木曜 津田穣のG´Day! (グダイ!) 豪ドルレポート 豪州からホットな最新情報をお届け

各通貨共にポジションの大きな偏りなし

更新日:2017年6月22日

マーケットの焦点

週末に仏国民議会選挙の第2回投票が行われ、マクロン氏の新党“共和国前進”が過半数を確保した。独でもメルケル首相のCDU/CSUの優勢が明らかで、欧州政局は落ち着きつつあり、今週のユーロは堅調かと考えたが、1.11台でやや軟調。また、一昨日始まった英国とEUとの離脱交渉も、懸念されていたよりは順調なスタートを切ったようで、ポンドも上昇かと思ったが、英国中銀当局者発言で下落。全般的には今週はユーロやポンドなど欧州通貨安がドルの反発をリードしているのはやや驚きだ。

チャート(日足)を見れば、売られ過ぎ・買われ過ぎを示すRSIはドル/円54%、ユーロ/ドル50%、ユーロ/円55%、ポンド/円46%、豪ドル/ドル54%、豪ドル/円58%など、均衡点の50%に近いことがわかる。ポンド/ドルだけはさすがに38%と、依然売られ過ぎ状態だ。

今年もトランプ政権誕生、仏総選挙、仏や英国のテロ事件、北朝鮮のミサイル実験など色々あったが、年前半を終わるにあたり、主要国通貨も、そこそこ座りの良いレベルに落ち着きつつあるということだ。ここから年後半の動きを展望することになる(次週にまとめたい)。

欧州の政局安定化も既に市場では織り込み済で、むしろユーロが軟調なのは、Brexit交渉が良いスタートを切り、ユーロ/ポンドで調整のユーロ売り戻しが入っていたこととギリシャ問題だ。ショイブレ独財務相は与党CDU/CSUに対してギリシャ支援を改めて呼びかけたとの報道があった。またギリシャの政府報道官は「内閣改造をする理由はない」と昨日述べているが、この発言自体、国内政局の混迷をうかがわせる。つまり潜在的なギリシャ不安も依然としてユーロ安材料となる。

一方、ポンドはユーロ/ポンドの巻き戻しにも関わらず、一昨日カーニー英国中銀総裁が「インフレ圧力は抑制されており、利上げをする時ではない」と発言し、最近高まっていた利上げ観測が払しょくされたため下落。しかし、昨日は逆にホールデン政策委員の「年後半には緩和の一部解除が望ましい」との発言で反発。

Brexit交渉については、過半数を失い、テロや火災事故で難局にあるメイ政権へのEUの同情票も集まるのではないだろうか。欧州政局不安やBrexit交渉の即決裂などの悪材料が軽減したにもかかわらず、その他材料でユーロやポンドが売られるという、いつものこととは言え、厄介な相場展開が続く。

ドル/円については、かかる欧州通貨主導のドル高に加え、NYダウをはじめ主要国の株価が史上最高値圏に上昇し、市場のリスク許容度が増加していること、日本の5月の貿易収支が今年1月以来の赤字になったことの他、度重なる学園経営に関する疑惑や原油価格の動向が気になるところ。昨日は原油の続落(一時42ドル割れ)が、NY市場後半でドル/円を押し下げており、今後も原油の軟調が続けば、再び日本の貿易収支黒字化を促進するため、上値を重くする材料として注視したい。

先週のFOMC以降、堅調が継続している。今週は連日FRB当局者の講演や議会証言が相次いでおり、タカ派、ハト派両方の意見が聞かれるが、特にダドリーNY連銀総裁(ハト派、投票権有)の発言「まだ十分に金融環境を引き締めていない」が“更なる引き締めに前向き”と解釈されるなど、FRBの慎重姿勢が相当市場に浸透しているのか、市場がFRBのタカ派的意見に敏感に反応しがちである点は注目すべきだ。

FOMCは合議制とはいうものの、FOMCが終わるや否や、タカ派・ハト派入り乱れて百家争鳴となるのは毎度のことである。むしろ頭が混乱するばかりで、“市場との対話”はイエレン議長経由で十分だと思うのだが。

混乱と言えば、ムニューシン財務長官も今週「強いドルはトランプ政権への信認」と発言して信認低下中の大統領をサポートする一方、「強いドルは輸出などで不利な面も」と本音をのぞかせ、市場を混乱させている。減税策、インフラ投資、外資導入や不均衡貿易是正などのドル高効果を生む政策を取る一方で、ドル高是正を叫ぶトランプ政策のご都合主義も、市場を混乱させる。

もっとも、トランプ政権に打撃となる可能性もあるロシアゲート問題は、依然として連日のように国家情報関係者の証言などが続いており、結果次第ではトランプ政権への信認、つまりドルの信認を損なうことは言うまでもない。

ただ、昨日のジョージア州下院補欠選挙における共和党の辛勝を見るにつけ、やはり米国民は既成の政治家エスタブリッシュメントから国民の手に(一般人の大統領選出)政治を取り戻したとの自負があり、決定的な違法(国家反逆罪など)の事実が挙がらない限り、トランプ大統領は支持率低迷ながらも生き延びるのではないか、と最近思っている。

豪ドル相場見通し――足元やや軟調だが、売り買い交錯で揉み合い

向こう一週間の予想レンジ:

  • 豪ドル/ドル:0.7450-0.7650
  • 豪ドル/円:82.00-85.00

1) 概況

先週発表された非常に強い5月雇用統計の後、対ドルで高値76セント台前半、対円で85円台前半まで一時続伸した豪ドルであったが、さすがに商品相場の続落(原油は42ドル台)やムーディーズによる豪銀格下げの報を受け、75セント台半ば、84円割れまで反落している。
原油価格はOPEC/非OPECの減産合意にもかかわらず、依然として需給バランスの悪化懸念が聞かれる。カタールに対する周辺国の国交断絶によりカタールが増産に走るとの見方もあり、一部には30ドルを再び割り込む可能性を指摘するアナリストもいる。
ただ豪ドルの押し目買いを推奨する豪銀もあるのは、商品相場の軟調もいずれ底入れと読み、またドル高が一過性であるとの見方が多いためであろう。足元は74-76セント台、83円-85円台を中心とした相場展開が続きそうだ。

2) 発表された注目の経済指標

  • 5月熟練工求人前月比+1.2%(前回+0.9%)(6/21)
  • 5月WESTPAC Leading Index 0.0%(前回▲0.1%)(6/21)
  • 5月新車販売前月比+2.9%(前回+0.6%)、前年比+4.9%(+0.1%)(6/19)

3) RBAの金融政策

今週発表された6月のRBA理事会議事録からは、引き続きRBAのニュートラルスタンスが読み取れた。RBAは引き続き、現在の景気の減速は一時的ととらえ、向こう1、2年経済成長は3%に達すると見ている。今後の金融政策に対する市場の見方は、今年は金利据え置きであり、来年6月までの利上げ織り込み度は28%であるのに対し、利下げ織り込み度も1.5%ながら存在するという状況だ。またRBAは最近の失業率改善にもかかわらず、賃金上昇率の低さを懸念している一方、インフレ予想については、来年にはターゲットである2-3%内に上昇してくると楽観視している。

4) 商品相場

商品相場(CRB INDEX)は先週木曜日の174.46から昨日は169.09に下落。原油(WTI)はガソリン需要の減少予想から一時42ドル割れに続落。鉄鉱石価格は54ドル台に小反発し、石炭(燃料炭、New Castle積み出し価格)は80ドル台で小康。

5) テクニカル分析

(長期トレンド)
豪ドル/ドルは2013年5月にパリティー(1AUD=1USD)を割って以来下降トレンドとなり、2015-2016年の70セント割れで底入れ。現在なだらかな上昇トレンドを築きつつある。
豪ドル/円は2014年11月に102円台を付けた後下落トレンドとなり、昨年6月に72円台を付けて底入れしたが、88円で頭打ち。

(足元)
豪ドル/ドル、豪ドル/円ともに一目均衡表の雲の上限を上抜けして雲の上に上伸した後、ボリンジャーバンドの上限から反落。「新値八手の利食い時」でRSIも一時70%近辺までやや上伸し過ぎた感じ。ボリンジャーバンドも広がり、上昇エネルギーを放出した感がある。RSI は豪ドル/ドルは54.37 %、豪ドル/円は55.81%でoverboughtがかなり解消。

【豪ドル/ドル チャート】

【豪ドル/円 チャート】

今週の豪ドル関連情報

  • ① 豪銀格下げ
  • ② RBA議事録からうかがえるRBAの政策スタンス

① 豪銀格下げ

今週月曜日にムーディーズは豪州の4大銀行並びに中小銀行(Bendigo、Adelaide Bank、ME Bank、Credit Union Australia)の長期債格付を、Aa2からAa3に格下げした(短期債格付は据え置き)。また見通しを従来のNegativeからStableに変更した。格下げ理由として、住宅価格の高騰、家計債務の増加、賃金の伸び悩みとしている。
最近 S&Pは中小銀行の格下げを行ったが、4大銀行については据え置きとしていた。今回の格下げにより、銀行の資金調達コストは若干増加する可能性があるが、4大銀行共に大幅悪化は予想していない。ムーディーズは豪銀が住宅融資基準を見直して、バランスシートの改善を進めるべきとしているが、この作業は一朝一夕にできるものではない。今年5月の連邦予算案後、格付各社は豪州格付を据え置きとしたが、住宅バブルの崩壊など最悪のケースとなれば、ソブリン格付にも影響を及ぼす可能性は否定できない。

② RBA議事録からうかがえるRBAの政策スタンス

過去1年商品相場の上昇が国家収入の増加に寄与してきたが、最近鉄鉱石と石炭価格が昨年Q3の水準に反落しており、昨年年央より改善してきた交易条件は、向こう1、2年再び悪化する可能性を懸念している。
また住宅価格の上昇については、最近シドニーとメルボルン地区のオークション成立率に陰りが見られるが、依然として両地域の価格上昇圧力は強い。一方、パースとブリスベンという2大資源州都市の価格上昇力は極めて弱く、各地の価格偏在が著しいと分析している。
また、豪州と経済的に関わりの深い中国経済については、政府のインフラ支出と住宅投資により底堅い、と意外と楽観的に見ているが、中国経済が更にサービス産業に傾斜するのであれば、中国経済は成熟の域に向かうと分析している。