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欧州通貨主導でドル安

更新日:2017年4月20日

マーケットの焦点

北朝鮮の地政学的懸念がやや後退し、また日米経済対話が波乱なく通過したことからドル円は一時109円台前半に反発したが、今週はポンドやユーロなどの欧州通貨が大幅上昇し、ドル下落の相対通貨が円から欧州通貨にバトンタッチした感がある。果たして典型的な“ドル安スパイラル”となるか?

火曜日にメイ英国首相は6/8総選挙実施を表明したが、政権基盤を再度固めてEU離脱交渉に臨む狙いだろう。やや調整反落しているが、昨日ポンドはメイ首相発表を受けて対ドルで1.25台から一時1.29台に急上昇した。またユーロもポンドに連れ高となり、対ドルで1.07台に上昇したが、背景にはメイ発言に加え、仏大統領選の世論調査速報でルペン候補、メランション候補が共にやや後退、マクロン候補が支持率を伸ばしていることがある。

今週もトランプ大統領の支離滅裂さについて述べるが、先日発表の為替報告書で中国を為替操作国と認定しなかったのは当然だろう。そもそも中国は昨年来市場介入を実施しているが、いずれも“人民元買い介入”であり、その対価として外貨準備の米ドル債券を売却しているわけで、トランプ大統領の指摘する人民元安誘導とは真逆だ。

加えて日本や独の通貨安誘導とも取れる発言にしても、日本やユーロ圏は未だ金融緩和の真っただ中にあり、一足早く金融引き締めに転じた米ドルが円やユーロに対して上昇しても当然の現象だろう。更にユーロ圏や英国はEU離脱問題という政治的不透明感を抱えているわけだ。

筆者はかねてより「トランプ政策が順調に遂行されればドル高」と言っているが、トランプ政策自体が遅々として進まない現状、その“ドル高”を見ないままにユーロ圏や日本(実施は危ぶまれるが)の出口戦略が浮上して、一足飛びで円高やユーロ高相場に移行する可能性すらあると、今現在は考えている。更にEUの政局不安が後退すれば、ユーロの反発は必至だ。また市場はFRBによる今年3回程度の利上げを予想しているが、3回に満たない場合には新たなドル売り材料とされるだろう。

今後の日欧の金融緩和解除の可能性と巨額の貿易黒字という需給要因を考えれば、サイクル的には円高、ユーロ高となる可能性を秘めており、トランプ大統領はこれら通貨に対するドル高を案ずる必要はないのではないか。

豪ドル相場見通し――再びベアセンチメント

向こう一週間の予想レンジ:

  • 豪ドル/ドル:0.7400-0.7600
  • 豪ドル/円:80.00-84.00

1) 概況

豪ドルは再び対ドル75セント、対円81円台後半の前回安値をテストしつつある。地政学的リスク懸念や欧州不安からのリスク回避が上値を重くしていたが、加えて今週発表されたRBA議事録で労働市場や景気の下振れについて言及しているのは、以前よりハト派的との印象だ。
このRBAの慎重スタンスに加え、鉄鉱石価格が61ドル台まで続落していることも、豪ドルの上値を重くした。今週豪ドルはポンドやユーロの急反発の蚊帳の外であるが、むしろユーロやポンドが調整反落すれば、豪ドルは更に下値をテストする可能性があるだろう。

2) RBAの金融政策

今週発表されたRBA議事録では、労働市場、個人消費、家計の弱さに言及するなど、ややハト派的な内容であった。一方、先週発表された非常に強い3月雇用統計を受けて、完全に消えていた年内利上げ観測が一部で聞かれた。RBAのロウ総裁はASIC(豪州証券投資委員会)やAPRA (豪州健全性規制庁)と住宅投資に起因する家計部門の債務急増に対する懸念を共有していて、銀行住宅融資の不良債権化のリスクについて今週も言及している。ロウ総裁としては、住宅市場の過熱化に対して金融引き締めよりは、当局規制の強化の必要性を強調している。

3) 商品相場

商品相場(CRB INDEX)は、先週木曜日の189.30から昨日は185.44に大幅下落した。米国の原油在庫が予想されたほど減少せず、ガソリン在庫は9日ぶりに増加したことや、供給過剰解消には時間がかるとの悲観的見方から、原油価格は先週の高値53ドル台から50ドル台に下落した。また鉄鉱石は中国の在庫積み上がりを嫌気して61ドル台に続落。一方、石炭(一般炭)はクィーンズランド州のハリケーン被害による積み出し遅延で、84ドル台に下げ止まっている。

4) テクニカル分析

(長期トレンド)
豪ドル/ドルは2013年5月にパリティー(1AUD=1USD)を割って以来下降トレンドとなり、2015-2016年の70セント割れで底入れ。現在なだらかな上昇トレンドを築きつつある。
豪ドル/円は2014年11月に102円台を付けた後下落トレンドとなり、昨年6月に72円台を付けて底入れ。現在上昇トレンドの中にある。

(足元)
豪ドル/ドル、豪ドル/円共に一目均衡表の雲の下に下落し、ボリンジャーバンドの下限付近に反落。一昨日、昨日の陰線は「三羽ガラス」に発展する可能性もある。再び0.7500、81円台半ばのサポートラインをテストする動きとなっている。ここをブレークすると、下値ターゲットは年初の71-72セント、昨年10月の79円台。RSI は豪ドル/ドルは 36.69%、豪ドル/円は28.51%で再びoversoldが進行しつつある。

【豪ドル/ドル チャート】

【豪ドル/円 チャート】

今週の豪ドル関連情報

  • ① 今週発表されたRBA議事録
  • ② 中国のQ1GDP+6.9%

① 今週発表されたRBA議事録

今週発表された4月分のRBA金融政策会合議事録は、非常に強い3月雇用統計発表前であり、逆に非常に弱かった2月雇用統計の結果を反映した内容であった。「向こう数か月の労働市場と住宅市場の進展を注視する必要がある」とし、また個人消費と家計の弱さにも言及するなど、従来よりもややハト派的な印象を与えた。引き続き住宅市場の過熱に懸念を抱き、「今後も信用残高の伸びが収入の伸びを上回るようであれば、監督当局(APRA)が新たな融資規制強化に乗り出す可能性」に言及している。世界経済については、中国の強いQ1GDP発表前であったが、「米国、欧州、中国中心に改善しており、それは豪州経済にとって望ましい」とした。一方、商品相場については国際的な需要の増加が昨年Q4と今年Q1の商品価格を大幅に上昇させ、交易条件と国民勘定の改善をもたらしたが、最近の鉄鉱石価格の大幅下落からQ2の交易条件は悪化する可能性があると述べている。今回の議事録の内容は軟調な労働市場と過熱する住宅市場を二大懸念ととらえているが、RBAはこの金融緩和/引き締めの両要素を勘案して、年内は金利据え置きとの見方が強まっている。

② 中国のQ1GDP+6.9%

今週発表された中国のQ1GDPは+6.9%(予想+6.8%、前回+6.8%)と、事前予想を上回る強い数字となった。因みに昨年の中国GDPは+6.7%であり、今年の政府目標は“+6.5%程度”となっている。
中国は豪州の最大輸出先であり、Q1の経済活動の予想を上回る拡大が、すなわちQ1の鉄鉱石価格の大幅上昇をもたらした主因であると考えられる。
建設活動の活発化、企業収益の大幅改善、貿易活動の拡大が成長要因と分析されるが、中国政府は構造改革よりも、再び従来の投資による成長路線に戻りつつあるとの見方もある。
同時に指摘される問題点は、急増する民間債務と住宅市場の過熱化であるが、さらに根本的な問題として、政府発表のGDPの数字そのものの正確性に対する疑問である。
中国統計局はQ1の前期比の成長率を+1.3%と発表したが、ANZのエコノミストは前年比で+6.9%の成長を達成するには、前期比で+1.6%の成長率が必要であると指摘する。
最近の鉄鋼価格の大幅下落の背景として、中国の鉄鋼在庫の積み上がりと、住宅市場の過熱化対策としての中国人民銀行の金融引き締めとが指摘されるが、中国のエコノミストの中には、今後の住宅投資の後退分は、インフラ投資の増加で十分補われるとして、鉄鉱石価格について強気の見方をする向きもいる。