金曜 松崎美子の英国発!すこしFX☆なが~くFX

美子トーーク!トーク内容を公開します

ユーロ高が止まらない!

更新日:2017年5月19日

今週に入ってから、急激に相場が動き始めました。その中でも特に眼を引くのが、ユーロ高です。どうして今、ユーロ高なのか?これについて、私なりの考えを書いてみたいと思います。

マクロン効果

5月7日に実施されたフランス大統領選・決選投票で、大方の予想通りマクロン候補が当選しました。これを受け、少なくとも年内はヨーロッパ発の政治危機が起きる可能性は遠のいたことになります

長期金利格差(イールドスプレッド)

今年最大の政治リスクと言われていたフランス大統領選ですが、4月23日に実施された1回目投票で、「マクロン候補とルペン候補」の2人が決選投票に進出すると判明した時点で、マーケットはマクロン大統領誕生を織り込みに行きました。それを確認するため、ここではユーロ圏のベンチマークであるドイツの国債利回り(10年物)と、フランス国債との利回り格差(イールドスプレッド)をチェックしてみました。

FXを始めて間もない方にとっては、少し難しいトピックかもしれませんが、お付き合いください。通常、フランスとドイツの利回り格差が大きくなればなるほど、ユーロ圏における不安心理が高いことを示しており、結果としてユーロは売られやすくなると考えられます。その反対に、両国の金利格差が縮小すればするほど、市場には安心感が広がり、それがユーロ買いに結びつきます。

チャート上の黄緑の点線丸が、4月23日の1回目投票を挟んだ時期となっていて、24日(月)のマーケットでは仏独格差が一気に縮まっているのがわかります。それと同時に、ユーロ/ドルも大きくユーロ高へと動き始めました。

30年物国債入札

5月16日、フランス国債庁(AFT : Agence France Tresor)は30年国債の入札を実施しました。入札額:70億ユーロに対し、応札額は310億ユーロにも達し、フランス国債に対する信任が完全に回復した結果となりました。AFTのホームページによれば、大きく買い上げたのは、地元ヨーロッパの機関投資家ですが、それ以外の地域として日本の機関投資家の買いが目立ったとも言われています。

メルケル効果

ドイツは、来る9月24日に連邦議会選挙を控えていますが、今年はいくつかの州議会選挙も行われます。年明け以降、3つの州で議会選挙が実施されましたが、いずれもメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が票を伸ばしていて、安心感が広がっています。

ここでは、3つの州での議会選挙におけるドイツの伝統的2大政党:キリスト教民主同盟(CDU)と社会民主党(SPD)、それぞれの得票率を比較してみました。

ザールラント州議会選挙

3月26日に実施された州議会選挙結果は、以下の通りです。

シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州議会選挙

次は、5月7日に実施された州議会選挙の結果です。

ノルトライン・ヴェストファーレン州 議会選挙

最後は、先週末に実施されたノルトライン・ヴェストファーレン州での議会選挙です。CDUが大きく票を伸ばしているのが確認できます。

このように、州議会選挙でCDUが支持を伸ばしていることを受け、9月の総選挙では「メルケル首相、4期目確実!」という見方が広がりつつあるそうです。結果として、不安材料がまた1つ減ったため、ユーロが買われる要因となりました。

ドラギ効果(金融政策)

フランス大統領選結果が大きな番狂わせとならないことを確認するまでは、インフレ率が欧州中銀(ECB)のターゲットを超えようが何があろうが、金融政策の変更は決して認められなかったであろうと想像されます。しかし、マクロン大統領というヨーロッパ寄りの大統領の誕生を受けて政治リスクが後退したため、早ければ6月のECB会合にも、テーパリング(国債購入額の減額)の発表があるのでは?という予想が、ちらほら出てきました。

早期テーパリング予想の根拠となっているのが、ユーロ圏消費者物価指数(HICP)のレベルです。3月に発表された2月分の数字が2.0%、最新の4月分は1.9%となっており、ECBのインフレ・ターゲットぎりぎりの水準まで来ています。今年に入ってからのインフレ率上昇は世界的な動きですが、ユーロ圏に限って言えば、膨大な額に膨れ上がったECBバランスシートがインフレ上昇の大きな理由に挙げられています。

わかりやすいように、ECBバランスシートとユーロ圏インフレ率のチャートを並べてみました。黄緑の縦線は、ドラギ総裁が「バランスシート拡大に取り組むことに言及」した2014年11月です。水色の★は、ECBの量的緩和による資産購入策(QE)に国債が組み込まれた2015年3月です。

ご覧のように、バランスシート拡大と国債購入が開始されてから、バランスシートは急速に拡大し、それと歩調を合わせるかのようにインフレ率も上がってきました。ドラギ総裁は最近のインフレ率の上昇はエネルギー価格の変動による一過性のものと語っていますが、エコノミト達の間では、インフレ率がECBターゲットに届いた今、「これ以上のQE継続=バランスシート拡大の必要性」があるのかについて議論されています。

トランプ効果(トランプ・ショック?)

私がわざわざここに書くまでもなく、5月に入ってからトランプ大統領のロシア関与疑惑「ロシアゲート」がマーケットのテーマとなってきました。トランプ氏が昨年11月8日の大統領選で勝利を収めた直後から「トランプ・ラリー」が続き、ドル・株・長期金利全てが上げ上げ相場となりました。しかし、ロシアゲート疑惑の発覚を受け、同大統領が公約した税制改革やインフラ投資に対する期待感が一気に消滅し、マーケットは今までの動きの巻き返し(ドルや株の下落、国債の買いなど)に必死です。
つまり、トランプ・ショックによるドル安相場の影響で、英国や日本、欧州に特に何の材料がなくても、それらの通貨は対ドルで買われる結果となっています。

ここからのユーロ

それでは最後に、ここからのマーケットについて考えてみたいと思います。

ここでは2つのユーロ実効レートのチャートをご紹介します。最初は、過去2年間の実効レートです。特に黄緑と赤の点線で囲んだ2つの枠に注目してください。

私は昨年から、実効レートが黄緑枠のレンジ内にいる時は、ユーロ取引にはあまり手を出さないようにしていました。それと同時に、いつレンジから大きく抜けるのか?非常に注意していました。チャートを見るとわかりますが、レートは黄緑枠を上下ともに3回ずつ抜けています。しかし、どれもが「だまし」の抜けであり、結局元に戻ってしまいました。

そのため、「だまし」を含めた枠を赤く引いてみると、2016年から今週までずっと、この赤い枠内での動きとなっていました。そして、5月16日(実効レート:96.1322)に初めて、この枠を上に抜け、17日も18日も更にそこから上に伸びてきたのです。

チャート: ECBホームページ

次は、2010年からの長いチャートを見てみましょう。赤い枠を上に抜け、最初のレジスタンス(ピンク線)まで一気に届きました。一時的な調整はあるでしょうが、もし今後も赤い枠の上側での動きを維持できるのであれば、次のターゲットとしてオレンジの枠で囲んだ98Lowから99ミドル近辺が浮上してきます。

チャート: ECBホームページ

ECBホームページに出ている5月18日のユーロ/ドル参考レートは1.1129であり、実効レートは、96.3378です。これを元に計算した場合、

  • 実効レート 98Lowの時、計算上のユーロ/ドルは、1.1344
  • 実効レート 99ミドルの時、計算上のユーロ/ドルは、1.1494

このような結果となりました。このレートは、あくまでも計算上のものですので、必ずこのレベルまで上昇する保証は、どこにもございません。頭の片隅にとどめてトレードをしていただければ幸いです。