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マーケットビュー

木曜 津田穣のG´Day! (グダイ!) 豪ドルレポート 豪州からホットな最新情報をお届け

Frau “Nein”(ミセス “ノー”)メルケル首相の変心?

更新日:2012年8月9日

豪ドルここまでのレビュー

この1週間(8/2〜8/9)のレンジ: 
 AUDUSD: 1.0436-1.0601 AUDYEN: 81.58-83.23

先週はECB理事会で追加緩和がなかったことから失望売りやリスク回避色が強まったが、金曜日に発表された米国の7月雇用統計(特に非農業部門就業者数が163千人増加)が強かったことから市場センチメントが大幅に改善し主要国の株式市場や商品相場は上昇した。 ユーロは先週金曜日に1.24近辺、97円台へとジャンプアップしたが、今週もギリシャ、スペイン、イタリアなどに関する不安材料はあるものの、ECBの金融政策に対する期待感は強く高値圏を維持している。

豪ドルは先週木曜日の安値1.04台前半、81円台半ばから金曜日には1.05台後半、83円近辺まで大幅上伸し、今週もRBA理事会における金利据え置きや、本日発表された7月豪州雇用統計の予想を上回る内容(就業者州+14千人―予想は+10千人、失業率5.2%―予想は5.3%)を受けて1.06台前半、83円台前半まで値を上げている。
ただ北半球の夏季休暇シーズンで市場活性度が低い上に、先週のFOMC、ECB、米雇用統計とビッグイベントをこなしてきて、次の動きを確かめるべくやや様子見気分の強い市場となっている。

豪ドル見通し

向う1週間の予想レンジ :
 AUDUSD:1.0400-1.0700  AUDYEN:81.50-84.50

向う半年の予想レンジ :
 AUDUSD :0.90-1.10  AUDYEN: 70.00-90.00

足元のセンチメント―― ブルセンチメントだが調整も
足元の予想――上値テストで上値確認後反落

全く私はヘボアナリストである。ドラギ総裁の言動不一致(「あらゆる行動を取る用意」という発言と、その後のECB理事会での不作為―政策据え置き)やEU政策当局への当てこすり発言「ECBは政府の代わりはできない」から今週はECBとEU当局との軋轢が強まり、ユーロは再び催促相場で下落と読んだ。

しかし驚いたことにFrau Nein(英語風に言えばミセス ノー)と時々その頑固さが揶揄されるメルケル首相まで“ECBの国債購入を支持する”と発言し、その影響もあってか“ECBへの期待感”がユーロをサポートする展開となっている。
9/12の独におけるESMの合憲性判断の判決までもう一揺れ、二揺れ来ると読んでいた小職などは全くの肩透かしを食らった訳であるが、やはり米国の強い7月雇用統計後のリスク選好の動きが相場の行方を決したようであり、欧州情勢も曲りなりに正常化への過程に差し掛かっているということなのであろうか。

話は変わるが当地では“卒業生代表内閣”―毎年卒業式が来てその年の総代が挨拶するように、毎年1回総理が変わるという意味―と称される日本の政局は相場に影響を与えないという歴史的事実があるが、それはさておき、10月は中国共産党大会でトップ交代が予定され、11月は米大統領選、12月は韓国大統領選など年末にかけて政治日程が立て込む。
人民元相場を巡る米中の鞘当など、正にオバマ政権、中国政府中枢共に自国経済立て直しを図る上で譲歩できない問題であり、経済がグローバル化した現在、やはり政治と経済は切り離せないということであろう。

現在メルケル首相の率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CDS)と自由民主党(FDP)の連立与党も支持率は40%程度と苦戦しており、地方選挙での与党敗退も目立つ。
しかしメルケル首相個人の支持率は他党の首相候補をいずれも50数パーセント対20数パーセントで大幅に上回る人気であり、このFrau Neinが首を縦に振れば意外と最難関と思われた独の譲歩も近いのかもしれない。

ただ欧州問題の解決は容易ではないだろう。第一に先週発表されたユーロ圏の6月失業率は過去最悪になるなど欧州とその他地域との経済ダイバージェンス(格差の広がり)は顕著で欧州のファンダメンタルズの悪さが目立っており、加えてギリシャの追加融資の必要性や、スペイン・イタリアの支援要請問題など依然不透明感が強く、中小格付け機関(DBRSなど)によるスペインやイタリアの格下げなど、欧州ソブリンリスクの拡散は止まっていないのが現状。相場は“期待感”でもっているが、各国政府の夏休み明けと共に訪れる“嵐の前の静けさ”なのかもしれない。

さて豪ドル。
下の<OZ NOW>でも触れたが、海外からの豪ドル投資意欲は強い反面、国内では依然として豪ドル高弊害論が後を絶たない。
この論議の行きつくところは結局、今後世界経済が回復し商品相場が持ち直して豪州の交易条件が改善すれば(RBAは約1年前に豪州の交易条件はピークアウトしたと言っている)現レベルでの豪ドル堅調も問題にはならないが、逆に世界経済後退から更に交易条件が悪化するにもかかわらず豪ドル高が進む場合には、大きな問題となりうるという、当たり前の結論に達する。
足元欧州情勢の再度の悪化がなければ豪ドルの大きな崩れは予想されないが、買いポジションもかなり溜まりつつあり、調整反落の可能性もあるだろう。

本日発表される中国の7月諸指標や明日発表予定のRBAの四半期金融政策報告が注目される。 因みに9月のRBAの利下げチャンスは37%と現在市場は見ており、今後12カ月後の予想キャッシュレートは2.75%と1か月前の2.25%から上がっている。
(依然としてかなり下を見ているのはやや驚き)

個人的には現在の欧州不安一服感がこのまま継続するとは思えない。また来週以降月末までに発表される米国の各種指標(7月小売売上、鉱工業生産、住宅着工、NY連銀景気指数、フィリーズ指数、ミシガン大学消費者態度指数など)が9月のFOMC(9/12-13)に及ぼす影響がポイントとなるが、先週の雇用統計に続いてそこそこ堅調な数字となり、米高欧低の格差が更に拡大するように思う。

Joe式豪ドル週替わりindex

独自の手法で10項目について豪ドル相場にとっての好悪インパクトをそれぞれ最弱評価から最強評価まで「-10―+10」でランク付けし、現状を総合判断したもの。したがって総合indexは理論的には最弱-100で最強+100となる。Indexが大きくプラス、マイナスに傾いている時がチャンス。
現状分析であり、今後を予測する機能はあまりないが、ポジション造成や閉じる際の参考にはなる。

 

ポイント

今回
index

前回
index

ファンダメンタルズ

良い(強い)
・7月雇用統計失業率5.2%(予想5.3%、前回5.2%)、就業者数-14千人(予想+10千人、前回-28.3千人)(8/9)
・6月住宅融資+1.3%(前回-1.2%)(8/8)

・6月小売売上高+1.0%(予想+0.7%、前回+0.8%)(8/2)
・6月貿易収支+9mio(予想-375mio、前回-313mio)(8/2)
・6月住宅建設許可件数-2.5%(予想-15.0%、前回+27.0%)(7/31)
・Q2PPI 前期比+0.5%(+0.3%、-0.3%)、前年比+1.1%(予想+1.0%、前回+1.4%)(7/23)
・7月WESTPAC消費者信頼感指数99.1(前回95.6)(7/11)

悪い(弱い)
・7月ANZ 求人広告-0.8%(前回-1.1)4か月連続下落(8/6)
・TD Securities 7月インフレ率+0.2%(前回-0.2%)、3カ月ぶりの上昇だが前年比では+1.5%(前回+1.6%で数年ぶりの低さ)(8/6)

・豪州Q2CPI前年比+1.2%(予想+1.3%、前回+1.6%)、前期比+0.5%(予想+0.6%、前回+0.1%)、アンダーライイングCPI前期比+0.6%(前回+0.35%)、前年比+1.95%(前回+2.15%)(7/25)―予想よりやや弱め
・NAB第二四半期企業信頼感-2(前回-1)、景況感-1(+3)(7/19)

+4

+3

市場センチメント
(リスク値)

欧州不安一服だがイベント通過で様子見気分。夏季休暇気分も。
NYダウ引けは前日比+7ドルの13,175ドル、本日オフショアでは+20 ドル、VIX恐怖指は-0.67の15.32、 センチメントは全体としてやや改善。

+2

+2

市場ポジション

シカゴIMMの豪ドルポジションは37,235買いコントラクトに増える(7/31)。短期筋のポジションはロングやや増える。

-3

-2

商品相場

原油は93ドル台に上昇、金は1616ドルに小反発、昨日CRBは+0.45の304.32。

+2

+2

金利・為替(当局)

8月は金利据え置きでしばらく様子見か?(RBA金融政策は依然適切)(8/7)、(8/10発表のRBA四半期金融政策報告に注目)。McKibbinなど、元RBA理事から豪ドル過大評価論も、スティーブンス総裁やや強気の景気見通し(7/24)、ロウ副総裁「豪ドルの過大評価を主張するのは難しい」(7/12)、危機の影響がなければ金利は1.5%高かった(7/11)」。米豪10年利回り格差1.68%に拡大。

+3

+3

需給

日本の外貨投信減少。中銀の豪ドル債購入意欲。欧州情勢悪化、中国の景気スローダウンなら資源輸出減!原料炭はトン当たり217ドルに下落(7/16)、鉄鉱石もトン当たり118ドルまで下落(7/30)しているが、中国のインフレ投資期待ある。中国など海外からの直接投資、M&Aに絡む豪ドル買い需要の話。
下がったところではアジア・ロシア・独など欧州中銀の豪ドル債買い観測(外貨準備運用として)。

+3

+2

テクニカル

一目均衡表の雲(0.9955-1.0132、78.42-80.56)やボリンジャーバンド(1.0225-1.0642、80.16-83.56)は上昇。短期移動平均線も上昇。長期戦は下降から横ばいに。先週金曜日の「長大陽線」の後小さい極線が並ぶが、再び「上値遊び」で上昇か?あるいは先週の「ツタイ=陰線」に金曜日の長大陽線は一種の「化け線」であり天井暗示か?RSIは豪ドルドル69.03%、豪ドル円62.09%とoverboughtやや増える。

-2

-2

米ドル強弱

ドドルインデックスは82.29に反落だが中期的に底値確認か。

-2

-3

中国関連

預金準備率引き下げ観測、7月製造業PMIは50.1(予想50.5、前回50.2)で8カ月最低、3カ月連続下落で依然弱い。7月HSBC製造業PMIは49.5(前回48.2で5ms high)(7/24)、Q2GDPは+7.6%(予想+7.7%、前回+8.1%)でやや弱め(7/13)。6月貿易収支は予想を上回るが輸入の伸び鈍化。6月CPIは+2.2%で弱め。6月(3年ぶり)に続いて利下げ(7/5預金金利3.0%、貸出基準金利6.0%)、温首相「予想より下方圧力強い」、「大規模な景気刺激を導入するつもりない」(5/29)、内需拡大策発表、(5/20)預金準備率を20.5%→20.0%に引き下げ(5/12)。人民元変動幅を4/16から0.5%→1.0%に拡大。温首相2012年GDP目標を7.5%に下方修正。本日上海総合指数は-5pts。

-3

-3

その他(政治、産業界など)

(豪州国内)豪州産業グループ(AIG)CEOはRBAによる豪ドル高阻止を希望(8/7)、7/1より炭素税導入開始で評判悪い、豪ドル/人民元直接交換案は朗報、豪ドル下落は産業界好感、資源産業/非資源産業格差問題、2012/13年財政黒字転への反発強い。IMFは資源ブームけん引による豪州の輸出は減速見通し。
(7/26〜7/28世論調査(二党間)労働党支持率44%(前回42%)、野党保守連合56%(前回58%)、豪ドル高から鉱山ロイヤルティー(米ドル建)が大幅目減りも。

-2

-2

総合index(現状)

やや買いバイアス

+2

-2

【豪ドル/ドル チャート】

※チャートはクリックで拡大できます

【豪ドル/円 チャート】

※チャートはクリックで拡大できます

OZ NOW

ここに来て豪ドル過大評価論議

豪ドルは今年ここまで5月、6月のパリティー以下を除けば概ね堅調で1.02以上を維持し、特に8月になってからは一時1.06台、83円台と堅調推移しているが、ここに来て元RBA関係者や産業界からの“豪ドル過大評価発言”が相次ぐ。

1995年〜2000年にRBA理事を務めたエドリアン・パガンは「豪ドルのファンダメンタル・バリューを知るのは困難であるが、現在豪ドルが過大評価されているのは明らかであり、パリティー以下が適切である。前回RBAが介入したのは豪ドルが大幅下落した時であり、現在の乖離率はそれほど大きくはないが、今後更に上昇が続くようであれば介入を考えるべき」と言う。

これに先立ち前RBA理事のワービック・マキビンもRBAは豪ドルの価値を下げるべきであるとファイナンシャル・レビュー紙で述べている。
またAustralian Industry Group(AIG)のCEOであるアイネス・ウイロックスは「RBAは豪ドルのレベルを注意深く見ている。RBAは通貨がファンダメンタルズを逸脱する場合、市場介入でそれを是正する強力なパワーを有する」と言っている。
豪州労働組合(AWU)のnational secretaryであるポール・ハウズは「投機で野放図に高まった豪ドル価値は豪州製造業を死に追いやっている。低インフレは大事だが同様に輸出産業や雇用も重要である」と言う。
建設・森林・鉱業・エネルギー組合のnational secretaryマイケル・オコンネルは「RBAは国内製造業より海外中銀に利益を提供している」と避難する。

このように豪ドル高けん制圧力は強いがRBAの介入も簡単ではないようだ。
実際先日もスイス中銀(SNB)が外貨準備の豪ドルへの分散投資を表明しているが、特にSNBはEUR/CHFのフロア1.2000維持のために毎日CHF2bioを売っていると言われており、その対価として巨額のEUR建て外貨準備が溜まり、欧州危機から安全資産への分散投資を行う上で豪ドル資産が恰好のターゲットとなっている。

このように豪ドル資産(主にCommonwealth Government Bond)に興味を示す中銀は多く、かねてから言われるロシア中銀や独連銀以外にもSNB、チェコ、ベトナム、カザフスタンなどの中銀の豪ドル買いが報道されており、むしろ豪ドルに興味がない中銀を探すのが難しい状況。

またグーグルやマイクロソフトやアップルといった巨大事業法人が約半年ほど前から豪州債券購入を始めているとういう報道も当地では聞かれるが、これら豪ドル投資を投機と断定することはできないだろう。

このように各国中銀の信頼を得ている豪ドルであり、豪州も中国に対して人民元の完全自由化を提唱している手前もあり、金融当局も簡単に現レベルで介入に出ることは困難であろう。
次期RBA総裁と目されるフィリップ・ロウ副総裁は「豪ドルがファンダメンタルズに照らして、過大評価と結論付けるのは困難」と発言している。

ただ同時に今後豪州の交易条件が更に悪化するにもかかわらず豪ドルが更に上昇する場合には当局対応も異なってくるとの見方が一般的である。
また財政黒字が再び定着すれば金利押し上げ要因が減少し、加えて財政黒字分の海外投資が豪ドルレートを押し下げるとの見方もあることは確かである。

 

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