金曜 松崎美子の英国発!すこしFX☆なが~くFX

美子トーーク!トーク内容を公開します

英国総選挙スペシャル

更新日:2017年4月21日

今年は「2017 欧州選挙年」であり、ヨーロッパの主要国で大統領選や議会選挙が続きます。そして今週火曜日に英国のメイ首相が突然、驚きの発表をしました。それは「議会を解散し、6月8日に総選挙を実施する」という決断でした。

今回のコラムでは、突然の解散・総選挙について、現時点で分かっていることを現地に住む私から日本の皆様にお伝えしたいと思います。

6月8日総選挙実施

メイ首相からの発表

イースター休暇が終わったばかりの4月18日、メイ首相は解散・総選挙の実施を発表しました。同首相は今まで頑なに前倒し総選挙の実施を否定していたため、国民は心から驚きました。

議会解散権がない英国首相

2010年総選挙で保守/自民の連立政権が誕生したことを受け、君主(エリザベス女王)による議会の解散大権は失われ、議会議決以外の首相による解散権行使というシステムも同時に廃止しました。これを、「2011 年議会任期固定法」と呼んでいます。

この決定を受け、議会が解散総選挙を行うためには、

  1. 議会の3分の2の賛成 (特別多数決)
  2. 内閣不信任決議案の可決

このいずれかの条件を満たす必要が出てきました。そのため、メイ首相は4月19日の議会で解散総選挙に関する採決を実施。結果は、賛成522 対 反対13(棄権115)となり、3分の2以上(434議席以上)の賛成を取り付け、6月8日総選挙実施に向け動き出しました。

投票日までのイベント・時系列

それでは、6月8日までの主なイベントをご紹介しましょう。ここには、総選挙に向けて必ず実施される「TV討論会」の予定が含まれていません。メイ首相は、4月19日のBBCラジオでのインタビューで、「今回の選挙では、恒例のTV討論会は、やらない。」と発言。しかし、他党の党首達はこれに反対していて、BBCテレビと民放最大手のITVテレビは、メイ首相抜きでもTV討論会実施に向け予定編成をしている最中であると発表しました。

党別・支持率をチェック!

次は、英国の主要政党の支持率をチェックしてみましょう。英国は保守党と労働党による2大政党制であり、両党の支持率は伝統的に30%台の横並びとなるのが普通でした。しかし、労働党のコービン党首の人気が大きく低下していて、昨年7月にメイ首相が就任して以来、ずっと保守党が労働党を圧倒している状態となっています。

データ:複数の報道

例えば、メイ首相が解散・総選挙を発表した4月18日の世論調査結果は、

  • 保守党 46%
  • 労働党 25%

保守党は労働党に対し20%を超えるリードとなっていて、この数字は1983年にサッチャー元首相が2度目の当選を果たした時以来のリードとなっています。

予想獲得議席数

上で紹介した世論調査結果を実際の議席数に置き換えると、このような結果になります。左側は現在の議席数、右側が総選挙後の議席数予想です。

データ:英国議会ホームページ +複数の報道

英国議会ホームページによると、現時点での保守党の安定多数議席はわずか17議席。つまり、9名かそれ以上の保守党議員が辞任したり、議会採決で保守党の意見に沿わなかった場合、メイ首相は窮地に立たされることになります。しかし、総選挙後の予想通りの結果となれば、安定多数議席は一気に134議席まで増える計算になるそうです。

保守党・労働党、それぞれの党首の支持率

党別の支持率はわかりましたので、次は2大政党の党首の人気を調べてみましょう。

保守党:メイ首相

このチャートは、有権者に対する意識調査で、質問内容は「メイ首相に満足しているか?それとも不満足か?」を問うたものです。

データ:複数の報道

メイ首相の場合、継続して【満足度(青いグラフ)>不満足(赤いグラフ)】となっています。信じられないかもしれませんが、歴代の首相達の結果を振り返ると、最初の半年くらいは、【満足>不満足】ですが、それ以降はほぼ例外なく【不満足>満足】になってしまいます。しかし、メイ首相の場合、就任以来9ヶ月経った現在も【満足>不満足】となっている珍しい首相という位置づけです。

労働党:コービン党首

コービン党首は有権者の支持率が特に低いことで知られています。労働党支持者の中でも、同党首を支持しない人たちが多く、恒常的に【不満足>満足】という結果です。

データ:複数の報道

どうして、今、総選挙なのか?

あれだけ絶対に解散・総選挙は実施しない!と頑張っていたメイ首相が、いきなり心変わりした理由をいくつか挙げてみました。

・保守党の人気が高い

上述の通り、保守党と労働党との支持率の差が、1983年以来の大きさとなっているため、保守党の人気が高いうちに総選挙をやってしまおうという計算。

・メイ首相に対する有権者の満足度が高い

労働党のコービン党首の人気が高まる可能性はゼロに近いため、メイ氏は非常にラッキーなタイミングで首相に任命されました。自身の満足度が高いうちに、保守党の議席数を増やそうと考えるのは、当然でしょう。

・安定多数議席を増やす

現時点での保守党の安定多数議席はわずか17議席。つまり、9名かそれ以上の保守党議員が辞任したり、他の党に移ったりした場合、保守党の過半数は消滅します。今後Brexit交渉を進めていく過程で、保守党から造反議員が多数出てきた場合、過半数割れするリスクは是が非でも避けたいところ。

もし総選挙で予想通りの結果となれば、安定多数議席は一気に134議席まで増える計算になります。これなら安心して交渉に臨めますね。

・次期総選挙は2020年でなく、2022年

私は、これが一番重要な理由だと考えています。分かりやすいようにタイムラインに沿って図を作ってみましたのでご覧ください。

もし、今回の前倒し総選挙がなければ、次期総選挙は「2020年5月」に実施されます。その頃は、EUとの2年間の交渉期間は終了していますが、その後に控える移行期間の真っ只中ということになります。ないとは思いますが、もし保守党がその選挙で負けた場合、それまでメイ首相の元で進められてきた移行過程に支障が生じないとも限りません。

しかし、今年6月に総選挙をやってしまえば、次の選挙は5年後の2022年。その頃には、移行期間も完全に終了しています。

ちなみに、移行期間を3年間と決めているのはEU側であり、英国では「3年から5年」という期間を希望しているため、今後の交渉次第で延長されることが絶対にないとは言い切れません。

総選挙における注意点

ここまで読んでこられた方は、メイ首相のBrexit交渉は順風満帆に進められていくという感想を持たれたことでしょう。しかし、政治は生き物。まだまだ安心できません。ここでは私が特に気にしている2点を書いてみたいと思います。

スコットランドの出方

4月20日の新聞報道によると、スコットランドのスタージョン自治政府首相は、他の党に呼びかけ、昨年の国民投票で残留に票を入れた国民の意思を受け継ぐためにも、反保守党/反ハードBrexitを目的とした超党派同盟を設立し、保守党を野党に引き摺り下ろそうと企んでいるようです。

繰り返しになりますが、次の総選挙で保守党が今まで以上に議席数を伸ばすという観測は、2大政党のひとつである労働党が精彩に欠けるからに他なりません。その精彩に欠けた労働党が、果たしてスタージョンさんの呼びかけに応えるのでしょうか?残留を今でも支持している自由民主党が、スタージョンさんの呼びかけに応えるのでしょうか?

私が注目しているのは、5月4日に行なわれる地方議会選挙です。スコットランドでの地方議会選挙で、スタージョン首相率いるスコットランド国民党(SNP)が議席を伸ばせば、6月の総選挙に向け、スタージョン氏の思惑通り、超党派同盟誕生ということにもなりかねません。

逆に、5月の地方議会選挙で、スコットランド保守党が議席を伸ばすようであれば、スタージョン氏の思惑は大きく外れることになると、私は考えています。

総選挙では自民党に注目

スコットランドのスタージョン首相と同じく、英国のEU離脱に大反対しているのが、自由民主党です。この党は2010年に保守党と組んで連立与党となりましたが、その後急速に支持を落としています。

しかし6月の総選挙では、昨年の国民投票で残留に票を入れた有権者の支持を獲得するため、既にいくつかの作戦を練っていると伝えられています。メインの作戦は、「EU残留支持が高かった選挙区で、自民党議員の当選を確実にする」というもの。極端な話、EU離脱支持が高かった選挙区では選挙キャンペーンもやらないくらい割り切っているようです。

残念なことに、2015年総選挙で自民党はわずか9議席しか取れませんでしたが、もし残留支持者が本気でハードBrexitを潰しにかかる気であれば、自民党の議席は劇的に伸びるはずです。その意味からも、今回の総選挙は「2度目の国民投票」とも呼ばれているのです。

ここからのマーケット

4月18日にメイ首相が解散・総選挙を発表して以来、ポンドは大きく上昇しました。総選挙後は保守党の議席が大幅に増え、メイ首相がBrexit交渉をスムーズに運べるという安心感からのショート・カバーであると、私は考えています。

4月11日付けのシカゴIMM通貨先物ポジションを見ると、前週より6,228コントラクトのポンド・ショートが増加し、歴史的にも高水準である105,901コントラクトにのぼるポンドのショートが残っていました。これだけ大量のショートがあれば、一部でも買い戻しに動けば相当の動きになるでしょう。

このポンド上昇により、英中銀が毎日公表しているポンド実効レートも昨年秋から続いていた三角持合を上に抜けました!教科書通りに計算すると、三角持合が上に抜けた時のターゲットは、83ミドル(ピンクの横点線)です。

そこで、実効レートが83ミドルまで上昇すると仮定した場合、ポンド/ドルはどのレベルまで上昇する可能性があるのか、計算してみました。一番最新の数字は4月19日のものとなっており、実効レートは79.3101、ポンド/ドルは1.2811です。

4月19日: ポンド実効レート 79.3101  ポンド/ドル 1.2811
実効レートが83ミドルまで行った場合、計算上のポンド/ドルは「1.34877」になります。

念のためにお断りしますが、これはあくまでも計算上の目安であり、このレベルまで必ずポンドが上昇するとは限りませんので、誤解のないようお願いいたします。