木曜 津田穣のG´Day! (グダイ!) 豪ドルレポート 豪州からホットな最新情報をお届け

再びドル安に

更新日:2017年5月18日

マーケットの焦点

仏大統領選挙の結果や米国の6月利上げ観測で上昇したドルが再び軟調地合となってきた。
ドル/円は5月上旬以来の110円台半ばに下落し、ユーロ/ドルは昨年11月以来の1.11台に、ポンド/ドルは昨年9月以来の1.29台に上昇している。

足元のドル軟調を予想し、理由の一つとして長引く欧州政治不安によるリスク回避を挙げたが、むしろ仏大統領選の結果、政治不安が後退して、欧州通貨高がドル安をもたらすという予想外の展開に。
ただ、もう一つのドル安理由、「トランプ政権への不信感」は当たっており、もう一つのシナリオである“政治の混乱が今後FRBの利上げを遅らせる”との読みが当たるかどうか。
欧州通貨の上昇は相対通貨ドルの軟調となるが、直近のドル下落はトランプスキャンダルが原因だ。毎度お騒がせのトランプ大統領だが、今回は同大統領がロシアのラブロフ外相に機密情報を漏洩した疑惑(ワシントンポスト)や、コミー前FBI長官在任中に解任されたフリン前補佐官の調査中止を依頼した疑い(ニューヨークタイムズ)が報道されるなど、メディアの逆襲を受けている形だ。ロシアはトランプ大統領の機密漏洩や米大統領選への介入を否定するが、これ以上国際的信任を失わないためにも当然の反応だろう。

かかるスキャンダルはトランプ政策、つまり減税策や規制緩和策の実施を遅らせ、FRBの金融政策や米経済にも影響を及ぼす。
民主党議員の中には弾劾を要求する議員もおり、トランプ政権存続の危機とまで言われている。昨年来の二大ニュースがBrexitとトランプ政権の誕生であるから、トランプ失政とでもなれば、市場に大きな影響を与えるだろう。CNNニュースなどは終日トランプスキャンダルを取り上げているが、識者の中には早くも1972年のウォーターゲート事件で過去の大統領の中で唯一任期中に辞任したニクソン大統領を引き合いに出す者もいる。
更には、以前より指摘しているが、FRBの利上げが今後加速しドルを押し上げるというシナリオが描きにくい。そもそも今回の引き締めサイクルでは、2015年末、昨年末、今年3月と、3回の利上げとなったが、過去3回(1994年、1999年、2004年)の利上げサイクルを振り返っても最初の2年でたった2回の利上げなど前例がなく、米経済のみならず国際情勢が積極的な利上げを許容できない環境というべきだ。今後FRBが利上げを急加速すれば、米国のみならず、むしろ新興国をはじめ世界経済に悪影響を与えることは間違いのないところだ。FRBとしては、米国のみの利上げ独走ではなく、(日本は無理にしても)欧州経済のキャッチアップや欧州政局安定化を待ちつつ、その他主要国との協調利上げを目指しているのではないだろうか。

尚5月下旬のイタリアサミットに続いて6月はECB、FOMC、日銀会合以外にも英国総選挙、仏国民議会選挙などイベント目白押しであるが、欧州の政治不安が後退すればECBは6月にも出口戦略を示唆するとの思惑がある。
ECBは2014年6月にマイナス金利を導入し、日銀は2016年1月にマイナス金利を決定した。本日発表の日本のQ1GDPも予想を上回る+2.2%で5期連続の成長が確認された。個人的にはECBより先に日銀が悪評のマイナス金利を解除する可能性があると考えているが、市場は解除を歓待するよりは、“株安・円高”で反応するように思う。

豪ドル相場見通し――ブル・ベアミックス(対ドル堅調、対円軟調)

向こう一週間の予想レンジ:

  • 豪ドル/ドル:0.7350-0.7550
  • 豪ドル/円:81.00-84.00

1) 概況

豪ドルはまだ下値不安がなくなった訳ではないが、原油の急反発とドル安にサポートされて堅調推移し、本日の予想を上回る4月雇用統計を受けて対ドルでは74セント台半ばに上昇。対円では84円台半ばまで反発したが、ドル/円の急落を受けて82円台前半まで反落した。
豪ドルは原油をはじめとした商品相場が下げ止まり、ドル軟調地合が継続すれば年初の安値71セントを見ることなく、73-74セントレベルで底入れする可能性が出てきた。豪ドル/円はリスク回避とその巻き戻しの影響を受けるため、足元豪ドルは対ドルと対円で異なったセンチメントとなろう。

2) 注目の経済指標

  • 4月雇用統計
    失業率5.7%(予想5.9%、前回5.9%)
    新規雇用者数+37.4千人(予想+5.0千人、前回+60.0千人→+60.9千人)(5/18)
  • Q1 賃金コスト指数
    前期比+0.5%(予想+0.5%、前回+0.5%→+0.4%)
    前年比+1.9%(予想+1.9%、前回+1.9%)(5/17)
  • 5月WESTPAC消費者信頼感 98.0(前回99.0)前月比▲1.1%(前回▲0.7%)(5/17)
  • 3月住宅融資残高、前月比▲0.5%(予想0.0%) 投資目的+0.8%(前回▲5.9%)(5/15)

3) RBAの金融政策

今週発表された5月のRBA議事録では来年初にかけてインフレ率が上昇することに自信を示す一方、高水準の家計負債や軟調な労働市場に懸念を示したが、これは従来からのスタンスを踏襲して新味に欠けた。「豪ドル高が経済の調整を複雑にする可能性」文言も継続しているが、ロウRBA総裁の頭には“米ドル大幅下落による豪ドル急騰”があるのだろう。ただ対ドルで75セントを下回る現レベルに大きな懸念はなく、加えて財政赤字削減を前面に打ち出す政府の政策要求もあり、当面は現行の金融政策を維持するだろう。

4) 商品相場

商品相場(CRB INDEX)は先週木曜日の182.03から昨日は184.88に小幅上昇した。原油(WTI)は、“サウジアラビアとロシアが7月に期限がくる減産期限の9か月延長で合意”との報道で49ドル台後半に急伸。その後懐疑的な見方もあり48ドル台前半に反落したが、昨日は米原油在庫の減少を受けて再び49ドル台を回復している。
鉄鉱石価格は60ドル台に小幅反発。一方、石炭価格(燃料炭、New Castle積み出し)は73ドル台で小康。

5) テクニカル分析

(長期トレンド)
豪ドル/ドルは2013年5月にパリティー(1AUD=1USD)を割って以来下降トレンドとなり、2015-2016年の70セント割れで底入れ。現在なだらかな上昇トレンドを築きつつある。
豪ドル/円は2014年11月に102円台を付けた後下落トレンドとなり、昨年6月に72円台を付けて底入れしたが、88円で頭打ち。

(足元)
豪ドル/ドルは一目均衡表の雲の下だがボリンジャーバンドの中ほどに反発。一方、豪ドル/円は上昇して雲に一旦入ったが、再び雲の下に反落。ボリンジャーバンドの下限に反落と両ペアは相変わらず顔の違うチャートとなっている。短期移動平均線は豪ドル/ドルが下落し、豪ドル/円は上昇。豪ドル/ドルは75セントのサポートラインを完全に下抜き、下値ターゲットは年初の71セント台だが、73セント台のサポートが強かった。豪ドル/円は結局4月下旬の81-83円のギャップを1ヵ月近くかけて埋めに来たことになる。RSI は豪ドル/ドルは 42.59%、豪ドル/円は37.42%で豪ドル/円のoversoldが増え出した。

【豪ドル/ドル チャート】

【豪ドル/円 チャート】

今週の豪ドル関連情報

  • ① 連邦予算案後のターンブル政権の支持率はやや上昇
  • ② 5月消費者信頼感は低下

① 連邦予算案後のターンブル政権の支持率はやや上昇

FAIRFAX-IPSOSが連邦予算発表後の5月10-13日に実施した政党支持の世論調査、(( )は3月実施時からの増減)によると、2党間では保守連合がやや盛り返した。

  • 2党間支持率:保守連合47%(+2%)、労働党53%(▲2%)
  • 各党支持率:
     保守連合37%(+4%)
     労働党35%(+1%)
     緑の党13%(▲3%)
     ONE NATION2%(変わらず)
  • ターンブル首相支持率45%(+4%)、不支持率 44%(▲4%)
    ショートン党首支持率42%(+7%)、不支持率47%(▲6%)。

また予算に対して満足と答えた人が44%、不満足が50%という結果になった。来年度予算では来年度以降の赤字の漸減と2020/21年度での均衡予算を掲げて格付各社の格下げを回避した形だが、内容的には公的医療保険メディケア税の増税、大手銀行に対する銀行税の導入、インフラ整備の強化、失業手当受給者に対するドラッグテストの義務化があり、豪銀の反発や国民の不満の声が聞かれる。

② 5月消費者信頼感は低下

昨日発表された5月WESTPAC消費者信頼感は98.0(前回99.0)、前月比▲1.1%(前回▲0.7%)と2か月連続の低下となり、5か月連続で長期平均の101.2を割り込む結果となった。
5月の数字は連邦予算案発表後であり毎年注目されるが、今回の予算案で、今後暮らしが良くなると感じる人は7%のみで、暮らしが苦しくなると感じる人が33%であった。
予算案では教育手当の増加とインフラ投資の活発化が評価されたが、これは公的医療保険メディケア税の増税により打ち消される結果となった。また新設される銀行税は、結局住宅融資金利の引き上げや、銀行株の配当引き下げにより一般消費者に転嫁されるとの見方が、消費者信頼感を悪化させた。その他にも高止まりする失業率や賃金の上昇率の低さもセンチメントを悪くした。昨日発表されたQ1の賃金コスト指数は前年比で+1.9%とインフレ率以下であり、実質的には賃金上昇は極めて低い。昨年来の資源価格の上昇を受けて企業収益は総じて好調であるが、個人消費にはなかなか波及しない状況にある。