LTCM破綻編(1998年10月)

図:1998年ドル円相場(日足)

LTCM破綻の背景

1997年に発生したアジア通貨危機、それに連動する形で1998年に発生したロシア財政危機が状況を一変させた。アジア通貨危機を見た投資家が「質への逃避」(=米国債の購入)をおこしつつあったところへロシアが「モラトリアム」(対外債務に対する支払いを一時的に遅らせる措置。事実上の破綻)を発動したことにより、新興国の債券・株式は危険であるという認識が急速に広がり、投資資金を引き揚げて先進国へ移す様になったのである。

LTCMの運用方針では、この様な動揺はやがて収束し、いずれ新興国の債券・株式の買い戻しが起こることを前提としており、それに応じて米国債売り、ジャンク債買いのポジションをとったと言われている。
(割高な米国債は発行から時間が経過すると、流動性がなくなり割高さが調整され、割安に取引されているジャンク債は、償還日が近づくと信用リスクが低下し、値を戻すことを期待した思惑をもった取引)

だが、これらの経済危機によって生まれた投資家のリスクに対する不安心理は収まらず、むしろますます新興国・準先進国からの資金引き上げを加速させていった。そして、先にも述べたように質への逃避が、米国債の価格をさらに上げ、ジャンク債を下落させていった。

結果としてLTCMの運用は破綻し、資産総額は1994年の運用開始時点の額を下回り、同年9月18日には誰の目にも崩壊寸前である事が明らかとなった。

LTCMは、円キャリートレード(円売り、ドル買い)をおこなっていたこともあり、市場関係者は資金の調達に円キャリー解消の決済取引を行ってくることを想定し、こぞって円買い、ドル売りのポジションをとり、LTCMの動向をまった。そして、この円キャリートレードの「巻き戻し」により、ドル円は1ドル=136.06円(1998年10月5日)から111.85円(1998年10月8日)まで下落した。

そのときキーワード

ヘッジファンド
私募によって機関投資家や富裕層等から資金を集め、デリバティブ取引などを駆使し様々な手法で運用するファンド。
ファンド名ファンドマネージャー
クォンタムファンドジョージ・ソロス
タイガーファンドジュリアン・ロバートソン
キャリートレード
低金利の通貨を調達し、高金利国で運用すること
ロシア危機
1998年8月ロシア中央銀行の行った対外債務の90日間支払停止と、これに起因するルーブル下落、キャピタル・フライト(国内から資金が流出すること)などの経済的危機。ロシアはこのとき金利を150%にしたが資金流出はとまらなかった。
レラティブ・バリュー取引
実力と比較して割安と判断される債券を大量に購入し、反対に割高と判断される債券を空売りするもの。LTCMは、ジャンク債買いの、国債売りの戦術を取ったが、質への逃避が始まると乖離はさらに広がり、破綻した。
ジョン・メリーウェザー
LTCMのファンドマネージャー。

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