼ達成したことを受けて、今後はインフレの動向を「will rise」ではなく、「sustained(維持される)」の表現に変えてきました。また、注意深く監視していくインフレ目標を「symmetric(対称的)」と新たな言葉を使って説明しています。その意味するところは、「既に2%付近に届いていることで、今後は2%を境にした下振れにも上振れにも注意して監視していくこと」に他なりません。また、利上げのペースを「only gradual」から単に「gradual」にしているあたり、これまでいつになるのか分からなかった利上げを「年3回」という基本路線を最低限の回数としつつ、徐々に実施していくことがはっきりとしたわけです。

さらに、イエレンFRB議長の定例記者会見でも、「再投資の方針を協議し始めたが、結論には至らなかった」ことを表明。年3回という利上げペースにも言及するなど、「金融政策正常化」のこれからの道筋がはっきりとしてきたことだけは確かです。

昨年までのように利上げを「いつやるのかわからない」状況から、「やるといったらやる」という当たり前ではありますが、非常に難しい根本的な市場との信頼関係を築こうとしている姿勢を確認出来ただけでも、かなり意味のあるFOMCであったと言えます。市場の目先の反応だけを見ている限り、「そんな深い意味なんてない」とどうしても感じてしまうものですが、実際には「米金融政策のターニングポイント」と言ってもおかしくない重要なミーティングであったと言えます。

米国に続いて、日銀金融政策決定会合や英金融政策委員会(MPC)などが開催されましたが、一連の金融政策決定会合を終えて、かなり「金融政策の方向性の違い」がはっきりしてきました。一番強いメッセージを送ったのは紛れもなくFOMCですが、既に終わっているECBもどうやら「近い将来における利上げが議論のテーブルに上がってきている」ことは確か。そしてMPCも、とうとうタカ派から利上げが主張され始めました。残るは日銀ですが、こちらは「他国の金利が上がろうとも、金融緩和を進めていく」ことを確認。先進国で唯一「違う方向を向いている」ことを改めて確認しています。

前回の「注目通貨ペア!」の振り返り

先週の「注目通貨ペア!」

ドル円

先週のドル円は売られる展開となりました。FOMCを控えて金利引き上げ観測から買いが先行。14日には一時115.195円まで値を上げる場面も見られましたが、その後は米長期金利が低下したほか、WTI原油先物価格の急落を受けたクロス円の売りなどにつれて次第に上値を切り下げる展開となりました。FOMCでは「経済・金利見通し」でのドットチャートが前回から変更なしだったことが分かると、一気に売りが加速。週末にかけてはG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されるなか、米長期金利の低下につれて112.565円まで下押ししています。

今週のワタシの「注目通貨ペア!

今週の「注目通貨ペア!」

ドル円

今週のドル円は方向感のない動きを予想しています。3月期末を控えており、本邦実需勢を中心とした買いが断続的に出てくる一方、短期筋の売りなどで上下動きづらい展開となりそうです。下値では、2月27日の安値111.918円が目先の目処として意識されているほか、2月28日の安値111.691円がサポートレベルとなっています。上値では、一目均衡表雲下限の113.64円や一目均衡表転換線の113.98円がとりあえずの目処となっているほか、15日の高値114.885円や一目均衡表雲上限の115.13円がレジスタンスレベルとして意識されています。今週は目先材料不足のなか、21日のダドリー米NY連銀総裁、23日のイエレンFRB議長の講演内容に注目が集まりそうです。